イノシシ現る
野生のイノシシが現れた!
しかも、目がつり上がっており、殺気立っている。
「や、やばいよ遥か……」
「に、逃げるぞ……」
私たちが逃げようと思った瞬間、イノシシは咆哮を上げた。
「グオオオオオオオオン!」
うわっ、と尻餅をつく。
イノシシは臨戦態勢に入っているようだ。
ほんとにやばい!
その時、ケイコさんが躍り出た。
「ケイコフィールド、発動!」
ケイコフィールド。
これは、車中でケイコさんから説明を受けたが、赤い服装をしている時にのみ発動できる技で、半径15メーター圏内にいるケモノを自分に呼び込むらしい。
ちなみに、この技名を聞いた時、ケイコさんってちょっと痛い子なのかな? とひそかに思ったのは黙っておく。
「グルルルル……」
イノシシはケイコさんに向き直った。
ところが、すぐに私の方にまた向き直った。
「お、オイ! てめーの相手は私だろ!」
バットをガンガン叩きながらイノシシを引き付けようと試みるも、完全に標的は私だ。
「……くそっ、何がどうなってやがる!」
……ケイコフィールド不発。
てか、ケイコさん以外の誰か助けて……!
ガオオオオオン! と鋭い音が森に響き渡った。
気づくと、目の前のケモノは頭から血を流して横転していた。
どうやら即死のようだ。
「何が起きたの?」
私の視界の奥に、毛皮を着たおじいさんが現れた、
ケイコさんの真後ろに立っており、猟銃を担いでいる。
「バカモンガアアアアアアアアッ!」
そのおじいさんは、ケイコさんに向かって物凄い怒鳴り声を上げた。
「うわっ!?」
「貴様っ! そんな恰好で森を歩きおって、死にたいのかっ!」
この後、ケイコさんはかなりこっぴどく怒られ、帰り道はずっとブルーだった。
おじいさんと一緒に下山し、その際私は銃で捕らえたイノシシを分けてくれないかと頼んだ。
「……やめておけ。 銃で即死させてしまったから、血抜きもできん。 肉が欲しいんなら、村で売っているのを買えばいい」
「普通に売ってんの? 私ら、馬鹿じゃん」
私と遥はあはは、と笑った。
村でイノシシの肉を購入。
夕方、定食屋でイノシシ汁と呼ばれるトン汁風の食べ物を食べた。
イノシシの肉の他に、大根、タマネギ、白菜、シイタケ、豆腐が入っており、とてもおいしかった。
「イノシシの肉っておいしいね!」
「ああ、私も初めて食べたけど、こりゃうめえな」
……初めて食べたんかい!




