出す
一通り見せてもらった…。と、言っても頭の中は新型魔動人の名前の事でいっぱいだった。
王子が話し合いをしているところへと戻る。
気が付き、
「どうですかな?」
と、曖昧な言い方。
「素晴らしいです。動くところが見てみたいですよ。」
名前については、触れないでおいた。
「丁度良い。」
助かったと表情からも見て取れた。また、考え初め止まる(フリーズ)するのではと思っていたみたいだから…。
「誰か。」
王子が呼ぶと、近くの者が足を止めやって来た。
「出せるか?」
「はい。そろそろ準備が整うかと…。」
そんな会話をしている二人越しに、見たことが無い四脚の生き物の群れが連れられ、こちらに向かっていた。
「あれは…。」
僕の言葉で気が付き、
「来ましたな。では、直に準備いたします。」
と、離れて行く。
「あれに、引っ張らせるのですよ。」
王子の説明で、あれはこの世界の労働用の家畜だと推測できた。
極太のロープが何本も木組みのハンガーデッキに掛けられ家畜に繋がれた。新型に気を取られ、見落としていた。ハンガーデッキに車輪が付いている。そのまま移動できるのか。
「結び目を確認しろ!」
その言葉で最終確認が行われた。
「大丈夫です!」
数箇所から上がる声を目で追いながら、見落としは無いかと確認し、
「よし! 引け!」
家畜に鞭が入れられ、ゆっくりと歩き出す。
工房から引き出された新型は、やはり大きい。そして、日の下で見る機体の輝きは心を躍らせる。
目の前を通り過ぎる機体を眺めていると、
「参りましょうか。」
と、王子が歩き始めた。機体の後を追っている。慌て僕は王子を追いかけ並ぶ。
「専用の施設がありますから。」
専用の施設まであるとは驚きだった。