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善人だけの異世界で俺だけが悪人(クズ)  作者: 七歌
二章『ちょろいぜ異世界』
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二章『ちょろいぜ異世界』 2‐3


 グディアント王国には『ギルド』というものが存在する。

 各職種の互助会であり、その職種における税金の徴収なども行っている組織だ。


 会社→ギルド→国、というのがこの世界での税金の基本的な流れらしい。

 あとは、国民一人一人にかけられる人頭税などか。



「で、ここが各職種のギルドが集まっている『本部』と」



 異世界にやってきて、一晩が過ぎ。

 辰己はノエに連れられて、各ギルドが集まっているという『本部』へとやってきていた。


 辰己は今日も詰襟制服。

 私服にしようかとも思ったが、一応正式な場ということでちゃんとした服を選んだ。

 ノエは昨日と同じアオザイに似た服装だが、微妙に生地の色が違う。何着か似た服を持っているのかもしれない。



「タツミくんが働きたい、というので連れてきましたけど……もう少しこの世界に慣れてからでもいいと思います、私は」



 ノエはギルド本部の建物――十階近い大きな建物だ――を見上げながら、眉根を寄せる。

 心配は理解する辰己だったが、目標を達成するのにどれだけ時間がかかるかわからない今、行動は迅速にする必要があった。

 だから辰己はその心配から気を反らさせるように、話題を変える。



「しかし、この建物、随分大きいな。鉄骨のビルみたいだ。他のところは三階建てくらいが多かったみたいだけど……やっぱりここが本部だから?」


「法律で、三階以上の建物を建てる場合には制限があるんです。低い建物が多いのはそのせいですね」


「なんで高い建物に制限が?」


「万が一崩壊した際に周囲への被害が大きくなるので……それと、三階以上だと火災などがあった時に逃げ出すのが困難になりますから」


「……地震とかで家がよく崩れるのか?」


「まさか! 設計段階で耐震基準をクリアしなければ建物は建てられません。それでも、念の為、ということです。人の命より大事なものはないですから」


「うーむ……当然といえば当然の理屈だけど、ここまで徹底されるのは本当に……異世界だなぁ」



 なんとも言えない気分になりながら、辰己はギルド本部の扉を開けた。

 中に入ると、すぐに受付カウンターらしきものがある。



「そういえば、タツミくんはなんの仕事をしようと思っているんですか?」


「ん? ああ、話してなかったっけ。新しくギルドを作ろうと思ってるんだ」


「へぇー、ギルドを作って……え? ギルドを作る? 新しく?」


「できないのか?」



 辰己が首をかしげると、ノエは少し慌てた様子で視線をさまよわせる。



「な、なんで新しくギルドを?」


「や、だって、現状存在してるギルドに入ったらそこに税金とか運営費とられるんだろ? それなら新しくギルド作れば、運営費とかはほぼほぼタダだし税金にしたって手数料少なくて済むと思って」


「けど、そのためには現在存在していない仕事を登録しなければならないですよ? 一体何の仕事を」


「んー……『お悩み解決』、とかかな? 名目は。あとはまぁ……『占い師』、とか?」


「……聞いたことないですね、どっちも。占いは遊びの範疇であるだけだし……悩みも、大抵の人は家族や友人に相談すると思います」


「だろ? ないと思ったんだ」



 にやりと笑う辰己だったが、ノエはなんとなく納得していない様子だった。



「けれど、無いと言うことは必要がなくて『ない』と言うことだと思います、私は。わざわざギルドを作っても、それで稼げるのかと言われると疑問な気が」


「いいや、世の中必要か不必要かだけじゃ回ってないよ。みんながみんな『善い人』だから、それが理由で職業として誰も作ろうとしなかったってこともあると思わない?」



 話しながら、タツミはギルドの受付へと向かった。

 そこで、笑顔を浮かべている受付の女性に話しかける。



「初めまして。少しいいかな? 異世界の者なんだけど」



 辰己がにこやかに話しかけると、受付の女性はくすりと笑みをこぼす。



「はい、存じてます♪ 異世界の者なんだけど、なんて言わなくても、十分に。本日はどのようなご用件でしょうか? 職業体験等の案内もしていますよ」


「ギルドの新設の方法を知りたいんだ。教えてくれない?」


「ギルドの新設?」



 受付嬢が目を丸くする。けれどすぐに、なにか考え直した様子で頷いた。



「ギルドを新設するには、まず一か月間、どのギルドにも所属していない『事業』を行い、その仔細を報告する必要があります。なので、まずは職業登録手続きに必要なものを用意させて頂きますね」


「一から事業を立ち上げる場合には、税金とかはどうなるのかな?」


「一月分は税金の支払い義務はありません。

また、収支が一定額を越えるまでは同じく、事業による収入に税金の支払い義務は課されません。

そのあたりの資料もお渡しします。

人頭税などは……免除されていますので、異世界人のあなたがこの世界で払うべき税金は、事業に課されるものだけになります」


「ひと月はどんなに稼いでも税金はタダ……いいこと聞いたな」



 にやりと辰己が思わず悪い笑みを浮かべていると、追いついてきたノエが辰己の表情を見て呆れた顔をする。



「タツミくん、またなんだかいけないことを考えてる顔してます。あんまりいけないことばかりしていると、お姉ちゃんも怒っちゃいますよ?」


「ノエの『怒る』は多分、俺の中じゃ叱られた程度にも入らないレベルだと思うけど――ところでノエ。俺に軍資金とかってないよね? もちろん」


「国からは一応、生活費などは預かっていますけど……小物程度の準備ならともかく、本格的に商売をするようなお金は出しませんからね? そう言う用途で使わないようにと言われてるんですから」


「いや、小物の準備をしていいなら十分さ。となるとあとは場所か……ノエ、軒先が借りられそうな喫茶店とか知らない? 別に飲食店じゃなくても、本屋とかでもいいんだけど」


「お店ですか? それなら、ちょうどいいお店があります。少し大通りからは離れた場所になりますけど」


「本当か? 知り合いのお店とか?」



 辰己の疑問に、緩やかにノエは首を横に振る。

 それから少しだけ誇らしそうに、その大きな胸を張って言った。



「いえ――私の実家です」


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