第十五話:陸道 羅刹の平凡な日常 後編
俺の名前は、陸道 羅刹、周りの人は、俺のことを善良だと思っている人が
殆どだが、残念ながら残虐非道な闘争を好むただの人でなしで、ただ理性で
制御できてるだけだ。
俺は今まで生きてきて刃物で斬りかかられようが、動揺などしたことがなか
った、そんな俺が今、一宮さんの膝枕提案に心のなかで動揺してしてる最中だ。
舞の提案に立ちすくむ陸道に舞が、慌てて言葉を付け加える。
舞「そっ、その、前に私がストレッチに失敗して、痙攣してた時あったよね。」
陸「ああ、確かにあったね。」
舞「その時に、倒れてる私を、介抱するために膝枕してくれたから、その、今度
はお返しというか、…そうっ、借りは返すのが私のモットーなのっ!」
陸(心)「一宮さんが俺に好意を抱いているのはうすうす気づいていたがここ
まで踏み込んでくるとはっ!正直、俺も一宮さんのことは好きだ、
だが恋仲になるわけにはいかない事情も俺にはあるっ、どうした
ものか。」
陸道は顔を赤くしている舞を見る。
陸(心)「今後のことを考えて、一宮さんの申し出を断って、距離をとるのが
最善なんだけどせっかく一宮さんが勇気を出して俺に踏み込んでく
れたんだそれを無下にするのは男が廃る、だったら俺がとる行動は
一つ!」
陸「じゃあお言葉に甘えてそうさせてもらうよ。」
舞「そっそれじゃぁ、どっ、どうぞっ!!」
ベンチに舞がスタンバイして陸道が心の中で緊張しながら舞の太ももに頭を
預けようとする。
陸(心)「おっ、落ち着くんだ俺、たかが膝枕じゃないか何を動揺してい
るんだっ!!」
陸道が舞の太ももに頭を預けた瞬間、陸道の脳裏にコスモ(宇宙)が広がった。
陸(心)「やわらけぇぇぇーーーー、そして温かけぇぇぇーーーッ!!
何てことだ、俺は今まで太股を、関節技極めたり、頚動脈を締め
上げるための武器という認識しかなかった。
それがどうだっ、柔らかな一宮さんの太股に俺の頭が乗った瞬間、
柔らかな太股に包み込まれ、そして追い討ちに温もりと一宮さん
の甘い香りが俺にコスモを見せたっ、俺は女の子の膝枕の偉大さを
実感してしまったようだ…ああ、満たされる。」
などと表情は同様の気配すら見せていないが心の中で感激しまくっている
陸道に舞が尋ねた。
舞「その、陸道くんに聞きたいことがあるんだけど…いいかな?」
陸「?、いいよ。」
舞「私の、ストレッチに付き合ってくれたのって…本当に私が危険なことしない
ようにってことが理由なの?」
陸「ああ、そうだよ危なっかしかったからね。」
陸(心)「本当は、一年の頃、合同の体育の授業でヘロヘロになりながら周回
遅れになっても走るのをやめない一宮さんの頑張る姿を見てたら自然
と一宮さんのことが気になり始めていて、そんな一宮さんの力になり
たいと思ってストレッチに力を貸したんだけど、その中でいろんな
一宮さんの表情を見てたら好きになってたんだがね…まあ、こんな
恥ずかしいこと口が裂けてもいえないけどね。」
陸(心)「しかし、一宮さんの膝枕が気持ちよすぎて眠気がっ…」
陸道は舞の膝の上で眠りについた。
陸道の寝顔を見ながら舞は微笑んでいた。
舞「普段の陸道くんは、凛々しい顔してるのにこんな可愛い寝顔するんだ、
ふふっ。
ふぁぁーっ、なんだか私まで眠たくなってきちゃった…私も少し寝よ
っと。」
こうして、舞と陸道は、ぽかぽか陽気の中、爆睡して二人仲良く午後の
授業に遅れるのだった。
そして、夜、二十時、陸道は、自室で猫じゃらしで子猫の相手をしていた。
そんな、陸道に極竜の分身体がニヤつきながら話しかける。
極:分身「君も、年相応の初心な反応もするんだな。」
陸「…感覚共有も考えものだな。」
極:分身「それで?何であの子と付き合わない好きなのだろ?」
陸「魔竜さんよ、あんたも知ってるだろ俺がどうしようもない人でなしなのを
、俺は一宮さんの恋人にふさわしくない。」
極:分身「君は、自分の思いを押しとどめて身を引くつもりか。」
陸「一宮さんには、俺とは違った高潔な相手がお似合いだ…それに」
極:分身「なんだ?」
陸「俺の裏の顔を知れば…俺なんて選ばないさ。」
何処か寂しげな表情になる陸道。
極:分身「不器用な男の子だな君は。」
そんな話をしていると極竜の分身体の宝玉に連絡が入る。
連絡の主は櫻だった。
宝玉に極竜の分身体が触れ櫻が映し出された。
櫻「どうですか、そちらの現状は?」
極:分身「今のとこ問題ない、それで何のようだ。」
櫻「美少年の契約者の顔を拝みにね。」
陸道が宝玉の前に顔を出す。
櫻「あら、予想以上の美少年、初めまして、現在、魔界で魔王を
やらせて頂いてる櫻です。」
陸「陸道 羅刹です。
影騎士の契約者に選んでいただいて感謝しています。
俺の闘争欲を満たしてくれてね。」
櫻「聞きしに勝る狂戦士みたいですね。」
極:分身「それで?、契約者の顔を見に連絡してきた訳ではないのだろ。」
櫻「ええ、私達が今回の案件での行動は非公式な隠密行動なのは判っていま
すね。」
極:分身「ああ、現状、情報は極力漏らさないようしている。
それでそちらの内通者の目星はついたのか?」
櫻「残念ながら、あと神界側にも気づかれないよう頼みます、どこにこの
事態を仕組んだ黒幕が潜んでいるか判りませんから。
ですから、くれぐれも神龍側の魔法少女に感ずかれないよう頼みます。」
陸「おい、魔法少女とか言うメルヘンな単語が聞こえたが?」
極:分身「ああ、神龍側が現在、人界に降りて瘴気の浄化を行っているんだが
あまりにも人界の瘴気濃度が濃すぎて降りてきた神竜は人界に降り
るまでに瘴気の影響で弱体化してしまって自分達では浄化できない
状態になってしまったんだ。」
陸「なるほど、自分達では浄化できないから契約者を媒介に、自らの力を行使
させ代わりに浄化させているというわけだな。
だが、何故、魔法少女なんだ?」
極:分身「さあな、だがあちらの契約者は、少女だしあながち間違ってないと
思うがね。
まあ、君の影騎士のシステムもその魔法少女のシステムを参考にし
ているんだがね。」
櫻「まあ、報告によれば陸道さん、あなたの通う学校にその契約者も通ってる
みたいですよ。」
陸「マジかよ…そんな身近にいるとは。」
極:分身「ああ、だが変化した姿しか、情報として上がってないから我も普段
の姿を特定できていないのだよ。」
櫻「まあ、今回連絡を入れた本題は、その特定が出来たという知らせです。 スフィアフォンに映像データ送っておきますので確認してください。
それでは私はこれで。」
櫻がそういうと通信が終了した。
極:分身「では、魔法少女の普段の姿を確認しておくか。」
陸「そうだな。」
極竜の分身体が宝玉を操作し送られてきた映像を映し出す。
その映し出された映像に、陸動が言葉を失った。
陸「…何で…何で、一宮さんなんだよっ!!」
極:分身「そうか、…見たことある気がしていたがこの子だったか。」
陸道の頭の中で、舞がストレッチを始めた理由や、舞の話していた試合の
ことが全てパズルのピースが組み合ったみたいに舞の秘密の謎が解けていった。
陸(心)「そういうことだったのか…だとしたら一宮さんは、」
陸「なあ、魔竜さんよ、一宮さんがやっているのは瘴気の浄化だけではない
んだろ。」
極:分身「…ああ、人界の瘴気は一部の淀んだ場所に溜まり、渦巻き魔界と
人界を繋ぐ門、闇門が生成されそれを犯罪に利用するため裏社会
の魔族が守っている。
だから瘴気を浄化するためには絶対的に闇門を守っている魔族と
戦闘になるだろう。」
陸「魔竜さんよ、一宮さんと契約している竜を殺せば一宮さんは、この争そい
から解放されるということだよな。」
極:分身「君は何を言ってっ!!」
極竜は、陸道の顔を見て背筋が悪寒が走った。
陸道の顔は、鬼の如く激昂して怒りに満ちていた。
極:分身「待てっ、早まるなっ、君が一宮さんのような善良な人間を巻き込んだ
ことにご立腹するのも判るっ、だが君も契約した時と同じで一宮さん
が自分の意志で決めたことなんだっ!!」
陸「馬鹿言うな、こんな殺し合いの舞台に一宮さんが好んで参戦するわけっ」
極:分身「今の人界は君が思っている以上に最悪な状況なんだ、死霊人間の発生
した原因もこの強烈な瘴気のためだ、放っておくと多くの罪も無い人間
が死ぬことになる…だから決めたのだろう…優しそうな子だからな。」
陸道は涙した。
そして涙を拭った陸道は覚悟を決めたような表情になった。
陸「なあ、一宮さんはまだ死霊人間と出くわしてはないのか?」
極:分身「死霊人間の存在に気づいているのは我々魔界の一部の者だけだ、
遭遇すらしていないはずだ。」
陸「そうか、魔竜さん、決めたよ一宮さんが遭遇する前に一刻も早く死霊人間
を狩りつくす、そして影から一宮さんを命に代えても俺が守り抜く。」
極:分身「君は両極端すぎてよく判らない奴だと思っていたが、君のその決意、
我は嫌いじゃない可能な限り手を貸してやる。」
陸「ああ、頼む。」
惚れた女を影から守り抜く決意を決めた陸道なのであった。