【葉鳥】こっちの世界の君と俺[2]
「離してくださいっ。私は莉々様付きのメイド。貴方様のものにも他の誰のものになることはございません!」
君は俺を突き飛ばす。この国の王の子を突き飛ばすなんて不敬罪だと思う。でも、俺はこの気の強さが嫌いじゃなかった。
「俺は君を必ず手に入れるよ、どんな手を使っても…」
俺は杏奈の手にキスを落とした。
杏奈は酷く嫌そうな顔をしていた。
そしてその3日後、杏奈はこの世界から消えた。
俺はありとあらゆる手を使って杏奈を探した。そこで知った、転生。
あろうことか、杏奈はとあることが原因で生命を落とし、別世界へ転生してしまったのだ…。
俺は絶望した。もう杏奈には会えない。
しかし俺はこの国の王の子。国の全知力を使って杏奈のいる世界にいく方法を編み出した。
…年齢が元の世界より10歳も上げられていたのは想定外だったが…。
職も役職も実績と人の記憶を偽造して手に入れた。全ては杏奈を手に入れるため…-
「美味っ!花村さん天才!?」
「ふふー、私意外とお菓子作りの才能あったみたいなんですー!」
杏奈は自慢げに笑う。絶対それ、あっちの世界での賜物だろうと思うけれど…杏奈はあっちの世界の記憶が無いだろうから、何とももどかしい気持ちになる。
ただ、あっちの世界の時と違ってこれだけ杏奈が俺に警戒心を抱いていないのであれば杏奈が俺のものになるのは時間の問題だと思った。
「ねぇ、花村さん」
「はい?」
杏奈を見つめる。杏奈も何かを感じているのか俺と目があった後はいつもしばらく目を離さない。俺は彼女の手を引く。
「葉鳥さん…?」
キョトンとした顔で杏奈は俺を見つめる。
「今回こそ、俺のものにならない?」
「え、」
俺は杏奈の顎を持ち上げキスをした。