和解
幸い、保健室の先生がまだ残っていたため、私は頭の傷の手当てを受けることが出来た。
「いくら喧嘩でも、やり過ぎよ。 金成遥」
「……ごめんなさい」
私の頭には包帯が巻かれ、見るからに痛ましい。
今日のところは練習には参加せず、汚れた制服をはたいた後、遥に家まで見送られることとなった。
帰り道、気まずい雰囲気だったが、思い切って話を切り出した。
「いや~、モップで殴るとか、どこかのバスケ漫画を彷彿とさせるね!」
「……」
ノーリアクション。
変なこと言っちゃったかしら。
すると、遥が口を開いた。
「……あなた、タフすぎ」
……はは。
確かに、あれだけやられて、まだ音楽室に向かう気力が残っていたとは。
我ながら頑丈だ。
「丈夫に生んでくれた母親には感謝しなきゃね!」
「……メンタルの方」
そっちか。
「うち、両親の仲が悪くてさ。 それをつなぎ止めるために家じゃ良い子ぶってるのよね。 あなたに辛く当たるのはその反動かも」
……家庭の問題。
うちにも少なからずあるけど、一体何が原因なのかしら?
「何で仲が悪いの?」
「さあね。 あの人らの事情なんか知らないわよ。 ただ、想像はつくけどさ。 何も話さないって時点でね」
子供に説明できない事情。
……浮気、かな?
「高校を卒業したら、私は家を出て行く。 それまでの辛抱よ」
遥にも色々あるのね。
だから爆発してしまったんだ。
気づいたら、私たちは駅前までやって来た。
「あ、ついでにパン食べてかない?」
「……いいけど」
クレイジーブレッドに向かい、行列を並んで店内に入る。
ケイコさんに軽く挨拶して、メロンパンを2つ買った。
「これ、雪解けメロンパンっていうの。 ほっぺた溶けちゃうくらいおいしいよ」
パクリ、と遥が一口頬張る。
おいしい、とつぶやき、こんなことをボソリと言った。
「私らの壁も、溶けてなくなる?」
「……」
私は遥の頭を抱え、額と額を合わせた。
「壁なんてねぇよ」
ナル〇のシーンをパクりました笑




