異世界最強はエルフを助けるようです。【後】
暇な時にでも読んで頂けたら幸いです。
ヴェッツァニア王国城内部。今、王国内では秘密裏に貴族達で会議が行われていた。
「諸君。多忙なのは重々承知であるが、集まってくれたことに感謝する。」
沈黙の中最初に言葉を発したのは、今回の会議を開いた張本人、サンカリア=ローズ。ヴェッツァニア王国貴族の中で随一の頭脳の持ち主で、国王からの信頼も厚い。貴族にしては比較的若く当主になった人物だ。
「早速で申し訳ないが、わざわざ呼び出した理由を聞かせて貰いたいのだがね?わしは貴公の様に暇ではないのでね」
やたらつっかかる小太りで一人態度のでかい座り方をしている男、ヴァルダナ=ニバルレルン伯爵だ。
「そーですぞ。サンカリア候。ヴァルダナ伯は貴族身分をあげるために必死なのですからな」
他の貴族達から笑いが起こる。
ヴァルダナ=ニバルレルンは声の聞こえた方を思いっきり睨みつける。だが、いくら睨みつけても他の貴族の方が身分が高く、ヴァルダナ=ニバルレルンが圧をかけたところで何も怖くはないのだ。
頃合いをみてパンっとサンカリア=ローズが手を叩く。
「戯れはそこまでにしよう。ヴァルダナ伯の言う通り速やかに話し合わなければならない案件なのだ」
わざとらしく咳払いをし、内容を告げる。
「最近、''ワイバーン''程の''何か''が出現したらそうだ。場所までは不明だが、膨大な魔力がこの王国付近に…確実にいる」
「!?」「ワイバーン並みだと!?」「そんな話、誰が信じるというのですか!」
約200年前にこの王国を含め、各国を焼き尽くしたと言われる害獣、ワイバーン。
今ではほぼ全てが復興されているが、焼き尽くされ荒地になった元平野などがあり、それはかつてワイバーンなる害獣がいたのだと嫌でも思い知らされる。
「私も嘘だと心から信じたい。だが、私の優秀な魔術師の中に''スキル''持ちがいる。…残念だが、スキルは嘘をつかない」
スキル持ちは稀に存在する。そのスキルは様々で、持っている者はとても重宝されるのだ。今回、サンカリア=ローズの保有する魔術師のスキルは''魔力感知''というもので、相手がどの程度の魔力を持っているかがわかるものだ。
「ほんの数秒ではあったが確かに凄まじい魔力を感じ取ったそうだ。先ほども言ったが、正確な場所までは不明だがおそらくはエルフの住処であるファラリの森だと私は思っている」
「なんだと!?」
貴族達がざわつく中、1人声を上げて驚いた男。ヴァルダナ=ニヴァルレルン。
(くそ!よりによってあのエルフどもの森だと!?…いや、エルフどもは魔法だけは使えるな。何かとやらを魔法で押さえ込むことができたら…ここにいる誰よりも偉くなれるぞ!)
ニヤリと不敵に笑う。ヴァルダナ=ニヴァルレルンの中でもはやエルフの領地よりも自分の地位を上げることしか頭にはない。
「サンカリア候。そのことだが、わしが調査してこようではないか。兵はわしの者どもを連れて行く。サンカリア候にはその魔法使いを貸してもらいたいのだがいいですかな?」
「…構わないだろう。だが、私の部下にもしものことがあれば…」
「わかっておる。出くわせばすぐさま退散しますわい」
「…では、この件はヴァルダナ=ニヴァルレルン伯爵に任せよう。諸君も何か情報が入り次第報告をしてもらおう」
一方、ファラリの森中心部。
「どうだ、いけそうか?」
「なるほどな。わからないがやってみるさ」
薄暗い紫色が光る玉のようなものが大樹に埋め込まれている。それには魔力が込められており、大樹の生命を吸収し、魔力を高めている。
俺は右手を玉の方向に向ける。
「こんなかんじかな」
右手に力を入れ、玉を握り潰すような感じで手を握る。
パリッ
「おぉ!?欠けたぞ!後少しだ!!」
パリパリパリ…パキンッと。
玉が割れたと同時にその玉から感じた魔力は気配をし、今まで萎れていた大樹が立派になっていくのがわかる。
「ギンタ!!す、すごいです!!!いったいどうやったのですか!?」
興味津々の顔で近づくマリー。
「これは俺がつけてる装備のおかげだよ。魔力を持つものはどんなものでも破壊か倒すことができるんだ」
そう。俺がまた右腕の装備、''支配の右腕''。
魔力をもつモンスターや魔力を持つ武器などにこの右腕を向けることで倒す、無力化が可能な装備アイテムで、PVPでは禁止装備。これさえ持ってたら周回プレイがはかどるから助かるんだよなぁ…。
「ギンタよ、心の底から感謝する。お主がいなければこの森はもうだめだった。今日は良き日じゃ、宴会でも開こうではないか!」
今までずっと険しい顔で見ていたマリーの親父だったが、呪いが解けやっと素の対応ができたといった感じだ。最初に会った時とは随分様子が違うなぁ…。
まぁなにであれエルフのみんなに歓迎されるよーになって本当によかった。ずっと睨まれまくった俺は正直心が折れかけだったからな。
「やっとこの世界にきて飯が食えるのか…」
そーいえばこの世界にきて俺はまだ何かを口にしていない。しかも空腹もなく、もっと言えば食欲すら忘れていた程だ。
「ゴ・ハ・ンッ!!!」
「おい!ヨダレ垂れてんぞ!抑えろ抑えろ!」
宴会=ご馳走とわかった途端にマリーの目が星になる。本当にわかりやすいやつだ…。
「こら。マリーよ。あまりはしたない真似をするでない。すまないな。昔からこの子は…」
「えへへ」
「ほめとらんわい」
はぁ…。と深いため息をこぼす親父さん。まぁ、苦労したんだろうなあ。
「宴会をするにしても時間がかかろう。お主も疲れたであろう。少し休むと良い。マリー、案内しなさい」
はーい!と元気よく返事をし部屋を後にする。
「ギンタは本当にすごいんですね!本当に来てくれたのかギンタでよかったです」
「それもこれも全部マリーのおかげだと思うぞ?たしかに呪いを解いたのは俺だけど、俺を呼んだのはマリーじゃないか。お前の思いが伝わったんだな」
俺はマリーの頭を撫でてやる。艶のある金髪がやたらサラサラで気持ちいい。
「ギンタ!本当にありがとうございます!宴会が終わればギンタを元の世界に戻すことはできますが…どうしますか…?」
少し、寂しそうな眼差しで見つめるマリーだが、俺はこっちに来てから決めいる。
「俺は…」
「我らはヴェッツァニア王国の者なり!エルフ族代表の者よ!我らが主、ヴァルダナ=ニバルレルン伯爵の前へ!」
俺が答えを言おうとしたと同時に外から声が聞こえる。
「早いな。もう来たか」
思っていたよりだいぶん早い。1日明けて来ると思ったが、1時間くらいで駆けつけたか。
「あ!あの人たちです!マリー達の大切な大樹に呪いをかけたのは…」
よく見ると、中央に1人小太りで鎧を着ていない男がいる。あいつがヴァルダナ=ニバルレルンか。
「何をぐずぐずしておるのだ!早くわしの前にこぬか!この馬鹿共が!」
口を開いたかと思えば罵倒を飛ばす伯爵。聞いていていい気はしない。
そこへマリーの親父は護衛5人を引き連れて伯爵の元へ行く。護衛の中には俺に槍を突き刺そうとしてきた奴もいる。
ヴァルダナ=ニバルレルンとマリーの親父が睨み合う。
「今度はこの森に何の用だ」
「なぁに。この森に膨大な魔力を持った化け物が現れたというのを聞いてな。そこでわしは愚かなエルフ共にチャンスを与えようと思ってきたのだ」
伯爵は自分の髭をにじりながらニヤニヤと告げる。
「貴様らは魔法を使って封印や召喚ができる''だけ''の種族だ。どうだ?貴様らがその化け物を捕まえた暁には、この森を救ってやらんこともない。よく考えることだな」
わっはっはと豪快に笑う伯爵だが、同時にマリーの親父も豪快に笑ってみせた。
「貴様、何がおかしい!頭でもおかしくなったか!」
「いやいや、頭なぞおかしくはないわ。だが、なんともおもしろいことよ。貴様のその惨めな体ほどにな」
「貴様!」
伯爵の側にいた兵士の1人がマリーの親父の足を蹴り、跪かせる。
それと同時に伯爵側の兵士たちがエルフ達を囲む。
「くっ!族長!」
「慌てるな!落ち着け」
マリーの親父が一括。するとピタッと冷たいものがマリーの親父の首に触れる。
「雑種ごときが調子にのるな。貴様らは力も無いくせにやたらと高い誇りを持つ種族だ。実に忌々しい。穏便に事を済ませようと思ったが、やめじゃ。貴様らのその態度は前から気にくわなんだ。見せしめとして貴様は殺す」
ここからは遠く何を言っているか俺は聞こえなかったが、マリーははっきりと聞こえたのだろう。
顔が青ざめ、「やめて!!」と叫び、見ると目から涙が流れている。
状況からみると、伯爵がマリーの親父を殺す。と言った感じか。
「ふん。態度がでかいのは貴様とて同じよ。よそでしか威張れない小者が」
「…もうええわい。死ね」
伯爵が剣を構え、力一杯に振り下ろそうとした時。
「やめてください!!」
伯爵の前に''一瞬''で現れたマリー。
「マリー!?何故きた!すぐ戻りなさい!」
「ほほう。貴様、''瞬間移動''が使えるのか。よいよい!!貴様はわしの所で飼ってやろう。じっくりと味わってやる」
伯爵がマリーを舐め回すように身体を見る。
「ひっ…」
伯爵が言ったことを想像したのか、身体がプルプルと震えるマリー。だか勇気を絞って伯爵に言う。
「も、もう呪いは解きました!これで貴方に従う理由はないです!!もう帰ってください!」
「わははは!呪いが解けるだと?貴様らごときが解けるわけないわい!おい、この娘を捕らえよ」
「まて!この子は関係なかろう!我1人で十分だ!この!離さぬか!」
マリーに近づく兵士に怒鳴るマリーの親父。だが、別の兵士が取り押さえ、ただ見ていることしかできない。
「ところで、誰がその呪いを解いたのだね?ん?とっさに嘘をついて誰が解いたのか決めてなかったのかね?」
伯爵の兵士全員が笑う。
少し、頭にきた。
「!?…とんでもない魔力!?だめ!!何か来る!」
魔術師が言った瞬間、大樹から黒い影が飛び降り、バンッ!と着地し砂埃が舞う。
「…解いたのは俺だ」
全員の視線を浴びる。砂埃の中から出てきたのは、全身が艶のある漆黒の鎧に包まれており、見るだけで震え上がりそうになる程の恐怖を感じさせる、まさに鬼と思えるような兜。目が赤く光っており、ゆらりゆらりとこちらに近づいてくる。
「ギンタ!!!」
マリーが潤目でこちらをみる。その顔は恐怖や不安ではなく、安堵した顔つきだ。
「なんて魔力…間違いなく死ぬ…」
1人の魔術師が身体を震わせながらこちらをみる。マリーとは真逆の畏怖している顔つきだ。
「そ、そいつを取り押さえよ!叶わぬなら殺して構わん!いけ!」
マリーの親父の護衛達を取り囲んでいた兵士の中の1人が俺に向かって、剣を振り下ろす。どうやら捕まえることは無理だと悟ったのだろう。
振りかざした剣が俺の鎧にあたると同時に、パキンッ!と鈍い音が鳴り、剣が折れる。
「堅…っ!」
「悪いな、そんなのじゃこの鎧は傷1つつかねぇよ」
俺は2割程度だが、マリーを笑われた事もあり少し殺意を持って殴る。
一瞬でパァンッ!と''弾けとんだ''
あ、やべ。やりすぎた。
伯爵や魔術師、兵士達が唖然としている。
「【瞬間移動】」
瞬間移動でマリーの親父と護衛兵、そしてマリーを奪還する。
「なに!?」
驚く伯爵や兵士達。
「これで巻き込まないな。【意識不明】」
すると、伯爵と魔術師以外の兵士全員が崩れ落ちる。
「な!お、おい!お前達!立て!わしを守らんか!…えぇい!使えん!魔術師!わしを守れ!」
伯爵が魔術師に言い寄る。見ていて滑稽だ。
「ん?魔法耐性があるのか。もしかしてそのローブの効果か?」
俺が放ったのはLv.10段階あるうちのLv.1程度の魔法だが、やはり魔法を無効化できる効果をもつものがこの世界にもあると知り、俄然興味が湧いてきた。
魔術師を見ると、言い寄ってきた伯爵を一蹴し、見下ろしながら言う。
「…私は貴方の護衛じゃない。…ただ魔力感知で正体が何か探すだけ。…今、目の前にいる黒い鎧を着た人がそう」
そう言うと、魔術師は俺の方に向かって近づき、俺の前で跪く。フードを深くかぶっており、顔がよく見えない。
「…私はロレッサ。…サンカリア=ローズ様に忠誠を誓う魔術師。…数々の無礼をどうか、あの者の首で許してほしい。…ヴェッツァニア王国には貴方が必要。…準備が整い次第、迎えに上がる」
そう言うと、ロレッサは立ち上がりアイテムを使い、瞬間移動した。
急にあたり一帯が静かになる。
「みんな、大丈夫か?怪我とかないか?」
大丈夫だとは思うが一応聞く。
「また、お主に助けられたな。礼を言うぞ」
「すぐに助けに来れなくて悪かった」
「ギンター!」
俺に突っ込んでくるように勢いよく抱きしめてくるマリー。だが、その抱きしめている腕はまだ少し震えている。
俺はまた頭を撫でてやる。
「よく頑張ったな。まさか、マリーも瞬間移動できるなんて知らなかったぞ」
えへへと喜ぶマリー。瞬間移動は本来、魔法ではなくスキルだ。魔術師か魔法騎士限定のスキルで、おそらくマリーは魔術師の才能があり、スキル持ちなのだろう。
「その子はこの森の中で唯一のスキル持ちでな。この事がヴァルダナ=ニバルレルンに知られたら何をされたものかわからぬからな。絶対に使わせないようにしておったのだが…。だがまあ結果良ければ全て良しだ。して、こやつはどうする」
マリーの親父がチラッと横目で見る方には腰が抜けたのか、立つ事ができず地べたを這う伯爵の姿があった。
「わ、わしが悪かった!命だけは取らんでくれ!なんでもする!か、金か?いくらだ?いくらほしい!?」
鼻水を垂らしながらマリーの親父にすがる伯爵。もはや伯爵とは呼べない姿だ。
「貴様はこれまで我々エルフ族を見下し、幾度となく厄介ごとに巻き込んだ。貴様が拉致し、そして奴隷として売買したことを知っておる。…許すと思っているのか?」
取り囲まれていた護衛達が今度はニバルレルンを槍を突きつけ囲む。
「連れて行け。こやつには罪を償わせる必要がある」
木でできた縄でニバルレルンを縛り、連れて行く。すれ違いざまに最初に俺に突っかかってきたエルフが「最初はすまなかった。今は感謝の気持ちでいっぱいだ」と言い、その場を後にする。
「とりあえず、一件落着ですね!!」
マリーが大きな声で飛び跳ねる。隠れながらこちらをずっと見ていたエルフ達がでてきて拍手してくれる。
「さて…皆の者よ!宴会の準備再開じゃ!我らを救ってくれたギンタの口に合う最高の料理を作るのだ!」
「「「おーーー!!!」」」とあちらこちらから叫び声が聞こえた。
コンコンッとノックの音が聞こえ、俺は「どうぞ」とドアの方に向かって言う。
ここは大樹の中の一部屋だ。「宴会の準備が終わるまでの間、ここで一息ついておれ」とマリーの親父に言われたので遠慮なく休ませてもらっているのだ。
キィ…。とドアを開け入ってくる金髪で巨乳の美女、マリー。
「もう、準備できたのか?」
「はい!できたです!さぁ、いきましょう!」
ぐいっと手を引っ張られご機嫌な様子で誘導するマリー。後ろからは女の子特有のいい匂いがして襲いそうになるが、すぐに感情が抑制される。
宴会を行う部屋に入ると、すでに何百人ものエルフかいる。…というか、この大樹どんだけ広いんだと思ってしまうほどだ。
「お!主役が来たな!さぁ、座って飲め飲め!」
俺は適当な場所に座り兜を外す。その時、今まで笑って酒を飲んでいたエルフ達が一瞬にして元に戻り、目が飛び出るほど驚愕している。俺の横にいたマリーもだ。
「?どうした?」
「お、お主…」
「ギンタ、顔が…!」
俺の顔に何かついてるのか?
1人の女性のエルフが「ど、どうぞ…ひぃっ」と言いながら鏡を持ってきてくれ、顔を確認するが、自分でも驚く。
(しまった!ゲームアバターで来たんだった!やっべ、めっちゃ怖いじゃん俺!)
俺の顔は、右半分の口から耳までの皮膚がなく、歯が丸見えで、死人の目をしており、直視されたら漏らしてしまうほどの怖さだ。自分ですら怖い。
「か、兜はつけとくか…」
兜を被ると、びびりまくっていたエルフ達が、少しは落ち着いた顔になった。
「…それで食べれるのか?」
「うおっ。口の部分だけ開いたわ」
「べ、便利です…ね?」
あたりが気まずい空気になる。 このままではまずい。
「さ、さぁ!みんな食べよう!ほ、ほらマリー!親父さんも!宴会なんだろ?な?」
「そ、そうだな…みんな!宴会だぞ!どうした!もっと楽しまんか!」
「「「お、おお〜う…」」」と腑抜けた返事をしてごにょごにょと話し始めた。
最初は重い空気で始まった宴会だったが、徐々にエルフ達の活気が戻ってきて、最終的にはめちゃくちゃうるさくなり、とても楽しかった。怖がっていた女性エルフ達も緊張がほぐれ、最後くらいはめちゃくちゃ女性エルフ達に囲まれて酒を飲んだ。全員美人すぎでどうにかなってしまいそうだったが、何故かマリーから貰う視線が物凄く鋭く、話しかけても「ふん!」と言って無視された。
宴会が終わり、各々が自分の部屋に帰る。
俺は夜風に当たり、空を見上げる。月が綺麗だ。
俺が月に見とれていると後ろから不意に抱きしめられる。
「マリー、か?」
確信はないが、マリーだと俺は思った。
「はい、マリーなのです。前の質問、覚えていますか…?」
前の質問とは、おそらくニバルレルンがやってくる直前に言われたことだろう。俺のいた世界に変えるかどうかだ。
やっぱりどこか寂しく、儚い声で聞いてくるマリー。
帰って欲しくないのだろう。
俺はもう決めている。
「心配すんな、俺はここにいる。それと、ヴェッツァニア王国に行こうと思ってる。ニバルレルンが奴隷として売ろうと思っていたエルフ達がいるかもしれないからな。それでだな…マリー、一緒に来てくれないか?」
「…いいの…です…か?」
宴会が終わって、マリーの親父から頼まれたのだ。まだいるかもしれないエルフの救出。そしてマリーを外に出し、色々学ばせてほしい、と。
エルフ族は基本成人すると、一度森を抜けて森以外の世界を見に行くのだという。卒業旅行的なやつだ。
だが、マリーは幸か不幸かスキルを持って生まれたが故に、もしバレることがあったら人間の好きなようにされてしまう。それを恐れて、マリーだけは外に出さなかったし、マリーもそれはよくわかっていたのだという。そこで、マリーの親父は「お主になら、預けても安心じゃ」と言い、是非と頼んで来た。
まあ俺もヴェッツァニア王国に興味があるし、この世界についてもっと知りたいと思っていたから好都合で、俺は断る理由もなく快く受け入れたと言うことだ。
「お前、外に出た事ないんだろ?俺がいたら大丈夫だ。いくか?」
「………いきます、いきます!マリーを連れてってください!」
余程嬉しかったのだろう。涙を流し、これ以上ないめちゃくちゃ可愛い笑顔を向け、答えるマリー。流石に感情抑制効果のある兜と言えど、抑制できない。
俺はわざとらしく咳払いをし、その瞬間を凌ぐ。
「決まりだな。明日出発しようと思うんだが、ちゃんと準備するんだぞ?」
「了解なのです!すぐに準備してきますー!!」
こうしちゃいられないと一目散にその場を後にするマリー。
さて、と俺は考える。
明日からヴェッツァニア王国に向かうが、いったいどのような国なのだろうか。何故、俺が必要なんだ?サンカリア=ローズとは一体何者なのか。あの魔術師は?どのくらい強い奴らがいる?
考えることは多い。だが、おそらく長旅になるだろう。マリーに色々聞きながら王国に行くことにしよう。
自然とわくわくが止まらない。オ◯、ワクワクすっぞ!とはこのような感じなのかと思い、くすっと笑ってしまった。
「楽しみだ」
あぁ、本当に楽しみだ。




