最強vs最強
暇な時に読んで頂ければ幸いです。
「何…故…」
玉座から離れ、長い部屋を聖騎神を率いて歩いていたはずのイシュマダルの心臓部に突き刺さっている光を放つ聖剣。
「貴様ハモウ、我ラヲ率イル資格ハ無イ。''弱キ者''ナド必要ナイノダ」
イシュマダルの後ろから聞こえる機械音に近い声。
「…''ダリウルス''。我ガ右手…ソンナニモ貴様ハ…」
「私ダケデハナイ。ココニイル皆、貴様ニ付イテ行ク者ハイナイノダ」
振り向くと、周りの聖騎神達はイシュマダルに跪いているのではなく、ダリウルスに跪いている。彼らは皆、ダリウルスに忠誠を誓っているという事を表している。
「貴様ノ弱ミハタダ1ツ。''人ヲ愛シタ事''ダ。我ラ聖騎神ニ有ッテハナラ無イ感情ダ」
「…グ…」
「サラバダ。元聖騎神団長、イシュマダル」
イシュマダルは力を振り絞り自分の聖剣を手に取り、ダリウルスを斬ろうとするが、それより先にダリウルスに蹴られ倒れてしまう。
「…グゥ…」
「落トセ」
ダリウルスがそう言うと、イシュマダルが倒れ伏せていた床が消え、落ちる。
イシュマダルは落ちる。長い長い時間、落ちる。
雲の中に侵入し、抜ける。その後の景色は、緑の森が広がっている。
イシュマダルは落ちる。いや、落ちきった。
ドンッ!と鈍い音が響き渡り、木に登っていたリスや鳥達が驚き、逃げ回る。
「ガハァッ…!」
さすがに天空からの落下ダメージは馬鹿にはならず、相当なダメージを負ったイシュマダルは動くことすら出来ない。
「…低動力…システム…起…動……」
イシュマダルはそう言うと、今まで体に纏っていた光がフッと消える。
そして、イシュマダルは深い眠りについた。
【低動力システム解除】
【現エネルギー残高6%】
【体外からのシステム再起動装置により、システム再起動】
今まで眠っていた私の意識が徐々に呼び起こされる。
視界が開ける。
私の下半身が見える。それは長年動いていなかったため、苔が付いていたり錆びたりしている。
「わわわ…!!」
右斜め下、私のぶらんと垂れている動きそうにない右腕のあたりから少年の声が聞こえる。
「なんや!めっちゃびっくりした!」
「敵襲ー!!敵襲ー!!!」
1人の警備兵が部屋中を駆けながら叫ぶ。
「敵襲だ!全員備えろ!敵はもうすぐそこにーー」
警護兵が最後まで言い切る前に殴られ、吹っ飛ぶ。
「敵…襲…」
「おい!大丈夫か!?敵だ!集まれ!!」
叫んでいた兵士の周りに巡回していた兵士達が次々と集まる。
「旦那ぁ。めちゃくちゃ集まって来てんで…」
「あぁ。なかなか燃える展開だな」
「どこが燃えんねん…あんた絶対戦闘狂やろ…」
暗闇から聞こえる2人の声。
コツコツコツと足音が聞こえる。またガシャンガシャンという足音も聞こえる。
兵士達は広い廊下を横一列に並び、装備している盾を構えて待つ。
2人の足音が段々と近づいてくる。
月の光が差し込む所まで2人が来る。
兵士達は息を飲む。
そこにはハチマキをし、無精髭を生やす男と、もう1人はハチマキの男よりもだいぶ大きく、二本の角が禍々しく、まるで鬼のような仮面を付け、そして胴から足にかけて美しい漆黒の鎧などを装備している大男の姿があった。
「お、鬼だ…」
「鬼?俺がか?」
呟いた兵士に反応する大男。
「鬼か…なかなかにありだが、違う」
大男が一呼吸起き告げる。
「俺は黒騎士だ」
構えていた兵士達がボソボソと話し始める。
「…おい、知ってるか?」
「…知らん。聞いたこともない」
兵士達は思う。黒騎士と名乗ったこの男、確かに胴から足までは騎士が装備している防具に見えなくもないが、付けている仮面を見るに明らかに騎士とは言い難い。
「ま、自己紹介はこれくらいでいいだろう」
そう言い、腰にある刀を抜く。
刀からは黒く淀んだオーラが出ている。
「さて、派手に目立とうか。ケレン」
「…ここまで来たんや!もうどないにでもなってまえ!よっしゃらー!!」
ハチマキの男が叫びながら走ってくるのを合図にし、一列に並んでいた兵士達も列を乱すことなく前進する。
「!?あの、大男はどこだ!!」
「え?…旦那…?」
1人の兵士が黒騎士と名のる大男がいない事を他の兵士達に教える。
「よく訓練されている。が、後ろに周られたら意味のない陣形だな」
「なっ…!」
「衝撃波」
黒騎士は刀を持っていない左手を兵士に向け、放つ。
すると、兵士達は一気に吹っ飛んだ。
ケレンの元に。
「えええ!?旦那!やば…ちょっ!ぐぇっ」
「あ、すまん」
ケレンは吹っ飛んできた兵士達に押し倒された。
「かんべんしてぇや旦那…」
「悪い悪い。だが、お前なら大丈夫だろ?」
「…手、貸してくれや」
ケレンは手を伸ばすとギンタも手を伸ばし、気絶した兵士達に埋もれているケレンを引き上げる。
「地表地図。ん?」
「?どないしたんや?」
ギンタが暗くて先が見えない方をジッと見つめている。ケレンも同じ方向を見る。
奥で一瞬何かが光る。
「伏せろケレン!」
「うぉ!?なんや!?」
ケレンの頭上を氷でできた弾丸がものすごい勢いで通過する。
「あらあら。私としたことが…外してしまいましたわ」
奥からゆっくりと誰かが歩いてくる。
「誰や!もうちょっとわいの反応が遅かったら死んでたで!?」
ケレンが怒鳴り終えると、歩いて来る者が姿を現わす。
「…え?嘘やろ…?」
「お前、確か勇者と一緒にいた女だな」
そう、聖騎神を倒して帰ってきた時に勇者と一緒に手を振っていた内の1人。
艶のある青色の髪は腰まで伸びており、目はぱっちりと開いてはいるがどこか鋭く、吸い込まれそうな目つきをしている。いわゆるクール美女に匹敵する女性だ。
着ている服は透き通るような白い着物に似ているものを着ている。
「お昼ぶりですわね?泥棒さん」
勇者と一緒にいた女はギンタの方を向き、話しかけて来る。
「何故ここにいる?俺たちを止めに来たのか?」
「ええ。ここの''主人からの依頼''で''私達''が参った次第ですわ」
「主人だと?」
「シルさん!話している暇はありませんよ!」
ギンタとケレンの後ろからまた女の声が聞こえてくる。
ギンタは地表地図をずっと展開したままなので正確な位置は最初から分かっていたが、ものすごい速さでこちらに接近して来る。
「筋力向上!くらいなさい!」
女は大きく飛び、ギンタの頭上をめがけて短剣を振る。
「空間移動」
ギンタの真上に円状の空間が生まれ、攻撃してきた女が吸い込まれる。
すると、シルと呼ばれる女性の横に空間が生まれ、女が顔から落ちる。
「あだっ!…あれ?私なんで…」
「アリス!来ますわよ!氷壁!」
シルが叫ぶとそこから氷でできた壁が出現する。
しかし、氷の壁はすぐにギンタが一発殴るだけで破壊される。
「な…!素手で私の魔法を!」
「火炎!」
アリスがギンタに向かって手を出し、そこから炎が出現し、ギンタを襲う。
「獄炎」
ギンタの手からアリスより何倍も大きく、そしてどす黒い闇の炎がアリスの炎を覆いながらシルとアリスの方へ襲いかかる。
「え!?嘘でしょ!?私の火炎が…!」
「やむ得ません!''万能なる氷界''!」
死を欲しているかのように唸りながら襲いかかって来る獄炎を打ち消した魔法、''万能なる氷界''。それは自然変換魔法という類で世界で一握りしか習得できない魔法の1つである。
一瞬で館の中が氷で固まり、館内にいるのにあちこちから雪が降ってくる。
「なんだこれ?すごいな」
「旦那!感心してる場合ちゃうで!ていうか、あの人はシル=リサイアラード!自然の神に愛され、神からの恩恵として自然を操ることを許された人や!勝てるはずないって!」
「ふふふ。観念して頂けたかしら?この魔法を使っている間はあなたのどのような魔法を使っても効果はないわ。これは最終手段だったけれど、あなたに使って損はなかったと判断したわ。ま、私が止めるまでこの魔法は持続可能だけれどね」
「完全無効化」
「「「え?」」」
ギンタ以外の全てが驚いた。
神、または神に許された者にしか使うことのできない最高峰の魔法が。
通常の者では絶対に破ることのできない魔法が。
通常の者でなくても打ち勝つことのできる魔法を生み出すのに何百年とかかる魔法が。
ギンタのたった一言で、それがなかったかのように無に還る。
「ありえないわ…そんなこと…マサヤでも止めるのに苦労したのに!」
マサヤというのはあの勇者の名前だろうか。
「ネタ切れか?それなら観念するんだな」
いつ移動したのか、そしていつ出したのかわからないが、シルとアリスの後ろにギンタがおり、そして2人の頸の部分にピタッと二本の刀が触れる。
「…あなた、一体何者なの?」
アリスがギンタに問う。
「まあ、そうだな。俺は黒騎ーー」
最後まで言い切る前に何かが自分の胸元で光る。
そして、気づけば館内にいたはずが壁をぶち破り、広すぎる庭の地面にめり込んでいた。
気がつくと空を見上げて倒れていた。さっきまでシルとアリスを追い詰めていたはずなのだが、一体何が起こったのだろうか。
「よくもシルとアリスを虐めてくれたな。悪党」
声がする方を見る。というか、自分が見ている空の真正面にそいつが浮いている。
そいつは黒髪で高校生くらいの青年。まっすぐな目をしておりマント付きのミスリル製の防具を着ている。
「…嫌な目だ」
俺がこっちの世界に来る前に嫌という程見てきた目。
自分に自信を持っており、かつ周りからの信頼も厚く、なんでもできるヒーローみたいなやつ。
俺は散々こいつらの様な奴に蹴落とされて来た。
たしかに、全てがこいつらのせいではない。というかほとんどが自分の能力不足で、自分で首を締める結果になってはいた。
だが、俺だって目立ちたかった。役に立ちたかった。
自分にやれることはやったし、努力もした。
たが、最終的に美味しいところを持っていくのはいつもこいつらだ。
でも、俺にだって頼られる場所があった。
ゲームの中だ。俺は誰からも頼られ、憧れリアルでは無かったものを手にできた。
異世界でも、奪われるのか。
「おいで、''聖霊''よ!我が身にその力を宿せ!」
勇者は大声で叫ぶ。すると、彼の体に美しいとさえ思う綺麗な紅色の炎が纏われる。
「精霊火!」
炎が龍の様になり、俺を襲う。
俺に魔法系は全て効かないはずだが、熱い。
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!
「ああああああああああ!!!」
何故効く?これが精霊の力か…?
それより火を消さないと。
「……水恵………!」
今度は俺の体に水を纏う。火は消えたものの皮膚が完全に焼かれ、ぷすぷすと音を立てている。
【フルポーションを使用】
右手にブォンとポーションが出てくる。俺はそれを体にまく。
そうするとさっきまでが嘘かの様に痕跡を残さず元に戻る。
装備している物は全て無傷。さすがとしか言いようがない。
「…なかなか勇者のくせにえぐいことするんだな」
「そりゃ、僕の仲間に痛い目を合わせたんだ。僕だって怒る」
痛い目に、痛い目にと言うが正直俺は何もしていない。が、
「…俺を本気にさせたことを後悔させてやる」
「それは僕のセリフだよ」
互いに睨み合う。勇者が見下ろし、俺が見上げるといった感じだ。
俺が攻撃するよりも先に向こうから攻撃を仕掛けてくる。
「精霊達!もう一度だ!精霊火!」
炎の龍が先ほどより一層大きく、そして力強く俺の元へ向かってくる。だが、
「2度もくらうか。水龍」
龍なら龍で対抗だ。
水でできた龍が勇者の龍に襲いかかる。
それぞれの龍は迷いなく突進し、ぶつかる。
その衝撃で二頭が弾け、消える。
「落雷!」
「神雷」
2つの雷がぶつかるが、俺の神雷が勇者の落雷より強く、勇者のだけが消滅し俺のは勇者めがけて迷いなく進む。
「く…!空間移動!」
俺の後ろに空間が生まれ、そこから神雷が出てきて、俺に直撃する。
「深淵」
「なっ!効いてないのか!?」
俺の周りからゆらゆらと黒い球が浮かんでくる。
「あああああ…あ…あ…あああいいいいい…」
球はこちらに振り向くとガタガタの歯並びに汚れた歯を見せながら何かを訴えかけている。
これは亡霊だ。
呪霊といってもいい。
「いけ」
それだけを伝えると呪霊たちは勇者の方を向き、我先にと突進する。
「ぼぎゃぁぁぁぁがぁぁぁぁあああああ!!」
「…なんて者を…!」
勇者は左手の薬指にはめている指輪を呪霊に向ける。
「祝福の指輪…どうか、この迷える者たちに慈悲を」
すると、指輪から光の衝撃波が放たれ、呪霊は一瞬で消える。
「…許さない!''精霊の怒り''!!」
勇者の周りから無数の小さい羽を生やした女の子や男の子が姿を現わす。すると彼らが持っている魔力のほぼ全てが勇者が掲げている白金色の剣に集まる。
「くらええええええええ!!」
勇者は強大すぎる魔力が集まった剣を思いっきり振る。
すると膨大な魔力が俺に向かって放たれた。
「いい…すごくいい!どっちが強いか勝負だ!」
俺は右手にデカすぎるに斧を持ちかえ、天に斧を掲げる。
すると暗い夜の空から雷が斧に落ちてきて、斧に雷が憑依する。
この雷は、''まじもんの神''からの雷。
その神とは?
雷を使う最強の鬼、そして雷を名前として使うことを許された神、''雷神''である。
「精霊なんかに負けるかよ」
勇者に向かって思いっきり振りかざす。
精霊vs雷神。
2つの光がぶつかり合う。
バチバチと音を立て、風圧で庭に立っている大きな樹木が吹っ飛ぶ。
「いけぇええええええええええ!!!」
勇者が力一杯に叫ぶ。が、
フッと。
「え?」「は?」
2人は困惑する。
今この瞬間まで止めることは不可能な程、競り合っていた二つの魔法を超えた物が。
一瞬にしてなかったかのように消える。
その消した正体はーー
「我、聖騎神ダリウルス。計リ知レヌ魔力ヲ感知」
そこにいたのは炎の翼を大きく広げ、堂々とした態度で浮いている聖騎神がいた。
「…な!?聖騎神だと!?そんな、僕が倒したはずだ!」
セイヤはダリウルスに訴えかけるが、セイヤが瞬きをして目を開けた瞬間にはもうダリウルスの姿がなかった。
「がはっ…!!」
瞬きをして目を開ける時間およそ0.0何秒の世界で。
ダリウルスはセイヤの横に辿り着き、気配も感じさせないまま、彼の肋に大きな足で蹴り、セイヤが館の壁に減り込む。
「…」
聖騎神が俺を睨みつける。
「あ、俺仲間じゃないんで」
両手を交差し、バツを作る俺。
聖騎神が元から興味ないと言わんばかりに無視し、気絶している勇者の元へ歩いて行く。
「セイヤ!!」
アリスとシル、そして捕らえられているマリー達が駆けつける。
ん?捕らえられている…?
「ギンター…捕まっちゃったのです…」
ウルウルと涙目になって訴えかけるマリー。
魔法の縄で縛られており、その線をたどる先にはドリルヘアーの気の強そうな少女がいた。
「すまん。女の子といって侮っていた…!」
「イーサン…ロリコン、属性…」
イーサンとヘレーナもしっかり捕まっており、よく見ると少し後ろにケレンが足に縄を縛られ、引きずられながら来ている。
「わいだけ酷くない!?」
「黙りなさい。泥棒風情がおこがましいにも程があるわ」
ゴミを見るような目で引きずられるケレンを見下す。
そこへ聖騎神が手に持つ聖剣が容赦なく振り下ろされる。
「ッ!!危ないじゃない!これだから知能の無いブタは嫌いなのよ!」
全員無事に避けきり、無傷だ。
「て、あれ…?ゴミどもがいない!?」
「だ、旦那ぁ…」
俺は少女からマリー達を奪還し、一旦下がる。
「返しなさい…このゴミが!私のー」
「ミシュエラ!避けて!」
少女の名前はミシュエラと言うのか。彼女が俺たちに何か魔法を放とうとするが、ダリウルスの攻撃によって阻まれる。
聖騎神はこちらに向き、小声で何かを言う。
「神殿デ待ツ」
「あ?何て言ー」
聖騎神から眩しすぎる程の光が発せられ辺りが見えなくなる。
だが、俺たちも逃げるには最高のチャンスだ。
光が収まり、辺りを見渡すと、そこにはもう俺たちの姿はなかった。
俺たちは宿に瞬間移動した。
「みんな怪我は?」
俺が聞くと、それぞれ怪我はないというサインを送ってくる。
「マリー。捕まっていたエルフ達はどうした?」
「はい!無事にファラリの森へ送ったのです!人前でスキルは使っちゃいましたけど、イーサンさんやヘレーナちゃんは大丈夫だと思ったのです!」
イーサンとヘレーナも最初は驚いたようだが、誰にも言わないと言っているし、彼らなら心配はないだろうと俺も思った。
「イーサン、ケレンそれにヘレーナ。お前達のおかげだ。本当に感謝する」
俺は深々と頭を下げる。それを見ると、イーサン達は慌てながら「顔を上げてくれ!」と言うので、仕方なくあげる。
顔を上げイーサンを見ると、彼は真剣な眼差しでこちらを見る。俺は彼が何を言いたいのかすぐにわかった。
「ギンタ。お前がこの王国の民じゃないのはわかってる。だが、頼む!おそらく明日か明後日には聖騎神が攻めてくる。俺たちに力を貸してくれないか…?」
そう、先ほどの聖騎神の襲撃だ。
たった一体にも関わらず、人族最強と謳われている勇者セイヤがあの様だ。
聖騎神が本格的に襲撃してきたら1時間と持たず王国が滅ぶのは目に見えている。それに、
「あぁ。俺たちも助けてもらったしな。今度は俺たちが手助けする番だな」
「ですです!」
俺とマリーの承諾に安堵した表情を浮かべるイーサン達。「本当にありがとう」と感謝し、どうするかを話してくれる。
「俺とケレンでギルドの奴らに事情を話してできるだけのことをやってみる。何してもおそらくは手遅れだろうがな…」
いきなり「聖騎神が襲撃してきます。皆さん逃げてください」と言ったところで誰がそんなことを信じるのか。
正直、聖騎神に狙われたら最後だと言ってもいい。
それなのにイーサン達はこの王国から逃げず、みんなを守ると言うのだ。
おそらく、聖騎神が襲ってきたらこの中の誰かは死ぬだろう。いくら俺が強いとはいえ、流石に全員を守り切れるかといえば至難の技だ。
何故、そこまでして守るのか。俺にはわからない。だが、彼らにも彼らなりの仁義というものがあるのだろう。俺もできるだけのことはやろうと思った。
「とりあえず少し休もう。みんな疲れが溜まってるはずだからな」
俺はそう言うと各自解散しその場を後にした。
一直線にしかれる黒色のカーペットの先に踏ん反り返っている聖騎神のトップ、ダリウルスが誰かが歩いてきていることに気がつく。
「来タカ」
コツコツと歩いてくる人影。
他の聖騎神達も気づいたのだろう。横一列に直列し、まるで銅像かの様だった聖騎神達の目が光、人影の方は体を向ける。
「もう…」
まだコツコツと歩きながら話す人影。
足を止めて立ち止まると、彼は一言だけ告げる。
「ここから先は行かせない」
すると、彼の体が光り、一瞬で''聖騎神へと姿を変える''
翼は炎で造られており、周りの聖騎神よりも少し薄汚れてはいるが立派で白く、大きい鎧姿の聖騎神だ。
それを見ると、座っていたダリウルスが立ち上がり、聖剣を構える。
「フン。貴様ダケデ何ガ出来ルト言イウノダ」
同時にニ騎が動き、お互いの剣が交わる。
「絶対二行カセナイ!ダリウルス!!」
「ホザケ。''イシュマダル''」




