9 一緒に来る?
「えーっと、この薬草を混ぜてと」
屋敷に戻ったトリシャとマーナは、さっそく薬品を作り始めた。
「み、マーナ。本当にレシピ本見なくて大丈夫?」
「大丈夫です。頭に入ってますから」
大丈夫かなぁ。うん、まあ信じよう。
「トリシャさん。そこの薬、取ってください」
「あ、はいはい」
マーナって薬使ってる時って、全然違うなぁ。
ヘッポコなのか出来る子なのか。
すっごい集中力・・・。
トリシャは薬品を鍋で混ぜる、マーナをじっと見つめた。
意外と、睫毛長い。唇も小さいけどふっくらしてて・・・
「あの、トリシャさん」
「え?何?」
「そうじっと見つめられると気になります」
マーナは頬を赤く染めて言った。
「うっわ!ごめんね!ぼーっとしてた!」
「そ、そうですか。それより、もう少しで完成しますよ」
「え?もう?」
「はい。最後にこのキノコを入れて・・・完成です!」
マーナは緑色の液体をビンに入れた。
「出来ましたよ!トリシャさん!」
「ありがとう、助かるよ」
トリシャはマーナからビンを受け取る。
うっわー、怪しい緑色・・・
「無事に完成できて良かったです」
「本当だよ。マーナのお陰だね」
トリシャがそう言うと、マーナの目が大きく見開かれた。
「え?どうしたの?」
「い、いえ。誰かに感謝されたのも、こうやって誰かとお話ししたのも久しぶりで・・・」
スンと鼻をすするマーナ。
「だから、こちらこそありがとうございました」
そっか。この子はずっと一人だったんだ。
マーガレットが死んでからずっと・・・
「っ〜〜〜あ〜っ、一緒に来る?」
「え?」
「さっきも説明した通り、俺これからドラゴン退治しなきゃなんないの。一緒に来てくれたら、助かるんだけど」
「ほ、本当ですか!?」
マーナが飛び上がる。
「う、うん」
「行きます!連れてって下さい!」
「わ、分かったから落ち着いて」
うん。きっと、彼女の知識も役立つと思うし。うん。連れてっても損にはならないだろう。
「待ってて下さい、すぐ支度して来ます!」
こんなに喜んでくれてるし。
「きゃぁあ!」
「大丈夫!?」
「す、すみません。転んじゃって」
・・・うん。きっと損にはならない。
多分・・・