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第二話〜踏みしめる一歩〜

そんな僕だけど、さすがに3歳になるころには死に掛けた。


人である限り飲み、食べねばならない。それまでが異常だったのであり、生きるという意味を強く意識し始めたころだった。


でも工業排水の影響で回りは荒み、人の住む環境ではなくなっていた。それだけに食べ物が見つかったときには心から感謝を捧げた。


生まれ方の影響かもしれない、今考えればあれは人の食べるものでなかったし飲むものではなかったのかもしれない。でも食べるということは、荒廃したこの地で自然の一部として生きていることを実感できる少ないことだったから、それで十分だった。


生きるために最低限の工夫をし続けた。ろ過、蒸留、還元、精錬…


とにかく、まだ生きていたかった。日を経るごとに新しいことが生まれ、知ることのできるこのすばらしき世界をまだまだ体感したかった。




ある日ふと好奇心の対象が一本の線に移った。それは今なら地平線だってわかるけど当時はわからなかった。あんなに長い長い線があるのはなんでだろう?あの線を捕まえてやるんだ!と意気込んだ。


でも、どんなに歩いても線は近づいてくれない。おかしいでしょ?世界が広いなんてしらない僕が旅なんて言葉を知るわけもなく、でも今こんなお話をしているのは旅にでたからに他ならない。つまりさ…これが僕の旅のきっかけってわけ。



そんなおかしな旅立ちが8歳のとき。


長く歩き続け、半年後、初めて出あった自分以外の動物があれさ…あれ…そう、あれ…


ドラゴン。


彼はいきなり空から現れた。食べる気満々だったと思うけど、初めて他の動物にであった僕は興奮した!一人じゃない!僕は一人じゃなかったんだ!ってね。


実はドラゴンを初めとした他の動物との会話ってのは人間の歴史上なかったらしい。でもさ、言葉って何?っていう状態だったからそんなの全然問題じゃなかった。感じられる、それで十分だった。


一人で生きていく上で言葉は重要じゃない。だってさ、何かを伝える必要がないから。必要なのは感じること。水を感じ、草を感じ、風を感じる。すべてには何かが宿っていてそれが全てを教えてくれる。それが精霊ってやつで、そうなると、あの研究者たちの目的、精霊とは?の解に近づいていたのかもしれない。


その影響で、ドラゴンを感じようとしていた僕にドラゴン自身もびっくりしていたみたい。


それがよかったのか、悪かったのかドラゴンは僕の心にこう語りかけてきた。


「人でありながら、人で有り得ないものよ。我は今生涯一万年において初めて混乱している。多くの人間達を見てきたが汝のような存在は初めてだ。名はなんと言う?」



この質問には大きな衝撃が2つあった。


一つは僕のほかに僕みたいな存在がいるってこと。


もう一つは名前。名前ってなんだろう?


その内心を感じ取られたのか、ドラゴンは急にやさしい口調になった。


「無垢なるものよ。名前とは汝の存在を示すものだ。汝は存在している。そなたにも名が必要だ。そして名乗るのだ。よいか?我が名はバートマン。さぁそなたの名は?」


存在?僕の?僕を表すことば?なんだろ?僕と生まれながらに関係のあるものって言えば…


そう思って生まれたときからの唯一の持ち物である一枚のプレートをみた。


“Before apple”


…これで行こう!ビフォアプル?ビフォプル?ビフォル…


「僕の名前はビフォル!ビフォルだ!」


こうして僕の名前は決まった。あとで知ったけどビフォル「befall]って災難が起こるっていう意味だったんだね。でもおもしろいくらいぴったりだとは思わないかい?


人からみれば僕の人生自体が災難らしいから。ふふ…皮肉だね〜




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