第四話〜傍らの幸福〜
マルテンサイト王国、長きにわたり栄華を誇り、また驕ることなく信頼を受けている大国である。
国民の一人であるリードは街を散策中、おかしな少年を見かけた。
大粒の涙を門前で流しているのだ。確かに大国であるここ、マルテンサイトは来訪者に感動を与える。しかし、それは泣くほどのことではないし、悪く言えばでかいだけだ。慣れてしまえばなんてことはない。
だが、その泣き姿はなぜか美しく、一枚の絵のようであった。自分がおかしいのかという想いに至り、涙の理由に気づけない自分がひどく口惜しかった。
他の人々も同じようで、それほど異質でありながら、関心を払いながら、少年に近づくものはいなかった。
誘われたのか、選ばれたのか、気がつけば俺は声をかけていた。
「どうした?教えてくれ?何なんだ?」
「?何?ですか?」
「そう…なぜ泣いているんだ?」
少年はひどく不思議そうだった。なぜ?聞いたのはこちらなのに立場があべこべでリードは今の自分の状態がよくわからなくなってきた。
「あなたは泣かないのですか?空気を吸って、その味に匂いに泣き、人々の存在を感じて泣き、陽射しの暖かさに泣き、今あなたと話すことができてまた泣きます。なぜ?それはわかりません。でもこんなにすばらしい世界とともに今あれて、ぼくは幸福です。」
ひどく愚かな…真理。純粋な真理こうも人を否定するのか?リードは今までの人生のあり方、感じ方に疑問を感じ、存在がひどく歪んだような気がした。
それを感じ取ったのか。少年は話題を変えるように話かけてきた。
「僕の名前はビフォルといいます。これも縁です。もしよろしければ街を案内していただけませんか?」
初対面の人間に何を?とも一瞬思ったが、それもいい、と思えた。一瞬自然を感じた気がする。そんな想いとバカなと切捨てリードは返事を返した。
「俺の名前はリード。ようこそマルテンサイト王国へ!」