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転生騎士  作者: ノザ鬼
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動く

 向かったのは工房に隣接する施設。


 どこかで見たことがあるようなと、記憶を探る。


 検索中…。


 思い出した。確か[コロシアム]って名前の古代闘技場。こちらは、魔動人サイズのようだが。


 中は魔動人が部隊規模で戦っても十分お釣りが来るぐらい広い。


「止めろ!」

の合図。止まると直ぐ様牽引していたロープと家畜が外される。

 終わると次の作業が始まった。どうやら、固定用の木が外されている…。

 これは、動かす!?

「準備完了です!」

を聞き王子が、

「行きましょう。」

と。期待が高まる。



 新型魔動人の背中が腰の辺りの蝶番ちょうつがいを支点に下に開いていた。

 ハンガーデッキの階段を使い、そこまで登る。

 待っていた技術者が、

「開きます。」

 背中の真ん中のハンドルに手をかけ左に回す。『プシュー』という音と共に、肩の辺りの蝶番を支点に上に開き、椅子(いや、コックピットならシートだ)…シートがアームに支えられ出てきた。

 開いた中に見えたのは、期待通りのコックピット。早る気持ちが抑えられなくなり、身を乗り出した。


 どうやって動かすんだろう?

 あの左右にあるのは操縦桿か?

 全面はモニターじゃなくて、透明だな? ガラスか?

 好奇心が私の意識を想像の世界へと飛ばしていた。


「…殿。」

「…ン殿。」

「…オン殿。」

「シオン殿。」

 ようやく、呼ぶ声が聞こえた。

「ご、ごめんない!」

 慌てて謝るが、王子に対して使う言葉では無かった。

「シートへ。」

 促されたが、内心言われる前に座りたくて仕方無かった。

 平常心を予想い、

「はい。」

と、座る。良い感じだ。柔らか過ぎず、硬過ぎず。

「ベルトを締めてください。」

 技術者に渡されたベルトを止めていく。お腹の前で両肩からと腰を回すベルトが四本で一つに纏まる。

 少し動いてみたが、しっかりと固定されていた。

「これを…。」

 王子が直に手渡した。

「これは?」

 解っていても聞いてしまう。美しい紋様が彫り込まれたものの名前を。

「起動キーです。」

「なるほど。」

 『平常心』『平常心』と自分に言い聞かせるが、心はサンバのカーニバル。



 これで、僕もロボットのパイロットだ!

 その思いが逆に自分を冷静に、現実に引き戻した。


(あっ…。僕は操縦の仕方を知らない! ど、どうしよう…。)

「あ、あの…。」

「シオン殿。何か?」

「僕は、魔動人の操縦を知りません…。」


 流れる沈黙…。


「これは失礼を。」

 王子が頭を下げた。

わたくしも新型魔動人の完成に、舞い上がっていたようで、うっかり説明を忘れていました。」

と、笑った。

「この魔動人は、操縦ではなく…。」

 少し考え、

「一体化と言った方法で動かします。」

「一体化ですか…。」

「そうです。魔動人との一体化…。つまり、自分の身体と同じ様に動かすのです。」

「自分の身体と同じ!?」

 まさかの動かし方だった。

「両の伝心桿でんしんかんに手を置き、思考で動かすのです。」

「なるほど。それなら、直ぐにできますね。」

 ふと、疑問がわいたが…。今はどうでもいいとの思いで飲み込んた。

「シートの右横に赤いボタンがあります。押すとシートが操縦位置へ移動します。」

 シートの右側を探ると、赤と黒の並んだボタンがあった。

「押します。」

 『プシュ』と短い音と共にシートが定位置へセットされた。

「起動キーを差し左へ。」

 王子の指示通りにする。


 コックピット内のあちらこちらに光が点り、魔動人がください起動したと解る。

「本来ならハッチを閉めるのですが、今回はこのままここから指示を出します。」

「解りました。」

「伝心桿に両手を…。」

 両手を伝心桿にかける。

「では、『歩け』と…。」

「はい。」

 声に緊張がこもる。

「ゆっくりでいいですから…。」


 『歩け』『歩け』…。


 伝心桿が薄っすらと光り始めると同時に機体が微弱に振動する。


「動くぞ!」

 王子が周囲に警戒の命令。


 振るえる機体は、ゆっくりと右足を前に出した。踏み付けた大地は、辺りにも揺れを伴わせた。


 次に左足…。そして、右足。本当に自分が歩いているようだった。

 これなら、直ぐにでも乗りこなせそうだ。


 しばらく歩かせていると、

「止まってください。」

 王子からの指示。


 止まると、ハンガーデッキが運ばれて来た。

「シートの黒いボタンを押して、シートを後ろに。」

 言われた通りにすると、『プシュ』とシートがコックピットから排出される。


「流石、シオン殿。簡単に動かしてみせるとは、感服したしました。」

 王子を始め、作業員全員が笑顔だ。

「これより、シオン殿に合わせるための調整を行います。」

 言うが早いか、機体に人が張り付き作業を始めた。

「これよりは、調整と訓練の繰り返しがしばらく続くと思われます。」

 王子の言う事は、もっともだ。僕の為の機体なんだから。


「調整が終わるまでの時間を使い、お話をしておかないと…。」

 右手で、闘技場の一角を指し、

「あちらに。」

と、王子と僕の二人は機体を降り向かった。


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