第三話:魔法少女だって地道な努力は必要だよ。前編
舞(心)私の名前は、一宮 舞、13歳、どこにでもいる普通の中学二年生…
だったんだけどある日、下校中の私の目の前に三頭身ぐらいの黒い
ヌイグルミみたいなドラゴンが現れて「ボクと契約して魔法少女に
なってくれない?」
なんて言われて魔法少女なった私はアニメのような愛と魔法で悪を討
つ可愛い魔法少女を期待していたら凶悪なドラゴンみたいな姿にさせ
られるわ、魔法使う率より肉弾戦の割合のほうが多いわ全然魔法少女
って感じじゃなかった。
まあ私も現実と理想のギャップは、つき物だと思い仕方ないかと思ってるよ。
その代わり他の部分では、アニメでみるような、普段は、ほんわかした日常を
送りながら魔法少女が出来ると信じてた。
そう信じていた私は今、友達とお茶してたはずのっ、…時間にっ!!、鬼軍曹と
化したエレ君に軍隊並みの肉体強化をさせられてます。
舞は、山道をリュックに三十キロの重りを積んで山を体操服で駆け上がっていた
が力尽きてその場に倒れてぴくぴくしだす。
そんな舞の姿をエレメントドラゴンは上空からながめていた。
一週間前
午後17時、舞とエレメントドラゴンは舞の部屋に居た。
舞は、ベットに腰掛け、目の前に浮遊するエレメントドラゴンの言葉に耳をかた
むけていた。
エ「舞ちゃん、ボクは舞いちゃんには瘴気の浄化だけ行ってもらおうと思ってた。
もし戦闘になっても人界に派遣されているのは下級魔族だけだから撒いて
しまえば危険に巻き込むことはないと思っていたけどボクの想定外のことが
起き過ぎている。
この前の上級魔族のこともそうだ、本来、上級魔族は存在自体が強大なエネ
ルギーの塊だから人界に悪影響が出ないよう分身でない限り人界への渡航は
魔界法で禁止されているんだ。
勿論、裏社会の魔族連中もリスクが高いから本来なら絶対やらないはず
なんだけど。」
舞「えっ、…魔界って悪魔とかの…ことだよね?悪魔とかがなんで人間界に影響
が出ないようになんて考えるの?」
エ「舞ちゃん、魔界はただ悪さをしているわけじゃないんだ人界の善と悪のバラ
ンスを保つために動いているんだ。
まあ今回、悪に偏りすぎたから善のバランスを司るボクが派遣されたんだ
けど本来、魔界側も悪に偏りすぎてるから手を打つはずなんだけど…」
舞「でも私たちの世界の善と悪のバランスをとったって魔界や神界には何の意味
があるの?」
エ「このバランスが崩れると、人の世界で起きるような自然災害が神界や魔界で
も起きるんだ。
しかも人界などとは比べ物にならないくらいのね。
だから人界でのことは人事ではないんだ。」
舞「へぇーそうなんだ。」
エ(心)「あと、人間の魂魄の成長のため魔界側は誘惑して陥れ、神界側は誘惑
に打ち勝つ者や善行を行う者に助けを出したりしてその人に合った
試練を与えてるんだけどね。
それによって死んだ後、次にどこに生まれるか選べたり、悪事を
働きまくったらすさまじい環境に強制転生させられたりするって話は
人間の舞ちゃんにはネタばれになるからだ まっとこ。」
エ「まあ、そんなとこで本来人界に居るはずのない上級魔族がいてまたこの前の
ように遭遇して戦闘なるかもしれないから舞ちゃんには肉体強化のトレーニ
ングをしてもらいたいんだ。」
舞「大丈夫だよー、この前も上級魔族倒せたし。」
舞は、笑いながらそういった。
エ「確かにこの前は、勝てたよ…相手が深読みと油断してくれたからね。」
舞「えっ、どういうこと?」
エ「舞ちゃんは気づかなかったかい?、完全体のモード・フレイムなった時、
あの上級魔族が黒雷の槍を放ってこなかったのを。」
舞「はっ、そういえばっ!!」
エ「恐らく、ボクを知ってたみたいだから舞ちゃんがモード・フレイムの完全
体なったのを見て火属性と混沌型の両方が使えると思ったんだろうね。
だから黒雷の槍をどれだけ放とうが混沌型の特性で無力化されると思っ
て放ってこなかったんだろう、そのおかげであの時、火属性しか使えなか
った舞ちゃんは命拾いできた。
そして舞ちゃんが戦闘慣れしてないから接近戦なら倒せると油断してく
れたことが勝てた理由だよ。」
舞「…そんなこと言われるとよく私生きてるよね。」
エ「でも、あの時よくボクの指示通りうごけたよね。
あれはびっくりしたよ。」
舞「私、旗あげたりあげなかったりのゲーム得意だからそれでかな?」
エ(心)「えっ、それの延長線なのっ、…この子、わけわかんねー」
エ「まあ、そんなわけで今後無事に生還できるように肉体強化を行おうと
思うんだ。」
舞「でも、どうせ魔法で体は強化されるから必要ないんじゃ…」
エ「あはは、舞いちゃんのひ弱で体力皆無の体をいくら強化したって糞のた
しにもならないよ。」
舞「今っ、すごく酷いことさらっと言われたぁーっ!!」
エ「ちなみにメニューはこんな感じだよ。」
エレメントドラゴンの持ってる宝玉からトレーニングメニューが
映し出される。
そこには、朝:四時から五時までひたすら走りこみ
朝:五時から六時まで腕立て50回、腹筋50回、背筋50回
朝:六時から七時までスパーリング
午後:十三時から十三時半までストレッチ
午後:十六時半から十七時半まで山岳トレーニング
このトレーニング内容を見た舞はぞっとしていた。
舞「これのどこが魔法少女のトレーニング内容なのよっ、こんなの
ただのスポ根じゃないっ!!」
エ「舞ちゃん、現実はアニメみたいに魔法の力でなんでも解決できる
ほどあまくないんだっ!!日々の積み重ねこそどんな力にも対抗し
える力なんだっ。」
あまりの正論にエレメントドラゴンが輝いてみえる舞。
舞「正論すぎて眩しいよっ!!」
エ(心)「まあ、運動が得意でない舞ちゃんにこのメニュー見せた時点で
まあ納得してくれないのは想定済みだ。
それでも舞いちゃんのことだ恐らく…」
舞「正直、運動苦手でやりたくはないけど…でも、エレ君が私のため思っ
てこのメニュー組んでくれたんだもの明日からお願いね。」
エ(心)「俺の意図をくんでくれたか…親御さんあんたらの娘さんほんと
にええ子に育ってるよ。」
エ「ありがとう舞ちゃん、そんな舞ちゃんに感謝の印にいい情報を教えて
あげるよ。」
舞「?何。」
エ「この前、舞ちゃんが廊下でこけてプリントが散らばった時、拾うの手伝
ってくれたイケメンの彼、陸道 羅刹くんのね。」
顔を真っ赤する舞。
舞「なっ、みっ、見てたの…」
エ「契約する人間のリサーチは必要だからね。
しかしあの時の舞いちゃん動揺っぷり、あれじゃ陸道くんのことが好
きなのばればれだよ。」
舞「だっ、だって仕方ないじゃない好きな陸道くんがあんな近くにしかも手
が触れちゃったたら恥ずかしくて慌てたってしかたないじゃないっ!!
…で、陸道くんの情報って?」
エ「食いつきがいいねぇー、昨日、舞ちゃんの通っている中学校で一番の
美少女とか言われてる2-3の久遠寺 美花が陸道くんに告ってたよ。」
それを聞いた瞬間、雷に打たれたかの衝撃が体に走りベットに仰向けに倒れ
こみ顔面蒼白で世界が終わったかのような表情で落ち込んだ。
エ「ちっ、ちょっと舞ちゃんっ!!、いきなりどうしたのっ!!」
舞「はっ…ははは…勝てるわけ…ないよ…容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能
の三拍子そろった美花さんに…終わった…私の初恋…」
エ「ちっ、ちょっと待った、舞ちゃんっ!!この話には続きがあるんだって、
とりあえずこれを見てよっ!!」
エレメントドラゴンは宝玉を取り出すと宝玉から映像がホログラムみたいに
映し出される。
そこには放課後の教室で言い合ってる陸道と美花が映し出された。
美「うそっ、…なんで美花がフられなきゃいけないのっ!!…美花のどこが
ダメだって言うのよっ!!」
陸「美花さんは、綺麗だし、男子ならほって置かないよ…でも俺は君を受け
入れてあげられない…だって君は、努力してる子を馬鹿にしたり、気の
弱そうな子を見つけていじめたりしてるだろ。」
美「なっ!!」
陸「気づかれないよう上手くやっていたつもりみたいだけど俺の目は
ごまかせないよ。」
美「なによ…とろくて要領悪い奴が悪いんじゃないッ!!、気が弱い奴が悪い
んじゃない…態度がイジメてくれって言ってるような奴いじめて何が悪…」
陸「それ以上囀るなっ!!」
すさまじい形相になる陸道に、美花は、毒蛇に睨まれたかの如く、しゃべれな
くなった。
陸「俺は、どんなに自分に向いてなくても何とかしようと努力してる人を尊敬
するし、そのあり方はとても綺麗だと思う。
俺はそういう人が好きなんだっ、君みたいな見た目だけ綺麗な性格ブス
は論外だッ!!」
そう言われた美花はうつむいて歯をくいしばって教室から走り去った。
そこで映像は終了した。
エ「前に恋の魔法が使えるみたいなこと言ったよね、ボクは舞ちゃんの恋の応援が
できればと思って陸道くんのことを調べてたんだ。」
エ(心)「と、言うのは建前で、舞ちゃんのやる気を引き出して上手くコントロー
ルするための材料を探してただけだが物はいいようってな!!しかも効果
は予想以上と言った所か。」
映像を見た舞は、やる気に漲っていた。
舞「エレ君っ、私、陸道くん好みの女の子になる為、明日からのトレーニング
がんばるっ!!、たとえ吐いても、骨が折れても、がんばるんだからっ!!」
エ「その意気だよ舞ちゃんッ!!」
舞がやる気に満ちていたその時、玄関のチャイムが鳴る。
舞の母が玄関の法へ行くと配達の人が来ていた。
その宅配物は舞宛であった。
舞、母「舞ー、貴方に荷物ががとどいてるわよー。」
舞「えっ、私、なにか頼んだ覚えないけど…」
エ「ちょうど、いいころに届いたみたいだ。」
舞「エレ君が頼んだの…でも家にパソコンなんてないからどうやって…」
疑問に思いながらも荷物を玄関に受け取りに行く舞。そして舞の身長より
大きなダンボールを必死に抱えながら階段を登り自分の部屋に戻ってきた。
舞「はぁ、はぁっ、エレ君、一体何を頼んだのっ?」
エ「組み立てれば判るよ。」
そう言われとりあえず組み立てると、サンドバックが組みあがった。
舞「これって、トレーニングに使うための?」
エ「そう、スパーリングのためにどうしても必要だったから注文したんだ。
一万五千円ほどかかったけどね。」
舞「よく、人間界のお金持ってよねエレ君!!」
エ「?ボクのお金じゃないよ。」
舞「まっ、まさかッ!!」
顔が青ざめる舞は机の一番下の引き出しを空け、あさり出すが
舞「ないっ、私の服買うため貯金してた一万五千円がぁーーーっ!!」
エ「そこにしまってたお金は使わせてもらったよ…まあ陸道くんとの
恋愛成就のための必要経費だと思って諦めてよ。」
舞の体から赤黒いオーラが発される。
舞「あのショウウィンドーに飾られてる洗練された可愛らしさと美しさが
共存している服に一目ぼれして…私がどれだけお年玉や、お小遣いを
切り詰めたと思ってるのっ!!」
エ(心)「やべぇー、舞ちゃん激おこってるよ…しかも金、返せるあてねぇ
しなー…何とかなだめるか。」
エ「ま、まあ舞ちゃん服なんて、ブームが終わればすぐ着られなくなるし」
舞「常に全裸のエレ君が服について偉そうに語らないでよっ!!」
エ「ボクを露出狂みたいにいわないでっ!!」
ナレーション:その後、ひと悶着あったものの、エレメントドラゴンの直属の
上司、セイントニーズに聞いたところ舞ちゃんにお金は戻って
くことが判り何とか事態は収束した。
そして次の日からガチの強化トレーニングが幕を開けるの
だった。