不思議な出会い[1]
「貴方に、貴方に莉々様は渡せません!お引き取り下さい」
「えー。だって身分の高い俺がキミを手に入れるためには莉々と結婚するのが手っ取り早いだろう?」
私の顎を持ち上げ、目を細めて私を見つめる煌びやかな服を着た威圧感のある男性…
オープン前に見た夢がフラッシュバックする。あれ、この威圧感のある男性…葉鳥さんに見えてくる…
「離してくださいっ。私は莉々様付きのメイド。貴方様のものにも他の誰のものになることはございません!」
私はその男性を突き飛ばす。
「俺は君を必ず手に入れるよ、どんな手を使っても…」
その男性は私の手にキスを落とした。
カランカランッ
「っ!!」
ドアが開いた音がして私は我に返った。そして葉鳥さんの胸を押し返す。
「ごめんね。つい、花村さんが可愛くて。もう同じ会社じゃないから遠慮する必要もないかなって。」
葉鳥さんはまた屈託なく笑う。
「ごゆっくり、どうぞ…」
葉鳥さんの目を見るとまた、目を離せなくなりそうで私は少し目を逸らして葉鳥さんにそう伝える。
「ありがとう」
葉鳥さんは目を細めてそう言った。
…さっきのは、何?キス…?
葉鳥さんが私を好き…?
…何であの夢がフラッシュバック…?
「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」
いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。
私は頭を切りかえて新たに来店されたお客様の方に向かう。
「いや、もう1人来る予定なんだ」
来店されたお客様はやたらとガタイのいい30代後半~40代前半といった感じの方だった。
「承知しました。では、こちらへ…」
私は席へ案内する…と
「なっ、」
男性客は何かを見て驚いたような声を出した。
目線の先は…葉鳥さん…?
知り合い…?私が不思議に思っていると葉鳥さんはチラッとこちらを見ただけで何も反応しなかった。
「失礼。この席でいいか?」
男性客は驚いた後、少し眉間に皺を寄せたものの、すぐに表情を戻した。