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《想いの結晶》……はじめてのプレゼント

 スマホが鳴った。


 必死に両親に贈ろうと作っていた観月みづきは、針と道具を置き、スマホを見る。

 実の父親のメールや電話は着信拒否にしており、知らない電話には大人……特に祐也ゆうやたち男性に連絡する。

 でも、音楽はエドワード・エルガーの『愛の挨拶(Salut d'amour)』で、この曲は両親の柚月ゆづき嵯峨さがの着信にしている。


 画面を見ると『嵯峨お父さん』とあり、嬉しくなって電話をとる。


「もしもし、お父さんですか?」

『えぇ。お父さんですよ』


 声が暖かく優しい。

 後で、嵯峨の幼馴染みの醍醐だいごに聞くと、


「そないにデレデレなことは、昔は言わへんかったけど……」


と首を傾げていた。


「あ、お父さん。土曜日と日曜日に私もお手伝いするんです。でも、二日とも午前中から、お昼過ぎまでで、人の多い夕方からは時間が空いているので、祐次ゆうじくんや葵衣あおいちゃんと、それにお父さんとお母さんといられるなぁって、嬉しいです」

『本当ですか。良かった。じゃぁ一緒に見られますね』

「見られる? あ、そう言えば、今日、水曜日なのにお祭りの名前聞いてませんでした! えっと、何のお祭りなんでしょう?」


 娘の少しおっとりしたところが可愛いなぁとデレッとしつつ、


『じゃぁ、当日まで楽しみにしていましょう。それよりも大丈夫ですか? 祐也くんや麒一郎きいちろう叔父さんがいるので心配はしていませんが、何かあったら連絡して下さいね?』

「はい、お父さん。そう言えば、お母さんは?」

『あ、そうでした。本当は一緒に選びたかったのですが、お母さんの婚約指輪と結婚指輪を選んだんです……結婚指輪は後日ですが、婚約指輪は会いに行く時に着けていくので、楽しみにしていて下さい。それに観月に贈りたいものがあったので……楽しみにしていて下さいね』

「えっ? 私にですか?」

『えぇ。お父さんが貴女に初めてのプレゼントです。貴方に渡すのが楽しみです』


 嵯峨の声に、観月は瞳を潤ませる。


「お父さん……嬉しいです。でも、一杯私を甘やかせると、我儘になっちゃいますよ?」

『観月の我儘位で、お父さんは動じませんよ? あ、大英博物館買ってとかは困りますね』

「そんなものは見るだけでいいです~。あ、でも、お父さんとお母さんと観に行きたいですね。いつかは」

『ふふふっ。本当に。じゃぁ、何かあったらお父さんたちに連絡するんだよ? 良いね?』

「はい。お父さん」


 二人は笑う。


『あ、そうそう。お父さんの仕事着を新調するので、一緒にお母さんのワンピースやスーツを選んだんですよ。後でメール送りますね?』

「わぁ! 嬉しいです!」

『会うのが楽しみです。では、観月。余り頑張らなくていいんですよ? 楽しみにしていて下さい』

「はい!」

『でも、本当はお父さんたちが、観月に会いたくて堪らないんですけどね……じゃぁ』


 電話が切れると、少ししてメールが入る。


『お母さんの婚約指輪と、お父さんのネクタイピンです』


と書かれており、


『お母さんは誕生石のゴールデンサファイア、お父さんも誕生石のルビーです。お父さんは誕生石を知らなかったのでビックリしましたよ! サファイアとルビーって同じ石なんですね~?』


につい吹き出した。

 隣で羊毛フェルトやテディベアを作っていた葵衣に風遊ふゆほたるが、


「どうしたの~?」

「あ、お父さんが、こんなメールを」

「……わぁぁ! 素敵! 柚月さんの婚約指輪! 優しい色~! ネクタイピンもセンスいい!」


そういっている間に、もう一通メールが入り、


『お父さんとお母さんが着替えました』


に、写真を開けると、


「わぁぁ! 似合うねぇ!」

「嵯峨さん、前までかっちりだったけど、柚月さんと可愛いなぁ」

「あれ? メッセージが書いてある」


『観月にも可愛いバッグを選びました。待ってて下さいね』


「バッグ!」

「あ、でも、このブランドは品質最高だし、それに大人っぽくなりすぎないからいいと思う」


蛍が告げる。


「前にヴィヴィが『私には可愛いかしら?』って言ってた。『似合うと思う~』って言ったら喜んでたもの」

「へぇ、素敵。観月ちゃん。良かったねぇ?」

「お、お父さん、私を甘やかしたら駄目ですよって言わなきゃ……」

「えぇと思うわ。嵯峨さんは観月ちゃんが可愛いんやねぇ」


 風遊は微笑む。


「楽しみやねぇ……お祭り」


 土曜日からのお祭りを迎えるのだった。

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