イノシシ村
イノシシ狩り当日。
私たちは、登山をするような格好をして、クレイジーブレッドに向かった。
「おっ、準備万端か?」
ケイコさんが店から出てきた。
「す、すごい派手ですね……」
ケイコさんは、赤のマウンテンパーカーを着て現れた。
更に、片手には野球のバットを持っている。
「闘牛からヒントを得たんだ。 赤を見たらイノシシのやつは興奮して私の方に向かってくんだろ? そこをこのバットでガツン、だ」
「作戦とかは……」
「安心しろ! シミュレーションはばっちりなんだ。 モン〇ンでイノシシ狩りまくったから、相手の動きは分かる」
……絶対ダメでしょ。
しかし、止めても聞くタマじゃない。
かなりの不安を残しつつ、私ら3人はトラックに乗り込み、現場まで向かった。
高速を使い、およそ5時間程走らせ、下道に降りる。
道は完全な山道で、所々イノシシ注意の看板が立て掛けられている。
「ほっせー道だな。 車酔いすんなよ」
ガタゴトと揺られ、しばらく進むと山村に到着した。
「イノシシ村に着いたぜ」
ケイコさん曰く、このイノシシ村には野生のイノシシがたくさん居るらしい。
適当に車を止め、早速私たちは山奥へと乗り込んだ。
「スニーカーじゃマズかったかなぁ」
ケイコさんはジーンズにスニーカーという、まるでハイキングに来るときのような格好だ。
私と遥は、前もって登山ショップで靴を買ってきていたため、比較的歩きやすい。
「ケイコさん、置いてくよー」
「待てよっ、くそ……」
既にケイコさんとはかなりの差が開いてしまった。
「ユメ、ちょっと待とう」
仕方なくケイコさんを待っていると、グルル…… という獣のうなり声がした。




