3 ドラゴン退治
今、なんつった?このオッさん。結婚?
「もしお前がルイーズを助けてくれたら、お前にルイーズをやる」
「王!」
カリバンが叫ぶ。どうやら初耳だったらしい。
「待ってよ。そしたら俺は・・・」
「次の王になる」
マジかよ。
「いいのー?王様。俺なんかに大切なルイーズ姫くれちゃって」
いつの間にか敬語が抜けたトリシャ。
だが、王はそれを咎めずに答えた。
「トリシャ。儂はお前を買っている。剣の腕、頭、容姿、どれを取っても申し分ない。どこぞの馬の骨ともわからない奴にやるくらいなら、お前にやる」
「ルイーズ姫は嫌かもしれないよ?」
「それはない」
「なんでさ」
王はニヤッと笑った。
「ルイーズは面食いだからだ」
「あ、そー・・・」
確かにトリシャの容姿は整っている。燃えるような赤い髪、蜂蜜色の瞳、背も高く引き締まった身体をしている。
「はぁ、そこまで言ってくれるのなら、やるしかないよね。いーよ。引き受けた」
「感謝する」
王はホッとして息を吐いた。
「何も手がかりないの?」
「一応ある。カリバン」
「はい。こちらに」
カリバンはトリシャに、何かのカケラを差し出した。
「これは?」
「ドラゴンの鱗だ」
「ドラゴン!?」
ドラゴンは限られた地域しか存在しない、滅多に見られない生物だ。獰猛で火を噴くと言われている。
「ルイーズ姫はドラゴンに攫われたと?」
「そうだ。これがルイーズの部屋に散らばってあった」
「勘弁してよ。俺、ドラゴンなんか見たことないよ。戦い方もわからない」
「この国で一人だけ、ドラゴン退治に詳しい人物がいる」
「誰さ?」
「伝説の魔女マーガレットだ」
「マーガレット?」
その名は聞いた事がある。過去に多くの人を厄災から救った、伝説の魔女。
「マーガレットは今、プファルツの湖の側に住んでいるらしい」
「らしいって知らないのかよ」
「最後に彼女に会ったのは、二十年前なのだよ」
おいおい、そんな不確かな情報で大丈夫なのかよ。
「なんだ?怖気付いたのか?」
「は?」
「いや、仕方がないですよ。ドラゴン退治だもの。流石のトリシャ様もビビりますよ」
「そうだな。流石のトリシャも怖がるのは仕方無い」
王とカリバンはニヤニヤと笑った。
「誰が怖がってるって!?行けばいいんでしょ、行けば!」
「おお、行ってくれるか」
「すぐに助けて来てやっから、結婚式の準備でもして待ってろよ!!」
トリシャはそう叫び、謁見の場を飛び出して行った。
彼の唯一の欠点は、プライドがとても高い事だった。