正体
行を空けて読みやすくしてみました。これからもお暇があるときに読んで頂ければ幸いです。
「みんなどこに避難したんだ?人1人居ないぞ」
「聖騎神がここまで来たってことじゃない?見る限り倒れている人達もいないし無事なのかしら?」
俺たちは周りを詮索しながら歩いているが、未だ誰1人として会っていない。
しかし、急な襲撃にも関わらず迅速な対応が取れている。
これは普段から狩りに行っているギルドのメンバー達のおかげではないのだろうか。
「ねぇ、黒騎士。あんたこの騒動が終わったらどうするつもり?」
「そうだなぁ。とりあえず隣の国にでも行ってみたいとは思う」
「え!''ベルン''に?私、ちょうどそこに行く予定だったの」
「へぇ。てことは、勇者達もそこへ?」
「違うわ。セイヤはこの国の王様に呼ばれたの。だがら、私はここから別行動だったのだけれど…」
スライミーはもじもじとし始めながら言う。スライミーは人に頼む時、どうも恥ずかしがってしまう癖があるのだ。
そして何故ギンタに頼むのかと言うと、ギンタ自体がもの凄く危険な存在だが、逆にそれを利用すれば安全にベルンに辿り着けるからだし、仮面を付けている時のギンタは安全だと一緒に探すうちに理解したからだ。
「あの…私と一緒に行かない?どうせ目的地は一緒だし」
「うーん。ま、考えとく」
ドカン!と。
俺たちが歩いて向かっている方角から大きい咆哮音が聞こえた。
「近いな。行くぞスライム!」
「だからスライムじゃないっつってんだろ!」
名前を間違えると、ガルルルと口悪く怒られた。
「グゥ…」
「弱イ。弱スギルゾ。イシュマダル」
すでにボロボロであったイシュマダルが一体の聖騎神の攻撃により、さらにボロボロになる。
ダリウルスだ。
もうすでに動けないイシュマダルに容赦なく魔法によってできた光の槍を浴びせるダリウルス。
「グァァァアアア!」
「死ニ損ナイニ、マシテヤ弱体シタ貴様ナゾニ興味ハナイ。我ガ剣デ生命ヲ絶テ」
すると、浮いていたダリウルスが倒れ伏せているイシュマダルに向かって高速で剣を刺しに来る。
「ア……」
「終ワリトハ儚イモノダ。貴様ナラバモシヤト思ッタガ」
がくん、と。イシュマダルは気を失った。
ダリウルスが剣を抜き、イシュマダルから背を向ける。
「聖騎神さん!大丈夫なのですか!?」
「人間ダト?」
その場から飛び立とうとしていたダリウルスが声の方へ体を向ける。
すると、そこには耳長のエルフと小柄な女の子と30代くらいの男がいた。
「マリー!!出るのが早すぎだ!見つかったぞ!」
「この方を見捨てれません!ヘレーナちゃん、回復魔法はありますか?」
「…効き目は薄い、けど…やってみる」
男を除く他の二人はダリウルスを気にすることなくイシュマダルの手当を行なっている。
しかし、この男。どこか懐かしいような気が…。
「貴様ラ、何ヲシテイル」
「治療なのです!」
見たらわかる。
何故聖騎神を庇う?もしや、こいつらはイシュマダルの事を知っている者だとダリウルスは思う。
ならば生かす筈がないと。
「死ネ」
ダリウルスは右手を向け、光魔法を放つ。
「イーサン!伏セロ!」
すると、死んだはずのイシュマダルが女二人と男を庇う。
「グ…ギィ……」
「お、おい!大丈夫か!?」
ドシャッと倒れこむイシュマダル。
「シツコイ奴ダ。イイ加減ニーー」
「極氷盾!」
すると、ダリウルスを分厚い氷が覆う。
完全に動けなくなっている。
みると、四人の人影がこちらに走ってくる。
勇者達だ。
その前に。
「お前、なんで俺の名前を…?」
「……俺ダ。イーサン」
「え…?」
すると、イシュマダルの頭の部分が消滅し、ある男の。イーサンが一番知っている男の顔が姿を現わす。
「…ケレン…?」
「ヨォ」
「なん…で…?お前、そんなボロボロで…」
「''オ前ヲ助ケル為''…ダ。頼ム。ココカラ逃ゲロ」
「ダメです!マリーは逃げません!」
「私、も…!」
マリーとヘレーナは真っ直ぐな目をケレンに向ける。
イーサンも同じ目をしている。
こいつらは逃げずに戦う事を選んだのだ。
まったく…。
「頑固者メ…」
「当たり前だろ?ダチ置いて逃げる奴がどこにいるんだ」
「仲間ですもんね!!」
「皆んながいなかったら…今の、私はないの…」
四人は顔を見合わせ、微笑む。ギンタもここにいれば一緒に微笑んでいたのだろうか。
そんな事を思いながらケレンはボロボロの聖騎神の体で立ち上がる。
「俺たちにできることは少ないとは思うが、できるだけバックアップするぞ。ケレン」
「いざとなれば瞬間移動できるので任せてください!」
「…援護射撃くらいなら、できる…!」
「十分ダ。今ナラダリウルスニモ負ケハシナーー」
俺は三人の顔を見る。
すると、三人共目を目一杯見開き、驚いている。
そして三人共俺の胸らへんを凝視している。
俺も皆んながみているものを見る。
そこには大きく、バチバチと光っている槍が刺さっていた。
あ、死んだ。
「ハ…ア……」
「え…あ…?」
イーサンはあまりの出来事に言葉を失い、ヘレーナとマリーは悲鳴を上げている。
俺はゆっくりと後ろを見る。
「大丈夫ですか!?」
「セイヤ!ナイス!さぁ、今の内にこっちへ!」
そこには先程駆けつけた勇者達がいた。
「あれ?お前達、館の時の!…今は後回しだ!早くこっちに!」
「何しているの!?助けてやるって言ってるの!わかったら早くこっちへ来なさい!このバカ!」
「…」
彼らは俺たちが襲われていたのだと思ったのだろう。
そりゃそうだ。今まさに襲ってきている聖騎髪が俺たちの目の前にいるのだ。俺だって襲われていると思う。
仕方ないことだ。
あぁ、仕方ない。
「ケレン…あぁ…」
「…」
「おい…。返事してくれよ…なぁ…?」
「…」
「く……う…う…」
聖騎神の手を握る。すると、その大きい手はサラサラと塵になり俺の手から消える。
見ると、聖騎神の体はなくなり、ケレンの元の姿に戻っている。
胸の部分はぽっくりと穴が開いて…。
プッーー
「セイヤ君。あの人たち、聖騎神から離れませんよ?」
「どうしたんだろう?」
「さぁ?もしかしたらこいつらの仲間なんじゃないの?ていうか、どうせこいつらもあの時倒す予定だったし、ここで殺っとけば?」
「セイヤ!早くこちらにも来ておくんなまし!これ以上もちませんわ!」
「わかった!ミシュエラ!ここは頼んだ!」
「ええ。任されたわ」
勇者達はダリウルスの方へ向かい、ミシュエラと言う名のドリルヘアー女はこちらに歩いてくる。
「あなた達、人間として恥ずかしくないの?すこしは助けてあげようと思ったけど、まさかこんなゴミ中のゴミどもの仲間なんてね。ゴミはゴミのように死になさい」
「待ってください!この人は人間です!私達を助けてくださったんです!」
「あっそ。興味ないわ」
女はムチを手に、マリーを叩く。
ムチには無数のトゲが付いており、マリーの体を容赦なく切り裂く。
「いっ…!」
「しつこいわね。そこまでいくと大概よ?誇り高いエルフなんて言われてるけど、ただのバカってことよね」
「やめて…!」
マリーとヘレーナが前に出て必死に止めようと道を塞ぐ。
お互い傷き、立っているのもやっとの状態だ。
もう十分だろう?
誰も傷ついて欲しくない。
俺は何をしているんだ?
ただただ仲間が死にゆくのを見守るだけか?
ケレン。お前ならどうするんだよ?
ーーブブッーーツーーーブブブッーー
さっきからなんなんだ?雑音が頭に響いて…
ーー安全ーーーー装ーーーー置ーー解ーー
なんだ?俺の頭の中に誰のかわからない記憶がーー
俺は立ち上がり、ただ無心に歩き出す。
頑張って耐えているマリーやヘレーナの間を通り、ドリル女の前に立つ。
「ふん。何かしら?今更出てきて何ができるの?『俺の命はくれてやるから〜』的なこと言うつもり?悪いけど、全員殺すから意味ないわよ。そんなかっこつけ」
ドリル女は容赦なくムチを俺に打ち付ける。
そして、トゲは俺の肩や胸、腰や足まで刺さり、縛られている。
あぁ、久しぶりのーー
「痛みだ」
「へぇ。叫び声1つあげないなんてね。なかなか骨のある男じゃない。それともドMなの?」
「さっきから…」
ーーププー安全装置解除。正常起動。お帰りなさいませーー
「なによ?あまり調子に乗らないことね?その気になればすぐ殺せるんだから。ていうか、面白くないからあなたもう殺すわ」
「ウルサイ。黙レ」
ーー''聖騎神イシュマダル様''ーー
体が光り、締め付けていたムチは一瞬で弾け飛ぶ。
そして、光が収まった頃。
「天…使…」
ミシュエラはただそう思った。
いや、思ったのではない。
本能がそう感じざる得なかったのだ。
そこに立っているのは明らかに襲ってきた聖騎神達とは違く、ひとまわり大きく羽の一本一本が神々しい程。
そして、膨大すぎるほどの魔力のオーラがイシュマダルの体を纏っている。
「我、聖騎神イシュマダル」
彼は名を名乗り、''神剣''を片手に一歩歩く。
ただ一歩歩いただけ。
それで、周囲の家々は彼の神としての圧力により一瞬で吹っ飛ばされて粉々になる。
完全に放心状態であるミシュエラを見下ろし、一言。
「コレヨリ''全テヲ殲滅スル''」




