表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹のトモダチが全員なんかおかしい  作者: 虹ケ原光輝


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/127

少しだけ町がおかしい

 午前8時ジャストに訪れたのは、水沢季瀬姫だった。なぜか登山者のような装備で、玄関先に立っている。

「気合いを入れてきました」

 そう言った彼女は、どこか間違った気合いを入れすぎているような気もするが━━

「今日は本当に、なにが起こるかわからないからね」

 こちらも、季瀬姫とは違う方向に気合いが入っていて、みんなで映画でも見に行くのではないかと思える、おしゃれな服装の初雪。どう見ても戦闘に参加する人間の服装ではない。どちらかと言えば、戦闘に巻き込まれるほうの人間に見える。

 そんな二人の統一性がない服装を眺めている夏樹くんは、いつもと変わらぬ服装だった。服自体のバリエーションが少ないので、どれを着てもたいして代わり映えしないのである。


 しばし立ち話をする三人の元へ数分遅れでやってきた日比野春風が、やや眠そうな目をこちらへ向けて「おはよう」と挨拶する。

「昨晩、ちょっと寝るのが遅くてね━━ところで、妖怪レーダーがあちこちで反応するんだが、どうなっているんだ?」と続けた。

 妖怪レーダーとは、季瀬姫が作って春風に与えたらしい、手のひらサイズのレーダー探知機である。いわく、妖怪に反応して、その存在を示すらしいのだが、真偽のほどはわからない。実際、春風もその目で確認した事例がいまだにない様子だし。

「妖怪レーダーとは言っても、その他の存在も探知できてしまいますので、なにかしら、そういったものが溢れているのかと思いますよ。あるいは人知れず、妖怪の大戦争が勃発したのかもしれませんが」

 口からのでまかせみたいな説明を、季瀬姫はする。

「それ多分、りりちんの魔界の悪魔さんたちだと思うよ━━ヒナちゃんが召喚した」

 と、そこで、昨晩の出来事も含めて、二人に説明をする初雪。物わかりがよすぎるくらい、すぐに納得した二人が現状を把握する。

「その人、大丈夫なのか?」

 春風が、心配そうに訊く。

「さあ……ただ、呼ばれれば呼ばれるだけ、りりちんが困るのは事実だね。こっちの影響はわかんないけど、見た感じ、悪魔さんなんてどこにも見えないし」

「ここへ来る途中も、反応のある場所を調べてはみたんだが、なにもいなかったぞ」

 と、春風は残念そうだった。夏樹にしてみれば、むしろ出会いたくないのだが。彼女はそうは考えないようだ。

「それにしても、まだ来ているかどうかもわからない時点で、なんで悪魔を大量に呼び出しているんだ、その人は?」

「さあ……」

 さすがの初雪も、首をかしげる。

 夏樹が思うに、普段から、思う存分悪魔を召喚したかったひな月さんが絶好の機会と口実を得て、こんなことになっているのではないか、という気がする。

 手段のための目的になっているのではないか、とは誰も指摘しなかったが。可能性はあるだろう。

 ひな月さんにも、町の人々にも、なにもなければいいのだが……。

「じゃあそろそろ、出発する?」

 初雪の一言で、いよいよ異星人探しがスタートした。


 *****


 悪魔の影響かはわからない。

 なにしろ、なにも、おかしな生き物の姿など見えないのだから、わかりようがない━━けれど、確かに異変は起きていた。

 起きているようだった━━


 たとえば、郵便ポストの投入口に、枯れ葉がめいっぱい詰め込まれていた。

 これだけだと、もちろん人間の仕業であると考えられるし、悪魔の仕業だと思うほうがどうかしている。

 だが、他にもある。「あの人、おかしくない?」と初雪が発見した男は、シャッターの閉まった民家の車庫の前でしゃがみ込み、なにやら独り言を言っていた。

 作業着を着た、土木作業員風の男で、どうやら誰かと喋っている様子だったが、相手の姿はなく、電話中というわけでもない。

 なんとなく、近づきたくもなかったが、進行方向にいるわけなので、おのずと徐々に近くなる。すると、近くなるにつれて言葉がはっきり聞き取れるようになってくる。


「なんでぇ、ねえキミ、小さいおじさんじゃないの~? 違うの? じゃあ、なに? なんでそんなに小さいのか教えてよ。ねえ、いいじゃん。見つけてあげたんだし。なにかくれるの?

  くれないの? 小さいおじさんだと、見つけたら幸せになれるって聞いたんだけど、キミは違うんじゃ、無理なのか。残念だなぁ。せっかく見つけたのにさぁ。ねえ、なんなのキミって。それくらいは、教えてくれてもいいだろう?」

 男は、一生懸命に地面に向かって喋っているけれど、夏樹たち一行には何者の姿も見えなかったので、不気味で仕方なかった。

 客観的に、常識的な判断を下すなら、男の頭がおかしいと結論することができる。しかし、状況がわかっているからこそ、そうでない可能性も捨てきれなかった。


「ねえ、なんか見える、キーちゃん?」

 初雪が男から距離を取りながら、季瀬姫に訊いてみる。

「いえ、なにも見えませんが……」

「妖怪レーダーは、まさにあの男の場所に、反応を示しているぞ」

 そう言って春風は妖怪探知レーダーの画面を見せるが、夏樹には見方がわからない。おそらく、距離と方角が示されているのだろうけれど、よくわからなかった。

「うわぁ、確かに、示してますね~。自分で作った物なので恐縮ですが、場所がわかってても見えないんじゃ、どうしようもないですよね」と、季瀬姫は元も子もないようなことを言う。

 春風は気にしていない様子だが、それよりも目を凝らしてなにかを見つけようとしている。

 しかし、諦めて向き直った。

「ダメだな、見えん。あの男がどうして見えるのかわからんが、羨ましい」

 そう言って、妖怪レーダーをしまう春風。

「なんか、霊感みたいなのが必要なのかもね。チャンネルが合えば見えるとか、よく言うじゃん。あのお兄さんは、たまたまそれが合ったんじゃないのかな」

 初雪の説明に「そうかもしれないな」と春風は納得した。見たい人間には見えなくて、どうでもいい人間には見えるんだな、と捨てゼリフを残してはいたが。


 さきほど見た、なにかと喋っている男の他にも、少しずつ、いたる所でわずかな異変が確認できた。


 たとえば、風で飛ばされたとおぼしきビニール袋数十枚が、なぜか一つの電柱の根元に集中していたり。

 歩道を歩く人たちが、ある場所に差し掛かるとなぜか必ず横に一歩ズレてからまた歩きはじめる場所があったり━━どうも、みんな無意識にしている行動らしく、そこを通る人たちはなにも不思議に感じている様子がなかった。

 そして、実際に初雪がそこを通ってみたのだが、横にズレることもなく、普通に直進できていたので、ますます謎が深まった。

 あとは━━縦一列になって青信号の横断歩道を歩く三羽のカラスも見た。

 こればかりは、カラスに訊いてみないことにはわからないが、普通にある光景ではないだろう。


 そんなようなことが、どうやら町のあちこちで発生している。

 しかも、よくよく考えてみれば、それらは異星人とはおそらく関係のない、別口の出来事なのだ。


 まだ異星人は見つけていない。

 それどころか、来ているのかどうかも、この時点ではわからない。それでも、今日という日が確実にどこかおかしいということを、全員が感じていた。


「これはもう、なんかある流れになってきたんじゃない? 異星人、いつ飛び出してくるかもわかんないよ━━みんな、注意して」

 初雪の言う通り、これはもう、なにがあってもおかしくない。そんな空気が町の中に充満している。

 どこからどこまでが悪魔の影響であるのか判断できない限りは、その中のいずれかが異星人の影響であってもわからないということだ。

 もう来ているかもしれない。

 そう思うと、急に寒気を感じてくる。

 商店街を抜け、小学校が見えるところまでやって来た。

「まずは、おにぎり山へ向かいましょう。予想される宇宙船の着陸ポイントですので、確認が必要です」という季瀬姫の指示で、その方角へと向かっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ