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第三話〜一般的絶望×個人的幸福〜

ドラゴン。


人が出会えば死あるのみとされる存在の一つ。事実、我は今までそのような存在であったし、そのような結果も伴わせてきた。


それがどうか?この少年はなにやら喜びを感じているらしい。絶対的悪意である「殺意」。


これに動じないとはどういうことか?「欠けた者」か?それならば納得はできるが…


精霊達は彼を祝福し続けているようだ。意思をもつもの…それは我も含め…志向性のある意思の所有者は精霊から遠ざかる。しかし、この者の意思は明確にある。


明確な意思と精霊の祝福。これは本来背反し共存しえない。だからこそ世界はこの長きときを続け、均衡を保ってきた。ましてや穢れた人間などがそのような存在になどなりえない。


ドラゴンが意思を持ちながらも、精霊の祝福を受ける理由はその長寿にある。5千年を生き、その間、己の意思を自然と同化し、精霊に自然の一部として認めてもらうことによって初めて矛盾が理なる。


他の種にも例外はない。だが…


「僕とお話をしませんか?もっと、もっと!」


ビフォルに話しかけられ意識をもどしたバートマンは、この特異点のような存在が急にいとおしくなった。それも当然であろう。我の意思は自然でもある。自然は精霊により成り立ち、精霊はこの者を祝福しておる。


しかし、この世には絶対的悪意というものが存在する。精霊との交信は至福であり、だれもが求めるものであるはずだが、例外は存在する。精霊に関わらず強大な力を有し、かつ、悪意というなの意思を持つ。精霊に嫌悪されながらも絶対的存在としてこの世にあり続ける。


ふむ。そう考えると絶対的悪意の存在はこの少年のような存在を証明するものかもしれんな。いうならば絶対的善意。生まれながらにして意思を自然と同化…いや少年の意志を精霊が寛容に受け入れているように見えるが…。それが許される精神構造。


「ビフォル、汝は悪意にであったことはあるか?」


ビフォルは、一瞬きょとん、とした顔を見せたが、すぐに顔を耀かせ、聞き返してきた。


「悪意!なにそれ?教えて!」


心の会話であるが故にその純粋さが伝わり、そして決意させられた。この者に生き延びる術を与えねば。ドラゴンが人間に力を貸すなど前代未聞かもしれんがよかろう。これも精霊の意思だ。


「そなたに教えられることは多々ある。まずは言葉を教えよう。そして、これはとても悲しいことだが、戦うことも教えようではないか…。」



我が一万年の知識、人間になど考えたこともなかったが…2年間ビフォルの成長は我がこころに安らぎを与え続けた。

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