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代償
冷静さを直ぐに取り戻したのは、戦い慣れからか。
「確か、ここに…。」
右手を伸ばし、キャノピーの手動開閉レバーを引く。
「クソっ! 駄目か。」
吐き捨てる様に言う。誰も聞いていないのが判っているからだろう。
「どうしたものか…。」
と、思案。
『ゴーン』『ゴーン』を機体が響く音で顔を上げると、キャノピーの前に技術責任者がいた。
「開けてくれ! 中からは開けられない。」
大声で叫ぶ。
その声が届いたと確信できたのは、直ぐに外の開閉レバーの所へ手を伸ばしたのが見えたから。
安堵し、
「ようやく、出られるか…。」
と、見た開閉レバーを操作した技術責任者の顔が曇っていた。
「まさか…。」
しばらくすると、団長の魔動人の顔がキャノピーの視界を占領した。
「王子! ここでは開けられません!」
拡声器で一番聞きたくなかった台詞がコックピット内へ届けられた。
「直ぐに、陣へ戻り作業しますので、しばしお待ちを。」
技術責任者が言うのだから、間違い無いのだろう。
「判った。」
そう返したが、聞こえたか…。
直ぐに運搬用の作業が始められた。
作業音が機体を通して、コックピット内に反響する。
「結構、きついな…。この音は。」
耳を両手で塞ぐ。
音が止むと、次は浮遊感。
「神輿だな。」
出るまでには、時間がかかると覚悟を決めた。




