第七話〜その意味は真理〜
「私はフランシスカ、あなたは?どこから?なぜ?どうやって?…」
少年の目は今まで見たいかなる宝石よりも輝いていた。
美しさとはなんなのか、その一端をその瞳は示しているように感じた。
関心という名の卵を得たフランシスカは少年の言葉も待たずに矢継ぎ早に質問を投げかけ、少年の困った顔を見て初めて恥じらいを憶えた。
いかなるものも逆らわず、いかなるものも親愛をくれた。でも少年の雰囲気は好意的でありながら異質であり、落ち着くことを許さなかった。
今まで自分を見て、ひどく熱狂している国民をみて愚かしいとすら感じていたが、なるほど、人は熱狂によって救われるのかもしれない。
しかし、その興奮の中においても、まず始めに聞きたいことは確かだった。
「あなたは天使様ですか?」
期待が胸を鳴らす中、少年の口から言葉が漏れ、
「違うよ。」
と、少し微笑みながらそういった少年のその姿は天使の奇跡を感じさせた。
時は、心を落ち着かせ、しかし喜びはそのままに未だフランシスカは少年を眺めていた。
少年の名はビフォルというらしい。
友達らしい友達もいないフランシスカ。なんと悲しい、しかし、それもこの瞬間の喜びを大きくするための神の祝福だったに違いない。
「天使様ではないのなら、あなたはどこから?」
「遠く。名も無き、誰も知らないところ。君は人?」
天使ではないというのに、ひどく不思議な会話だ。そう、まるで天使の問答のようではないか。
「私は人。そして、この国の姫なのよ。わたしは、もしかして人として変わってる?」
なんだか、この少年に変っているといわれると不思議な感じがする。
「ううん。君は人なんだね。まだ、人という存在になれてなくて。僕はただ美しいものに惹かれたんだ。ここはなぜか暗い。歪んでる。旅の時間は長かったけれど、一番歪んでる。夢にまでみた人の世界なのに、歪んで暗いんだ。でも君は美しいね。目立つほどに。」
まだ、変ってるといわれたほうがましだった!いままで多くの同義の言葉を投げかけられたがこれほど気恥ずかしくなることはない。だって…
「あなたが言うの?それを…」
「???よくわからないけど、間違いないと思う。僕は見たいんだ!知りたいんだ!多くのものを美しいものを。」
これほど儚げな容姿であるのに、その心はとても熱い。存在は神秘的で今の立ち位置を不確かにさせるけれど、その心が現をしっかりと感じさせる。あぁ…彼はこのまま逃げていってしまうのではないか?こころを幻想に、その身はいずこかに…
「私のそばにいて!!!」
突然私は叫ばされた。そう、叫ばされたのだ。どうしようもなかった。
「そばに?どうして?」
どうして?私が頼んでいるのに!なんてこと?
???私の醜い心が駆け巡る。吐いてはいけない。この醜さを。嫌われてはならない。
「お願い…そう!私たち友達でしょ?」
笑わせる。いつ友達になったというのだ。逆ならどうだ?…きっと侮蔑のまなざしをむけるだろう。
しかしビフォルはひどく不思議そう。
「友達?……聞いたことがある。親愛の情を結んだ相手。君は僕に心をくれるのかい?」
何かをきかれた。はっきりと聞こえるのだが、はっきりしない。でも
「ええ、全てを。だから…」
そういいかけたとき、
手をつかまれ、
額に口付けをされ、
果てない喜びに
意識は翼をもって旅立った。