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やさぐれパン子  作者: oga
6/21

災難

「美味しく焼けましたねぇ~、むにゃむにゃ」


 カァン! と額にチョークが飛んできた。

その衝撃で私は飛び起きた。


「栗井、俺の授業で寝言とは、いい度胸だな」


 この先生は数学の高尾。

3大チョーク使いの内の一人だ。

……不覚だわ。





 授業が終わり、この後は部活だ。

始まる前にヴァイオリンを借りてこなければ、またつっこまれる。

私は急いで先生からヴァイオリンを借り、練習に参加した。

しかし、何度も同じパートで躓き、演奏をストップさせてしまう。


「す、すいません……」


 金成遥の視線を感じる。





 練習後、案の定通路で遥が待ち伏せしていた。


「ちょっと、いいかしら」


 通路脇に移動し、問い詰められる。


「あなた、全く進歩がないけど、練習してる? ヴァイオリンもまだ直してないみたいだし」


「……」


「はぁ…… これ、見てよ」


 遥がおもむろに見せてきたのは、指先だった。

左手の弦を押さえる指が豆だらけになっていた。

それを見ただけで、部活以外でもかなりの練習をしていることが分かった。


「あなたがよそで遊んでいる時も、私は練習してるの。 この部活に賭けてるのよ!」


 ……!

私はドキッとした。

遥が涙目になっていたからだ。


「……ふざけないでよっ」


 胸ぐらを掴まれる。

私は一度、遥の胸ぐらを掴んでやりたいと思った。

でも、遥もずっと同じ思いを私に抱いていたんだ……





 帰り道、私はバイトは辞めようと思った。

今日3時間働いたから、あと一回だけ行けば、弦を張り替えるお金が貯まる。

それで、朝早起きしてヴァイオリンの練習をしよう。

家に帰宅すると、今度は母親が待ち構えていた。


「ただいま……」


「あなた、この前の小テスト、見せてないわよね?」


 しまった……

井戸端会議でその話題になったんだ。


「忘れてた。 もう捨てちゃったかも」


 小テストの出来はイマイチだったんだ。

できれば見せたくない……


「あなた、約束分かってるわよね? もし次のテストがイマイチなら、部活辞めなさいよ」


 災難だ。


 

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