雪解けメロンパン
帰り道、ケイコさんがガリガ〇君 (焼き芋味)を奢ってくれたので、それを食べながら話をした。
「ケイコさんの代は、コンクールどうでした?」
「……どっかの馬鹿がインフルにかかったのに練習に来やがって、出場停止になっちまった」
げ、それって一番最悪じゃ……
「その馬鹿は私なんだけどさ」
え……
「ユメ、明日ヴァイオリン持って来いよ。 夜なら少し教えてやれっから」
ヴァイオリンか。
「今、楽器屋に預けてて…… 弦の交換終わったら連絡くれるみたいです」
「じゃあ、しばらく私の使えよ」
「いいんですか?」
「その代わり、朝は手伝ってもらうぜ!」
こうして、その日は家に帰り、翌朝クレイジーブレッドで仕込みの手伝いをすることになった。
「メロンパンの作り方を説明するよ」
枝豆さんは、前日作っておいたクッキーの生地を大きめのボウルから取り出し、テーブルに置いた。
「分量は僕が決めるから、栗井さんは伸ばし棒で生地を伸ばして、その上に丸めたパンの生地を乗せて、包んでいってよ」
私は言われた通り、生地を伸ばしてから、丸めたパンの生地をとって、包み込んでいく。
「仕上げにグラニュー糖をまぶして、ヘラで切れ目の模様をいれて、オーブンで焼けば完成だよ」
グラニュー糖をまぶす理由は、表面をカリっとした仕上げにするためらしい。
オーブンで焼き上げると、香ばしい薫りがした。
「わあ、おいっそう!」
「一個食べてもいいよ」
私は出来たてのメロンパンを2つに割り、頬張った。
「まいう~」
授業が終わり、放課後だ。
今日から1ヶ月後に吹奏楽のコンクールがある。
私が教室から出ようとすると、金成遥が入り口に立ちはだかった。
「……どうしたの?」
「あなたを音楽室に行かせるわけにはいかない。 コンクールまで後一ヶ月。 足を引っ張られるわけにはいかないの」
いつもの遥より、更にプレッシャーを感じた……
私の心臓が早鐘を打っている。
これから何が起こるのか、何となく想像がついた。




