第百一話:存在強化
重蔵の残虐ファイトが終わり、倉庫を後にした、重蔵達は、
変化した状態で深夜の高層ビル屋上で話をしていた。
響「ようやく実名で会話出来ますね。」
陸道「ああ、おつかれさん。」
重蔵「そういえば、さっきの東山さんから受け取ってた
木箱は何なんだ?
かなり重そうだったが。」
陸道「ああ、ちょうど説明しようと思ってたんだ。」
陸道は呪術を起動させると、空中から木箱が現れ足元に
ゆっくりと下りる。
そして木箱の蓋を開けると、緩衝材に埋もれている
金属のような物が見えていた。
重蔵と響が木箱に近寄るとギョッとした表情になる。
重蔵「おい、こんなもの入手してどうする気だっ!!」
響「完全に銃刀法違反ですよこれ。」
木箱の中には、ロケットランチャーやガトリングガンなどの
銃火器や古い日本刀や槍などの近接戦用の武器が入っていた。
陸道「まあな、だがこれも死霊人間とやり合うためだ
大目にみろよ。」
響「えっ、ですが死霊人間にはそんな銃火器では通用
しないはずじゃ?」
陸道「普通に使えばそうだ、だがこれはそういう用途で
仕入れたわけじゃないんだ。
なあ、死霊人間が何故上級魔族とかよりも強いのか
判るか?」
響「神通力の生成量ですか?」
陸道「まあ、それもあるけど俺はそこはあまり重要だとは
思わない。」
すると、重蔵が気づいた。
重蔵「そうか、肉体があるのが影響しているのかっ!!」
陸道「ご名答だ、奴らには肉体がある、それが非実体になった時に
恐らく存在としての強度に影響していると思われる。
だから肉体の無い魔族では存在として死霊人間より弱く
なってしまうから不利なんだ。
だが、俺たちは死霊人間と同じ条件に近いからなんとか対抗が
出来るってわけだ。」
重蔵「だから奴らは実際の銃火器を取りこんで強化していたと
いうわけか。」
響「なるほど、だから我々も取り込んで存在の強度を上げようと
いうわけですか。」
陸道「そういうことだ、こっちの重火器は響の分だ、刀とかは俺の分。」
重蔵は首を傾げる、陸道に聞く
重蔵「あれ?俺の分…なくない?」
陸道は困った表情になる。
陸道「俺と響の強化はこれでいいんだが…お前の場合、強化に必要なのは
昆虫とか蟲だから…というかぶっちゃけ、生物を仕入れるルートが
なかったんだよ。」
重蔵「東山さんはそっちのルートには精通してないのか。」
陸道「とりあえず南米の方やアフリカ大陸辺りに行けば強化材料
そろうだろうから、それに重蔵は昆虫とか詳しいから自分で
吟味した方がいいだろ。」
重蔵「それもそうか、影騎士に変化すればすぐだしな。」
響は自身の身体に銃火器を呪文に変換して、吸収し、陸道も剣を呼び出し、
呼び出した剣に呪文に変換した日本刀を同化させていく。
一通りの作業が終わり、同化させて変化があるかどうかを調べてみる。
響「うーん、何がどう変わったかイマイチわかりませんね。」
陸道「死霊人間とやり合って見るまで検証のしようが無いな。」
響「それじゃ今日はこれでお開きですか?」
陸道「ああ、それじゃお疲れ。」
響は飛行型に変化して飛び立ち、重蔵も飛び立とうとした時だった。
陸道「重蔵っ!!お前には話がある。」
重蔵は陸道のほうを振り返る。
重蔵「なんだ、話って?」
陸道「今回、お前は新たな力を手に入れた…その力で何をする気だ?」
重蔵「何って、それは死霊人間に対抗するため…」
陸道「俺を騙せると思ってるのか?
確かにお前の戦い方は普通の空手や柔道だ、だが対武器に
初めてなのに冷静に対応し、多人数相手でも見事に捌いた
…死霊人間に対抗するために訓練したとか言って誤魔化そ
うとしても無駄だ、数ヶ月で習得出来る物じゃない、
別の目的の為に鍛錬していたと考えるのが妥当だろ。」
重蔵「流石だな、陸道…だが俺に別の目的があったとしてお前に
何の関係がある?」
陸道「その力を会得させた責任がある。
もし、今回会得した力で非道なことをされるのは俺の主義に
反する。
今回、あくまで死霊人間との戦闘で生存率を高めるため、
死霊人間の犠牲を食い止めるために会得させたんだ、
その力を悪用されては困るんだよ。」
重蔵(心)「くっ、どうする…復讐に利用すると言ったら…
陸道はどう出るっ、この男に誤魔化しは通用
しないっ、だったらっ!!」
重蔵「はぁ、判った…嘘偽りなく全てを話す。」
こうして重蔵は、陸道に父の復讐について話した。
陸道「そういうことか、…まあ、そういうことならいいだろう。」
重蔵「いいのか?」
陸道「ああ、お前の親父さんの失踪に関わってる連中を野放しに
しておくのはマズイしな、だがこれだけは守れ。」
重蔵「何だ?」
陸道「決して、殺すんじゃないぞ。」
重蔵「…判った…。」
陸道「お前が八つ裂きにしたい気持ちは判る、…だがそんな
屑を殺してその手を血に染めるな。
だがそれ以外のことは俺は何も言わない、好きにやれ。」
重蔵「ああ、約束は守る。あとこの話口外しないでくれよ。」
陸道「判ってるよ。それじゃお疲れ。」
陸道も話を終えて、その場を後にした。
残された重蔵は笑っていた。
重蔵(心)「ようやくだ、ようやく準備が整った、陸道よ、
ありがとよっ、殺す以外は認めてくれて。
人間て奴は殺されるより、生かして、いたぶった
ほうが苦しむからなっ!!
待ってろよ屑共今のうちにせいぜい人生を謳歌しとけっ!!」
復讐の喜びに顔を歪ませ重蔵は漆黒の闇夜に立ち尽くすのだった。