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ちょっとの過去

すみません投稿が遅れました。

これからもお暇がある時に読んで頂けると幸いです。

「ねぇパパ。ママ、苦しそうだよ」



ぼろぼろになった服を着ており、風呂もろくに入ってないのだろう、臭いが酷く小汚いとは到底言えない少年が懸命に腰を動かす男に言う。

男が声をかけた少年の方を向き、上から見下ろす。



「痛っ…!」

「ガキの分際で喋ってんじゃねぇ。ぶっ殺すぞ」



腹を思いっきり殴られ、一瞬呼吸ができなくなり、咳き込みながら苦しむ。

少年は息の荒い女を見つめ助けを求めるが、女には少年を殴った男しか視界に入っておらず、奇声のような声を発しながら男の名前を叫んでいる。

少年はそのまま苦しさのあまり気を失ってしまった。







男や女共がひとりの女を叫びながら激怒している。

俺はそれをBGMとして聞きながら笑う。

男が今にも俺を殺してやるという目で睨む。

力いっぱいに手を握り、叫ぶ。

彼の体からは抑えきれない程の、ありえない程の魔力が発生する。

さしずめ怒りによる覚醒というやつか。



「黒騎士いいいいいいいいいいい!!!」

「はい。元気です!」



勇者セイヤは神槍ゴットランスを無数に出現させ、それを俺に向かって放つ。

俺が立っていた場所は一瞬にして地面ごと破壊される。

が、俺には通用しない。



精霊火ファイヤーゲート!」

「うぎゃああああああああああああああああああ!!」



勇者が無数の精霊を呼び集め、精霊火ファイヤーゲートを放つ。

どうやらこの技は魔法としてカウントされないようで、相当なダメージが入った。と、思う。



「ま、対して痛くないんだけどね。うん」

「バケモノかこいつ…!」

「セイヤ!下がってください!アレを使います!あとは宜しくです」

「!!頼んだぞ、アリス!」



アリスの呼びかけに勇者は下がる。

すると、アリスが何かブツブツと唱え始める。



「うお。なんだこれ…」

「貴方の欲するもの、欲しかったもの。それを渡しましょう。その代わり、私に貴方の命を預けなさい」

「う……あ…?」


視界がぼやける。

頭が揺れ、立っているのが辛い。

俺は目を瞑り、頭を振ってみる。



「辛いわよね、銀ちゃん」

「は?」


俺は耳を疑った。

それもそのはずだ。だって今聞こえたのはいるはずもない、母の声だった。

俺は目を見開き辺りを見渡す。

そこは俺がいたヴェッツァニア王国ではなく、あるマンションの一つの部屋。

そう、忘れるはずもない。ここは...



「昔住んでた場所...」

「どうしたの?早くこっちに座ってご飯食べましょ」

「え...?」



声がする方を見ると、そこには手招きする母がいた。

小さいちゃぶ台に母の手作りであろう物が並べられていた。二人分。



「ああ…」



俺が一番幸せだった時間。

父が外に遊びに行っている時間。

僕とお母さんの2人だけの時間。

唯一、自分を見てくれる時間。


「ママ」

「あら、どうしたの?お腹でも痛いの?ほら、拭いてあげるからこっちへおいで」



気がつけば涙が出ていた。

これは自分が一番求めていた時。



「はは」



涙が枯れて、次は笑みがこぼれる。



「実に滑稽」



俺は目に指を突っ込む。

突然、思いっきり刺しているので目が見えなくなり、血が溢れる。



「え!?なにをしているんですか!」



さっきまで俺と母さんだけだった空間からいないはずの女の声が聞こえる。

アリスだったか?



「ハッハァ!」

「ぐ...ア...」



俺は気配だけでアリスを掴み上げ、首を締める。

こいつは殺す。絶対に殺す。



「そこまでだ!」

「あ?」



後ろから声が聞こえる。聞いたことのない声だ。

俺はアリスの首を掴んだまま振り返る。

そこには背の高い金髪の男性がいた。



「誰だお前」



俺は今にもお前も殺すぞという目で見る。

男は一瞬うろたえたがすぐに切り替え、真っ直ぐに俺の目を見る。



「私の名はサンカリア=ローズというものだ。どうだね、その子を離しては貰えないだろうか?」

「サンカリア=ローズ様!?」



その名前を聞いた途端、イーサンを筆頭に俺以外を除いた全員が驚いている。



「知らん。殺すぞ」

「ギンタ!この人は次期国王になる人なのです!」

「は?そーいうのって現国王の息子がなるもんじゃねえの?知らんけど」

「まぁギンタはここのことよーわかってへんからそういうんやけど、色々あるんや」

「ふーん。で?何?」



俺は2人の話を聞いて理解はするが、今の状況でそんな事どうでも良いと俺は思う。



「君は聖騎神の侵略からこの国を救ってくれた。まさに英雄だ。見ての通り今この国は破壊されボロボロの状態だが、国王が君に感謝の言葉をお送りなさりたいとのこと。来ては貰えないだろうか?」

「!?ちょっと待ってください!そいつは僕たちの仲間を!ミシュエラを殺したんですよ!?」



勇者達がサンカリア=ローズに納得できないと言うが、サンカリア=ローズは何を言ってるのだ?と言う顔をしている。



「ん?君の仲間ならそこで倒れているじゃないか。死んではいないはずだが?」

「何を言っているんですか?ミシュエラはたしかに首を切られて...え?」



勇者がミシュエラをみると、そこには気絶して倒れているミシュエラがいた。



「どういうことだ?」



勇者が俺の方を信じられないという目で見る。



「見たままの意味だが?」



勇者は確かにミシュエラの首が切られ、自分の目の前に転げてくるところを見ただろう。

だが、''それを見たのは勇者達だけだ''。



「なるほど。つまりは幻覚を見せていたということだね?あと、もうその子を離したまえ。気絶している」



俺が答えるよりも先にサンカリア=ローズが答えをいう。

自分が見た物事だけで判断するのは愚か者のすることだ。

一旦何故そうなったのか、自分が見えていないものまでみて判断すればいいものを。

俺は確かに幻覚を見せていた。だがそれは見たものを簡単に信じてしまうバカにしか、かからない魔法だ。

俺はアリスの顔をみると、白目で泡を吹きながら気絶していたので仕方なく下ろす。



「此度の侵略に対する撃退、並びにヴァルダナ=ニバルレルン及び勇者達の非礼、誠に申し訳ない」

「な...!ローズさん!」

「セイヤ。今私は君とは話していない。私語は慎め」



頭を下げ深く礼をするサンカリア=ローズ。

そして、勇者に対する冷たく静かな一喝。



「無論、これだけでは君も納得いかないだろう。君の望むものがあればなんでも言ってくれ」

「なら話は早い。何もするな。俺はすぐにここをでる」

「ふむ...。それが君の望みであればそうしよう。では、この場は私に任せてくれないか?見るに君の仲間は疲労している。早く休ませてくれたまえ」

「そうだな。興が覚めたし、あんたに任せよう」



話の早い男で助かった。今の俺ならちょっとのことで人を殺してしまいそうだ。

俺は兜を被り、マリー達のところへ行きファラリの森へ一時退散する事にした。











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