第九話〜不安、不満、続くは混沌〜
あの冷静沈着なヒデジ殿の叫び声。
そして伏している姫に不届き者。
私、ウェイマンは後はなにも考えずに不届き者を打ち倒し、牢に放り込んだ。
幾ばくかの時間がたち、さぁ、いかにして拷問、取調べをしてやろうかと、姫の身を案じながら思慮に耽っていると、いつもの…いや過去いままで見たことのないような形相で姫自身が詰め所に乗り込んできた。
「近衛師団長!!!!な、な、なんということを!牢を!早く牢をときなさい!」
なんのことかわからない。しかも、その発現が被害を被った姫、その口から漏れているのだ。
「とにかく牢に案内しなさい!」
全くもって事情がわからない。よくも悪くも姫はいつもどこか儚げで、私は密かに想いを寄せていたりもした。
しかし、それがどうだろうか?今、姫は今まで見たことのないくらい熱くなっている。それも、あの訳の分からぬ不届きもののために。
疑問と、僅かばかりの嫉妬を感じながら、師団長としての責務が私を冷静にさせた。
まずは事情を詳しく聴かねば。全てはそれからだ。
「すみません。姫、いったいどういうことでしょうか……」
その後、ヒデジも加わり事情を聴いたが結局、理解に進展は得られなかった。
だが姫はひどくあの者を大事にしているようだった。
そう…目の前にいる私などよりも…
確かめねば。
とにかく牢へ。姫の限界も近づいているようだ。
闇の中で鳴くふくろうの声はなぜか混沌を感じさせた。