死
希望的観測が甘かったと知ったのは、五分もなしい後だった。
顔に当たる雨粒が増えて来た。そして
早足が駆け足になった。
家まで、後少し…。
本格的に降って来た。
「濡れる。」
と、紙袋を更に被う様に抱きかかえる為に、立ち止まった。まさにその時、目の前の歩行者信号の青が点滅を始めた。
一瞬の躊躇。いつもなら考えもしないで立ち止まるが、その時は抱えた紙袋の中身が僕の背中を押した。
横断歩道へと舞い出る。
僕を殴る様に鳴らされるクラクション!
振り向き見えた音の出処は、僕の想像を超える事は無かった。トラックと呼ばれる運搬用の車。しかも、大型。
僕とトラックの共演は、死の破裂音を産み出した。
手にしていた紙袋が宙を舞うのを、跳ね飛ばされた体から目線が追う。
『フィギアが! 僕のフィギアが!』。
アスファルトで紙袋と共にフィギアも潰れた。
その間、約一瞬。
そして、飛び交う悲鳴。その場の人は何が起きたか理解したようだ。
冷たいんだ…。初めてアスファルトの温度を肌で感じた僕。間近まで迫っていた死を考えるよりも、
『買いなおさないと…。まだ、限定版あるか?』
『あっ、今夜のアニメ録画予約がまだだった。間に合うか?』
と…。
その後、そう言えば死の直前に人生が走馬灯の様に見えるって聞いていたが…、見えなかったから僕は死んで無いのか…。
どうなんだろう…。
…。
次第に考えられなくなった僕は、モノに変わった。
到着した救急車に僕だったモノは、乗せられ病院へ運ばれた。
告げられた臨終。




