調査
「伝説のメロンパンだって! マジで、知らない?」
そんな熱弁されましても……
「実はレシピはもうできてんだよ。 メロンパンのクッキー生地にグラニュー糖を多めに加えて、ふんわりした口溶けにしたのがそれだ。 商品名は雪解けメロンパン」
「レシピがあるなら、何で売らないんですか?」
「雪解けメロンパンって名前で売りたいんだけどさ、昔売ってた名前そのままだから、許可が必要だと思うんだわ。 でも、当時のパン屋がもう無いから、オーナーを探さないといけない」
ケイコさんは都内の調理学校に入り、卒業後、しばらく別な飲食店で働いていたらしい。
そして、夢だったパン屋をやるためにここに戻って来たけど、どうせなら雪解けメロンパンを復活させたいと思い立ったとのことだ。
「復活したら、絶対人気出ると思うんだ。 頼んだぜ」
こうして、私は街で聞き込み調査を開始することとなった。
部活が終わり、時刻は夕方。
私は、駅前の商店街にやって来た。
雪解けメロンパンについては一切知らなかったけど、パン屋と繋がりがあった店の人なら知っているに違いない。
古本屋、金物屋、八百屋、魚屋、肉屋など、年期の入った店が並んでいる。
「この中なら、八百屋かしら?」
メロンパン以外に野菜を使ったパンを売っていたら、もしかしたらここで買っていた可能性もある。
私は八百屋の主人に話を聞いてみた。
「雪解けメロンパン? あー、懐かしいね。 学生にすごい人気だったけど、オーナーが過労でぶっ倒れてからは知らないなぁ……」
え、そうなの!?