第十一話:闘争の王、緑焔の影騎士 前編
影騎士計画発足後、櫻は腐っているが仕事
の早い子であっという間に依り代契約に必要な書類と法整備を終わらせた。
極竜達も契約成立後の変化するためのアイテムで変心ベルトか陰陽道の札など
どれを採用するか多少、伝説級魔族同士のジェネレーションギァップで揉めた
りもしたが何とかその辺もまとまった。
そしていよいよ影騎士計画最初の分身を
人界に送る時が来た。
まるで人間界の空港のような場所に櫻をはじめ極竜、漸王、斬蛾、威火炉守、
牙王の伝説級魔族が魔界の正式な人界渡航用ゲートに集まっていた。
櫻「今回は、様子見も兼ねて極竜の分身を送ってみますが、…極竜、
準備できましたか?」
極竜は、分身を生み出すために力んでいた。
極「うぅーーーん、ふぅーーーんっ!!」
牙「おい、そのウンコする時みたいな力み方なんとかしろよ。」
極「仕方ないだろっ、こうでもしないと分身の出力が絞れないんだよっ。」
威「まさか、分身の出力を絞るのにここまで苦労する羽目なるとはね。」
斬「だが、人界に影響のないレベルにしないと人界に悪影響を与えか
ねないかねないからな避けては通れんよ。」
漸「そろそろ出そうですよ。」
漸王がそういうと力みまくった極竜の背中から弱体化したエレメントドラゴン
のような姿のミニ極竜が生み出される。
極「やっと、出来た、もっと効率的に出力絞った分身作る方法考えたほうが
よさそうだ。」
櫻「それで、分身のとのリンクはどうですか?」
極竜は分身体の視覚情報などが自身に流れているか確認するが異常は
ない様だった。
漸「それで、今回の分身は遠隔操作型と自立行動型のどちらにしたんですか?」
極「情報の共有だけであとは完全自立だ、問題が起きてもこちらのほうが
臨機応変に対応できるだろう。」
極竜の分身体が口を開く。
極:分身「分身体だと言っても知識や思想は本体と変わりない、うまく
立ち回るさ。」
櫻「あっ、そうだこれを渡しておかないと。」
そういうと櫻は極竜の分身体に宝玉を渡した。
櫻「その中に影騎士契約の書類が入っています。」
極:分身「判った、それでは行ってくる。」
そういうと極竜の分身体は紫色の光が射す人界渡航用ゲートに入っていった。
そして極竜の分身体は紫色の光の中を飛んで行き人界の山の洞窟に祭られた
祠の扉が開き極竜の分身体が紫の光と共に飛び出した。
極:分身「着いたか。」
洞窟を出て朝日を浴びながら山の中腹から景色を見渡し宝玉で現在位置
を確認する。
極:分身「稲穂丘町と言うのか、自然に囲まれた地方都市といった感じだが
人口が大都市に比べれば少ないが適合者がしかも少年で見つかる
といいんだが。」
極竜は飛び立った、そして瘴気の濃い都心部の上空に来た。
極:分身「まず、この体を本体と同じ状態に戻すか。」
そういうと極竜は大気中の瘴気を吸収し神通力に変換し、ミニ極竜は本体と
同じサイズと見た目になった。
極:分身「伝説級の力とまではいかないが上級魔族の上の上程度の力ぐらいは
確保できたか、では早速、適合者がいるか見てみるか。」
極竜の分身体は、都心部の人間達を魔眼で見てみるが
極:分身「ダメか、まあそう簡単に見つからないか大体、瘴気の変換に耐えうると
いうことは善良でありながら強大な悪を心に宿しそれを御しているとい
うこと。
はっきり言って今風に言うと無理ゲーというやつだな。
まあ、少年は無理にしても根気よく探すしかないな。
だが、櫻の要望のことも考えて中学校あたりを探してみるか。」
極竜の分身体は、中学校をしらみつぶしに探すがやはり見つからなかった。
極:分身「やはり見つからないか、この辺の中学校で行ってないのはあと一校
だけか、期待薄だが行ってみるか。」
そう言うと極竜の分身体は残りの一校に向かった。
そこは舞の通う中学校だった。
早速、適合者を探そうとした極竜の分身体の目に中学校を上空から眺める魔族が
いるいることに気づいた。
極:分身「何故、魔族が、しかも本体じゃないか、…まさかこの学校にキリシエル
の転生体がいてそれを狙っているのか、阻止せねば。」
その頃、剛雷は中学校の上空から舞のことを見守っていた。
剛「いやー、今日も平和そのものだな警護の必要あるのか…まあ用心に越したこと
はないか。」
?「そこの、魔族何故、本体で人界にいるっ!!」
その声に剛雷が振り向き驚愕する。
剛「あっ、あなた様は、極竜様っ、何故人界にっ!!」
極:分身「それより、質問に答えろ何故、人界にいる。」
剛「はっ、俺、私は非正規神竜所属として現在、魔法少女の護衛をして
おりますっ、こちらが証になります。」
そういうと剛雷は宝玉を取り出し、契約書類のを映し出す。
極:分身(心)「ここが、あの魔法少女が通う中学校だったのか、世間って
狭いものだな。」
極:分身「いや、悪かった、てっきり人間の暗殺を請け負った魔族かと
思ってな。」
剛「仕方ありませんよ、だいぶおかしなことになっていますから。
しかし極竜様が分身体といえ自ら人界に降りてこられるとは。」
極:分身「あー、このことは内密に頼む。」
剛「はっ、はい、判りました。」
そんなやり取りをしていると極竜の分身体が中学校校舎から感じ取った。
極:分身(心)「なんだっ、この波動はっ!!善良な魂の波動の中に微量であるが
濃厚な悪の波動がっ、何者だこんな狂った魂の波動の持ち主はっ!!」
剛「どうかしましたか?」
極:分身(心)「あまりにも微量だから気づいてないのか。」
極:分身「いや、なんでもない。」
極:分身(心)「この波動の特徴は覚えたから人物の特定は出来る。
だがあとは素質があるかどうかと少年かというこ
とだな放課後仕掛けてみるか。」
放課後になり生徒達が部活や下校するころ、極竜は意識を集中させて待っていた。
そして遂にお目当ての人物が校門にやってきた。
その、目当ての少年は、なんと舞の想い人の陸道 羅刹だった。
極:分身「よし、少年で美形、まず櫻のどうでもいい条件はクリアだ、そして
さっきは波動の感知だけだったが魂の方は。」
極竜の分身体は魔眼で陸道の魂を見る。
すると透き通った青色の波動にどす黒い波動が包み込まれている
構造になっていた。
極:分身「なるほど、強力な善の波動で、悪の波動を包み込み制御しているのか
、これなら瘴気の変換にも耐えれるはずだ。
残りはっ!!」
極竜の分身体は校門を出たところの道を歩く陸道の前に降り立ってみるが陸道は
何事もないかのように極竜の分身体をすり抜け歩いていった。
極:分身「駄目か見えてないか、だがまだ手はある。」
極竜の分身体は陸道の精神から読み取った陸道の帰宅ルートで先回りして人避けの
結界を張りさらに道に魔法陣のようなものを仕込んだ。
しばらくすると陸道が人避けの結界の方に歩いてきたそして結界内に入り道に仕掛
けられた魔法陣を踏んだ次の瞬間、魔法陣が起動し陸道の足元から風が吹き上がっ
た。
極:分身(心)「よし、これで潜在的な素質があるなら今ので覚醒したはずだ。
あとは確かめてみるだけだ。」
極竜の分身体は陸道の前に舞い降りる、だが重要なことを忘れていたことに
思い出した。
極竜:分身(心)「しまった、自分の姿を人間が見た場合、怖がられるか、
気絶される可能性があること忘れてた。
だが、もう彼の前に降り立ったからもう後戻りは無理だ。
こうなったらヤケクソだっ!!」
極竜:分身「少年よ我の姿が見えるか?」
陸「ああ、見えてるよ。」
極竜:分身「我の姿を見て幻覚と思うか、恐怖するのが普通の反応だと思う
のだが?」
陸「俺に幻覚を見るような病気の兆候などなかったから幻覚の可能性は低い、
また恐怖する必要もない殺気を感じないからな。」
極竜:分身(心)「冷静に状況を把握して今起きていることが現実と判断するか、
自分としては助かるがなんか面白みがないな。」
陸「それで、俺に何か用か?」
極竜:分身「話が早くて助かるがもう少し年相応の反応の方が嬉しいんだがね。」
陸「悪いね、精神が早熟なものでね。」
極竜:分身「まあいい、では本題だ、我と契約して影騎士となり死霊人間の討伐
とある人物の救出に手を貸してもらいたい。」
陸「なるほど、それで死霊人間とは何だ。」
極竜:分身「簡単に説明すると人間の魂を取り付いた無数の死霊が喰らい更に
死霊同士で共食いして最後に残った死霊が魂を喰われた人間の
肉体を得た存在のことを言う。」
陸「一種の蟲毒みたいなものか。」
極竜:分身「理解が早いな君は、しかも奴らは人間社会に潜み、欲望のままに動き
この世界を破滅させてしまう。
しかも、恐ろしく強くてこの間、討伐に向かった上級魔族は両腕を
喰いちぎられ重傷だ。
我と契約すれば戦いの毎日になり死ぬ可能性もある。
こちらも無理にとは言わないあくまで自分の意志で…」
陸「契約しよう。」
極竜:分身「契約してくれるのはありがたいが話を聞いてたか?、死ぬ
可能性もあるんだぞっ!!」
陸「かまわない、どうせ人はいずれ死ぬ、それに毎日が闘争なんていわれ
たら血が滾って仕方ない。」
陸道は凶悪な笑みを湛える。
極竜:分身(心)「なるほど、狂気じみた闘争が彼のどす黒い波動の正体か、
このような物を心に宿していたら連続殺人鬼なって
もおかしくないのだが彼の善良な部分はそれすら押
しとどめている。
これほどの逸材は存在しないだろう。」
極竜:分身「後戻りできなくなるがいいんだな?」
陸「ああ、俺は退屈せずにすむし、俺のような人でなしが戦って死霊人間
の魔の手から善良な者を守れるならそれに越したことはない。」
極竜:分身(心)「善良なのか、ヤバイ奴なのか判断に困る子だなー。」
極竜:分身「それでは早速契約に…」
陸「悪いが、ケジメをつけないといけないことがあるからその後でいいか?」
極竜:分身「かまわないが、一体何のケジメだ?」
陸「曲がりなりにも俺の衝動を満たしてくれてた場所にな。」
そう言って極竜の分身体と陸道はいったん別れた。
そして午前0時、陸道は稲穂丘町の港近くの工場地帯の倉庫群にいた。