パンのコンクール
「は、ハズいだろ……」
遥が慌てて手を振り払う。
ふふ、ちょっとかわいいじゃない。
こうして、私たちは仲直りすることが出来た。
家で頭に巻かれている包帯のことを聞かれたが、音楽室の肖像画が落ちてきた、と説明しておいた。
早朝はパンの仕込みの手伝い、放課後は部活、その後更に遥と2人で、ケイコさんからヴァイオリンの指導を受ける。
そんな日が続いたある日。
「お前ら、今日は飲みに行くか!」
練習を終えて、突然ケイコさんがそんなことを言った。
「私たち、未成年ですけど……」
「その場にいるだけなら平気だって。 それとも、私の言うことが聞けねーのか?」
「行きます!」
遥が勢い良く返事をする。
結局、反論する間もなく、隣駅に移動して飲みに行くこととなった。
「私の行きつけの立ち飲み屋があっから、そこに行こうぜ」
店に到着すると、雰囲気はバーのような感じで、遥と私は少し浮いてる感じがする。
大丈夫かなぁ……
「注文は?」
丸テーブルで待っていると、店員がメニューを取りに来た。
「生3つ~」
「え……」
「細けぇこたぁいいんだよ!」
目の前にビールが置かれた。
アテも無しにこれを?
「かぁ~、うっめ!」
とりあえず一口飲んでみた。
……おえっ。
「あははっ、楽しいねぇ~」
遥が完全に出来上がり、ケイコさんが4杯目の生を飲みきった頃、誰かがやって来た。
「ケイコじゃねーか。 そこの2人は親戚か?」
現れたのは、少しガラの悪い感じの男性だ。
名前を知ってる所からして、知り合いのようだけど……
「シンゴ、次のコンクール、絶対私が勝つ」
「雪解けメロンパンで勝負する気か? あれじゃ、俺のカレーパンには勝てねぇぜ」
「雪解けメロンパンじゃねぇ。 もっとすげーパンのレシピを手に入れたんだ」
何の話をしているのかしら?




