第六話:アウトローな腐れ縁
激闘の末、舞は、剛雷を倒し、その場に立ち尽くしながらエレメントドラゴンから
受け継いだ竜浸激波の習得に喜びを隠せなかった。
舞「私…やれたんだ、練習では一回も成功しなかったのにこの土壇場でやってのけ
たんだっ!!」
そんな舞に足元に倒れてる剛雷が口を開いた。
剛「見事だ嬢ちゃん…その技はアイツが無法地帯でまだ属性分離に成功してないこ
ろ無属性神通力で強化された外部破壊不能な相手に対抗するために編み出した
絶技の一つだ。」
舞「…エレ君のこと、知ってるんですか?」
剛「今はそう呼ばれてるのか…てかいるんだろ黒坊」
するとエレメントドラゴンが舞のもとに飛んできた。
エ「ストチル(ストリートチルドレンの略)時代の呼び名で呼ぶな剛雷。」
エレメントドラゴンの姿を見て剛雷が噴出した。
剛「ぶっ、なんだその姿っ、ゲーセンの景品でも始めたのかっ、ひっくっくっ
くっ、がはっ!!」
吐血する剛雷。
エ「まだ精度が低いとはいえ竜浸激波食らったんだ、体内がずたずたの状態で
笑うからそうなる。」
舞「エレ君、知り合いなのっ!!」
エ「うん、ボクの幼馴染で、無法地帯で生き抜くために助け合ってた仲間の
一人なんだ。」
エレメントドラゴンは剛雷に向き直る。
エ「それでっ、てめぇは、昔から悪事には、手を染めてたがリスクの高いこ
とはやらなかった。
それが今回、原則、上級魔族の本体での人界への渡航が禁止されてて
死罪の可能性もあるのに何故だ、吐いて貰おうか。」
剛「そういう黒坊も上級神竜だろうがっ人界に本体で降りてきていいの
かよっ!!」
エ「話をそらすな、それに俺はてめぇと違って許可下りてるからいいん
だよっ!!それよりとっとと吐けっ。」
剛「俺も仕事だ、情報ほ漏らすのは信用に関わる他をあたれ。」
エ「そうかー、話してくれないかー幼馴染のよしみで優しく頼んだ
んだが俺の優しさが理解できなかったか。」
エレメントドラゴンは舞の方に振り返った。
エ「舞ちゃん」
舞「?、何?」
エ「今から剛雷に、素直になる魔法をかけてもらいたいんだ。」
舞「えーっと、素直になる魔法って…」
魔術杖を出し、呪術のリストが舞の頭の中を駆け巡りひとつの
呪術が該当する。
舞「このカオス・ソウルデストラクションジャックってのでいいの?」
それを聞いた剛雷が青ざめる。
エ「うんっ。」
剛「ちょっ、ちょちょっ!!」
エ「いやー剛雷は、本当に仕事熱心だね、魂ぶっ壊されて自白させ
らようとしてる中、情報を守ろうとするなんて僕には真似出来
ないよ。
そんな心意気を持つ剛雷に手心を加えてあげたいが今の僕は
呪術発動がまともにできないから,ずぶの素人の舞ちゃんに任
せるしかないね。」
剛「まっ、待て黒坊っ、はっ、話し合おうっ、一部分だけ話すっ、
な、それでいいだろ?」
だが剛雷を無視するエレメントドラゴン。
エ「舞ちゃん、始めていいよ。」
エレメントドラゴンの一声で舞が呪術発動のための詠唱に取り掛かる。
舞「混沌の源よ我に従いて魂魄を破壊し奥底に秘匿されし記憶を我の
前に引きずり出せっ!!…」
エ「大丈夫だよー、運が悪くて一生、心神喪失状態になるだけだから。」
舞が最後の詠唱に取り掛かろうとした時、剛雷は観念した。
剛「わかったっ!!話すっ、全部話すから詠唱をやめろっ!!」
エ「舞ちゃん、ストップ。」
舞は、詠唱終了ギリギリで詠唱をやめた。
エ「たくっ、手間かけさせやがって、最初からそういえば
いいんだよっ!!」
剛「神竜になっても{謀略の黒竜}は今だ健在か…今から俺の知っている
ことを全て話すがこれで裏家業の信用、がた落ちだっ!」
エ「安心しろ、その辺は保障してやる。」
そして剛雷は、語りだした。
剛「そう、あれは半年前の話だ、俺が行きつけの酒場、昇天酒で一杯
引っ掛けてる時だ。」
エ「あー、あの裏家業の住民が集まる、美味い酒とストリップで有名
なあそこな。」
剛「ほろ酔い気分でお気に入りのストリッパー、綾那ちゃんのむしゃぶり
つきたいほど見事な尻眺めてた時に、裏家業のお仕事斡旋魔、小鬼の
雀王が俺の横の席に座り俺に一杯おごり今回の仕事の話をもちかけてきた。
内容は、闇門(瘴気の渦のこと)の守護と、ブツの護衛と輸送だ、
しかも報酬も破格で二、三百年は豪遊しまくっても問題ないほどのな。」
エ「確かにお前がリスクを犯すに値する報酬だな…それで雇い主の情報は?」
剛「まあ、こんなヤバイ話だ、雇い主が誰だかなんて当然明かされてない、
だが人界に持ち込もうとしたブツは、知っている。
だが随分と妙でな、対上級神族用兵器や対上級魔族用兵器なんてもの
人界に持ち込もうとしてた。」
エ「確かに妙な話だな、人界にそんなもん運び込んだって上級神族も上級魔族
もいない人界では使いようがないし、魔界統制局の目を誤魔化すにしても
いちいち人界を経由するのは効率が悪すぎる、誤魔化す目的なら神界と魔界
の狭間の無法地帯で十分なはずだ…ほかに情報はねぇのか?」
少し考え込む剛雷だったが舞にぶった切られビル屋上に転がっている翼竜みたいな
上級魔族、闇空を見て思い出した。
剛「そうだっ、そこに転がっている闇空と暴魚は、別の仕事を請け負ってた。」
エ「どんな仕事だっ!!」
剛「ある、人間の殺害だったはずだ。」
エ「人間殺すのに上級魔族がいるか?」
剛「俺に聞かれてもそれ以上のことは知らん、知ってることは全部話した
、文句はないだろ?」
エ「ああ、十分だ…それじゃお前の保障についてだが、」
舞「エレ君っ!!瘴気の渦から誰か降りてくるっ!!」
舞は瘴気のの渦の中心を指差している。
そこから人の姿をした十人ほどの制服姿の魔族が降りてきた。
それを見ていた舞は臨戦態勢をとろうとするが。
エ「舞ちゃん、その必要はないよ。」
舞「えっ、どうして?」
エ「彼らは魔界統制局、つまり人間世界でいう警察みたいなものだね。」
魔界統制局の魔族達が舞達がいるビル屋上に降り立つと、指揮官らしき
銀髪長髪の貫禄のある男がエレメントドラゴンに歩み寄り名刺を差し出
し丁寧に挨拶した。
「お初にお目にかかります私は、魔界統制局人界担当、組織犯罪課課長、
陣 双炎と申します。」
エ「これはご丁寧に、私は、神龍所属、エレメントドラゴンと申します。」
そう言うとエレメントドラゴンも名刺を差し出し名刺交換をする。
その光景を眺める舞はなんともいえない表情をしている。
舞「あの、剛雷さん…私が今見てるのってサラリーマンじゃなくて
神竜と魔族だよね??」
少し回復したのか剛雷が体を起こす。
剛「まあ、嬢ちゃんが黒坊にどんな風に神界や魔界について説明
うけたか知らんが神通力…つまり魔法みたいなものがあって
も基本、人界のシステムのバージョンアップみたいなものだ。
しかも、あいつ等は、まあ人界で言う公務員みたいなもの
だからなこういうところはピッチリしてるんだよ。」
舞が頭を抱えて混乱する。
舞(心)「なんなのこれ…私の想像してた、ファンタジー要素も
メルヘン要素もどこにもないじぁないこんなのただの
リアルマジな人間社会の延長じゃないっ!!」
頭を抱え、あぁぁぁと唸る舞。
剛「まあ、嬢ちゃん…現実なんてそんなもんだ。」
剛(心)「理想と現実のギャップで混乱してる嬢ちゃんはともかく、
ここから黒坊の戦いだ。
さて黒坊はどう動くかな。」
エレメントドラゴンと陣は、形式的な挨拶を終え互いの腹の探り
あいが始まった。
陣「今回の件は、我々、魔界の民がご迷惑をかけました彼らは
魔界統制局のほうで身柄を拘束させてもらいます。」
エ「そちらに転がってる、鳥みたいのと魚みたいのはあなた方
魔界統制局に身柄を差し上げましょう…だがこちらの魔虫
タイプの身柄はこちらで預からせてもらう。」
陣の眉間に皺がより口元は微笑んでいるが眼光は心を射抜いてしまう
のではないかというほど鋭くなった。
陣「あなたもご存知の通り彼らは魔界の民だ、したがって我々には彼ら
を裁く権利があるっ!!、神竜側のあなたが口を挟む権限はないと思
うが。」
それを聞いたエレメントドラゴンは口を三日月のように口元を吊り上げ
薄気味悪く笑い出した。
陣「何が、おかしいっ!!」
エ「くっくっ、確かにあんたら魔界での犯罪は魔界側で裁く権限があるそのことは
魔界法でも規定されてるし神界側の法律が介入する余地はない…まあ、魔界
での話しだったらね。」
陣「くっ!!」
エ「残念ながらここは人界だ、確かに今回のこの事件は君達魔界統制局の追ってた
魔界での事件の延長だが人界に及んだ時点で十分口を挟む権限はあるさ。
しかも今回のような事態を想定しての神界と魔界の取り決めで先に容疑者を
確保した側に権限を有すると規定されてるはずだ、まあ殆どこの規定が使われ
るケースはないから知らない奴が多いが…こちらを舐めすぎだ、陣さん
よぉーっ!!」
陣は、ため息をついた。
陣「こちら側に有利に話を進めようと思っていたが、若いのになかなかやる
じゃないかエレメントドラゴンさん、それなら何故、そこに転がってる
二魔の引渡しに応じたんだ?」
エ「なに、私も鬼ではないですよ一応、魔界統制局さんの面子が立つように
と私からの気遣いですよ。」
陣「なるほど…それで本音は?」
エ「貸しを作っておくと今後、ゆすりやすいからっ!!」
陣「うーん、神竜らしさの微塵も感じられない本音だな…だがその強かさは
嫌いじゃない。」
エ「それでは早速、借りの二つのうち一つを返してもらおうか。」
陣「待て、いつ借りが増えた?」
エ「決まってるじゃないですか、容疑者一魔につき借り一つですよ。」
陣「ホント、いい性格してるな君は、それで要求は?」
エ「なに、たいしたことではないですよ。
もう魔界の方では人界への渡航制限が出てるのか聞きたかった
だけですよ。」
陣「そのことか、すでに、渡航禁止命令が出て職務に誠実な下級魔族は
魔界に帰還している。
現在、人界にいるのは犯罪に手を染めてる者くらいだ。」
エ「しかし、やけに対応が遅い気がしますが?過去の魔王ならまだしもあの今は
亡き慈愛の異端児、大天使キリシエルの教え子の大魔女帝、櫻が今まで完璧
なまでの人界の善悪のバランスを制御していたのに今になってそれをしくじ
るなど、どうも解せませんねー。」
などと言いながらエレメントドラゴンが陣を見るが陣は表情を崩さない。
陣「なに、生理痛で不調だったじゃないのか?」
エ「そうですか、私はてっきり瘴気濃度の計測がうまくいってないのかと。」
その言葉に、一瞬、陣の目元に皺がよる、傍から見れば誰も気づかない反応
だったがエレメントドラゴンはそれを見逃さなかった。
エ(心)「なるほど、神界の瘴気計測の呪術計器に細工の形跡があったから
カマかけてみたがどうやら魔界側でも似たようなことが起きてる
みてぇだ。
こりゃ両陣営、内部にこの事態を仕組んだ奴の手駒が紛れ込ん
でるな、ほんと厄介なことばかり起きやがる。」
エ「まあ、私の考えすぎだったようだ。」
陣「そろそろそこの二魔を回収して行ってかまわないか?」
エ「どうぞ」
陣が部下に指示を出し、闇空と暴魚を呪術拘束し上空の瘴気の渦の中に連行
していく。
その様子を見守りながら陣はさっきから気になっていることをエレメント
ドラゴンに聞く。
陣「その、さっきから気になっていたんだが…その子は?」
エ「それ、聞いちゃいますか、参ったなーこれも重要機密の一つなんだけど
なー無料というわけにはねー。」
などと言いながらエレメントドラゴンはニヤついた表情で陣を横目で見る。
陣「はいはい、貸し一つ追加でいいから。」
エ「まいどありー、まあ一言で言うなら魔法少女って奴ですよ。」
一瞬、陣の思考が停止する。
陣「えっ、…どうやら聞き間違えたみたいだ、もう一度言ってもらえるか?」
エ「だから、魔法少女ですって。」
陣「どの部分が、魔法少女なんだっ!最近の魔法少女は、拳で語り合ったり、
バトルロイヤルしたり結構、バライティーに富んでるが…全身硬質の鱗
に覆われ、手足には強靭な鉤爪、が付いた魔法少女なんて聞いたことが
ないっ!!…そもそも何故、魔法少女なんて生み出したんだっ!!」
エ「陣さん、魔法少女についてやけに詳しいね…まあかくかくちかじかで。」
エレメントドラゴンは、陣に神界での呪式計測器の細工などの情報を省いて
大まかに説明した。
陣「なるほど、上司のリサーチ不足で人界に送られ弱体化した上、今回の件の
全権限を与えるという名の責任転嫁に遭い、それでも任務遂行のため苦肉
の策で素質のある少女を魔法少女にしたと言うことか…苦労してるね。」
エ「ええ、まあこの魔法少女システムの御蔭で今後の人界の瘴気浄化の目途が
立ったのが不幸中の幸いですがね。」
陣「まあ、魔法少女と呼べるかどうかは置いといてなかなか画期的なシステム
ではある。
これなら人界への影響を考え力を十分に力を発揮できない分身体でも
問題ない…だがこの子の扱いや保障はどうなってるんだ?」
そう聞かれたエレメントドラゴンの思考が停止し無言になる。
陣「おい、まさか本家魔法少女みたいに契約者の善意だけであとは
ボランティア扱いとか言うつもりかっ!!」
エ「やっべ、立ち読みした魔法少女物にそこらへん書いてなかった
から見落としてた。」
陣「お前は、鬼畜かっ、中学生の女の子に殺し合いさせといてなんの
保障ないだとっ!!」
エ「いっ、いやー、一応、恋のサポートとかしてる…よ?」
陣「なもん、釣り合うかっー!!」
陣とエレメントドラゴンの言い合いを舞と剛雷は眺めていた。
剛「嬢ちゃん…嬢ちゃんは黒坊から報酬がもらえるとかそういう
保証がないのになぜこんな危険なことしてんだ?」
それを聞いた舞はきょとんとした。
舞「だって、多くの者の幸せのために戦うのが魔法少女でしょ?
私が戦うことで人々の生活や笑顔が守れるならそれ以上の報酬
なんて存在しないよ。」
今まで死ぬような戦闘を経験しながらそんな、偽善のような言葉を本気で
言う舞に閃光が輝く、そんな舞がまぶしすぎて剛雷は直視できなかった。
剛(心)「なんて純粋でいい子なんだっ、稼いだ金で酒と女に溺れてる
汚れた俺には眩しすぎるっ!!」
陣とエレメントドラゴンは、言い合いに区切りがつき、陣は、魔界に戻るため
部下と共に瘴気の渦に上がっていく。
陣はエレメントドラゴンの方を振り返った。
陣「その子の扱いちゃんとするんだぞ。」
エ「ああ、判ってるさ。」
陣は、瘴気の渦に消えていった。
エ(心)「俺としたことが舞ちゃんの優しさに胡坐をかいて舞ちゃんの保障や扱い
を考えてなかったぜ、こりゃ長老達と話し合ってきめねぇーとな。」
エレメントドラゴンが舞いに瘴気浄化の指示を出し、舞が浄化に取り掛かる。
その間に、エレメントドラゴンは剛雷の今後の保障について剛雷に話し出す。
エ「それで、今後のことだが俺のもとで情報収集などしてもらう、扱いとしては
非正規神龍所属員(人界で言う嘱託公務員みたいなもの。)ということに
なる。」
剛「本気か?、俺みたいな悪事を働いてる奴を非正規とはいえ神龍所属に迎える
というのかっ?」
エ「ああ、長老共に文句言われるだろうが今回の人界での権限は俺にあるから何
とかなるさ。
それにだ、こんな弱体化した俺じゃ、情報収集もまともにできねぇから
手立てを考えてたところだった。」
剛「だが、お前のキャリアに傷がついてしまう可能性がっ!!」
エ「謀略の黒竜と言われ恐れられた俺がその程度のことで出世の道を閉ざされる
なんてことねぇから気にするな。
それとも俺のもとで働くのはイヤか?」
剛「友のもとで働くんだ、嫌なわけない。」
エ「なら、決まりだっ、これから頼むぞ剛雷。」
剛「まかせとけ黒坊っ!!」
剛雷とエレメントドラゴンがお互いの手と手をぱんっと叩いた。
剛雷とエレメントドラゴンの話がまとまったのと同じくらいに舞も瘴気の
浄化を終えてエレメントドラゴンのもとに来た。
舞「エレ君、終わったよ。」
エ「舞ちゃんご苦労様、あと舞ちゃんこれから剛雷も一緒に戦うことに
なったから。」
剛「これからよろしくな嬢ちゃん。」
舞「こちらこそ、剛さん。」
剛と舞は握手した、その光景は、さっきまでガチで殺しあっていたのが
嘘のような微笑ましいこうけいだった。
ようやく今回の瘴気浄化を終えて疲労困憊の舞は、自室のベットで抱き
枕にしがみつきながら深い眠りについていた。
その頃、剛雷は舞の家の瓦屋根の上に腰掛けていた。
そこにエレメントドラゴンが両手に缶ビールを持ってきた。
エ「剛雷っ!」
缶ビールを一つ投げて剛雷に渡す。
剛「ほう、人界の酒か、どうしたんだこれ。」
エ「ああ、舞ちゃんの親父さんのくすねてきた。」
剛「お前、神竜としていいのかそれ?」
エ「心配するな、舞ちゃんにその分の金返すから。」
二人は、缶ビールのプルタブを開け一気にビールを喉に流し込んだ。
エ、剛「くぅーーーーっ!!」
剛「人界の酒もなかなか捨てたもんじゃない。」
エ「そうだな、こうしてお前と呑むのも久しぶりだな、何年ぶりだ?」
剛「確か、黒坊の聖神大学の特待生に決まってその壮行会以来だから
五年ぶりか。」
エ「懐かしいな、あの時お前が酔ってストリッパーにしつこくちょっかい
出すもんだからキレたストリッパーにハイヒールで首もとの装甲と
装甲の隙間を突き刺され血が噴出して転げまわってたよな。」
剛「だぁっ!!まだ覚えてやがったのかっ!!」
エ「あんなおもれぇーもん忘れるわけねぇーだろ。」
ビール片手に昔話に花を咲かせる。
そしてそんな昔話が一段落したとこでエレメントドラゴンが口を開いた。
エ「それで?今回のハイリスクな仕事に手ぇ出した本当の理由は何だ。」
剛「…それはさっきも話したとおり二、三百年豪遊できるほどの大金が
転がりこ…」
エ「俺がお前とどれだけ付き合い長いと思ってる、お前は大金を欲しがる
ほど強欲ではないっ!!酒と女が楽しめるほどほどの額稼げれば満足する奴だ。
いったい何にそんな大金使う気だったんだ?」
剛雷は、頭を掻き、ため息をつき観念して話し出した。
剛「お前が無法地帯に立てた孤児院学校の資金に使うためだ。」
エ「えっ、ちょ、ちょっと待て孤児院学校にって、俺がストチル時代に投資会社
も設立してそこからの利益で孤児院学校の運営自体は問題ないはずだろ。」
剛「ああ、だが今のままでは、受け入れれる餓鬼共の数は増やせない、確かに
無法地帯で荒んだ生き方をしてる餓鬼共に学ぶチャンスを与えることは成功
して卒業生は全うな道に進めてるっ!!
こんなこと大天使キリシエルの創設した孤児院学校以来の奇跡だ、でも孤児
院学校に入れなかった奴にはそのチャンスすら掴むことが出来ないなんて俺
には納得できんっ!!
だから運用資金のかさ増ししてより多くの餓鬼共を受け入れできるように
したかったんだ。」
エ「…待て、お前は孤児院学校建てることに反対だったじゃねぇーかっ!!」
剛「確かに餓鬼のころは、身寄りのない俺達が学問なんてやっても意味な
どないと思ってた、どうせ屑に成り果てるのが決まりきってる環境
だったからな。
だが、黒坊は、あんな最悪な環境でも努力してとうとう聖神大学
の特待生になりやがった。
そんなお前が、{どんな劣悪な環境で育とうとも学ぶチャンスさえ
あれば道は開ける}なんて言ってたお前の言葉を信じてみたくなっ
てな、お前が大学行くために神界に行ってから孤児院学校の手伝い
をはじめたんだ。」
エ「おい、そんなの初耳だぞっ!!」
剛雷は恥ずかしそうにモジモジする。
剛「そりゃー…孤児院学校建てるの反対してたし、学問無意味みたいな
ことを前に散々言っちまった手前な、お前に知られたくはなかった
んだよ。」
エ「素直じゃないなー剛雷は。」
剛「まあ、そんなこんなで孤児院学校を手伝っていてだ、生きることで
必死だった餓鬼共が自分の将来につい考えれるようになっていく姿
を見ててお前の言ってたことの正しさを実感した。
だが一歩、孤児院学校の外に出れば生きるのに必死で悪事に手を
染めないと生き抜けない餓鬼共で溢れている現状を見ていて何とか
こいつ等にも手を差し伸べる方法はないかと思い始めて…まあ今回
の方法をとるに至ったというわけだ。」
エ「お前がそんな風に考えてたなんて嬉しいよ・・・しかしお前も変
わったな。」
剛「別に俺だけが変わったわけじゃない、ストチル時代つるんでた奴らは、
お前を見ていて屑に成果てる以外の生き方も出来ると知って悪事から
足洗ったよ、俺を除いてな。
そしてお前が無法地帯に残した孤児院学校のために奮闘してるよ
多くの孤児に学ぶチャンスを与えるためにな。」
エ「聞いててむず痒くなる内容だな。」
剛「お前の生き方が屑共に道を示した功績だ素直に誇れよ。」
こうして剛雷とエレメントドラゴンは朝まで飲み明かしたのだった。