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第九十八話:重蔵の刺激的な真夏の夜 中編

重蔵が女子二人を腕枕して会話を楽しんでいた時だった、

テーブルの上に置かれた重蔵のスマホが鳴り始める。


腕枕していた女子二人をベッドに残し、重蔵が

スマホを手に取り、確認すると陸道からだった。


重蔵は電話に出る。


重蔵「おう、陸道っ!!夏休みだから遊びの誘いか?」


陸道「残念ながらそっちのお誘いではないよ。

   お前の戦闘能力向上の準備が出来た。」


柔らかな表情だった重蔵の表情が真剣な表情になる。


重蔵「そうか…分かった、それでいつだ?」


陸道「今夜の十一時だ、あとスマホとか本人を

   特定出来る物は持ってくるな、あと

   現地では偽名を使うからそのつもりで。」


重蔵「了解だ、それじゃまた今夜。」



そして陸道との通話を終えた陸道はベッドにいる

女子二人の方を向き、手を合わせ謝る。


重蔵「ゴメンっ!!急に外せない用事が入っちゃって

   俺行かないと行けなくなったんだ。」


女子1「いいよ、私達なら気にしなくていいから。」


女子2「そうそう。」


重蔵「悪いね、この埋め合わせは必ずするから。」



重蔵は服を着て、部屋を後にした。



そして、残された女子二人は顔を見合わせる。



女子1「ねえ、さっきの重蔵君の顔見た?」


女子2「うん、凄く鋭い表情してたね。」


女子1「普段は、おちゃらけてみせてるけど、時々、

    なにか思いつめた鋭い表情みせるよね。

    何かあったのかな…でも、そんなこと

    私達に話してくれないし…」


女子2「でも、そんなミステリアスなとこがまた

    いいよねぇー。」


女子1「だよねぇー。」




そして、夜十一時、陸道は稲穂丘町の港近くの工場地帯の

倉庫群の倉庫の外壁にもたれ掛かって、響と共に重蔵を

待っていた。


響「しかし今回は随分と物騒そうですね、身分の分かる

  物を持たずに、偽名も用意とは。」


陸道「まあ、実際俺がついてるからそこまでの心配は

   いらないが、まあ念のためだ。」


響「今日は私はあくまで見学と聞いてますが…

  重蔵に何させる気ですか?」


陸道「俺が見た感じ、アイツは体は既に出来上がっている、

   だがそれはあくまでスポーツマンとしてだ。

   ガチの殺し合いをするにはスポーツマンのままでは

   いずれ命を落とすことになるだろう。

   だから今回はスポーツマンから次の段階に行くための

   試練を用意したのさ。」


響と陸道が話している所に、重蔵が到着した。


重蔵「待たせたな、というかこういう倉庫とかにこの時間帯に

   集合って、ヤクザ主催の残虐ファイトだろ?」


陸道「流石、修羅の国在住の奴には分かるか。」


響「どういうコネクションなんですかあなたは。」


陸道「確かに、ヤクザ主催の残虐ファイトだ、だがここのは

   本当にルールなんてない、ガチの戦闘だ、しかも海外

   からシリアルキラーとかヤバイ連中も招いたりして

   上質な暴力を体感出来るようになっている。」


重蔵「こりゃ、鍛える段階で死ぬ可能性大だな。」


陸道「どうする?やめるか?」


重蔵は不敵に笑う。


重蔵「まさかっ!!やるに決まってるだろ、それにこの程度で

   終わるならその程度だったてことだ。」


陸道「そう言ってのけるか、それじゃ行こう、甘美な闘争の世界へ。」


陸道、響、重蔵は歩き出す、そして光が漏れている倉庫の

扉の前に黒服の厳つい男が立っている。


陸道は黒服の男二人の前に歩み寄る。


二人の黒服の男は陸道の姿を確認し、深々と頭を下げる。


黒服1「お待ちしておりました、闘神様。」


響:重蔵(心)「闘神って…」


陸道「ああ、今日は世話になる。」


黒服2「ではこちらへどうぞ。」


陸道の後を響と重蔵がついて行く、倉庫の中では中央に金網で

覆われたリングがあり、素手の殴り合いが行われて、顎めがけ

てフックを喰らった選手の歯が砕け、響の目の前を飛んで壁に

叩きつけられる。


響(心)「うわー、超、野蛮っ!!、…こんなとこで闘神とか

     呼ばれる陸道さんって…ん?もし私も肉体の鍛錬

     が済んだらここで戦わないといけないんじゃ…最悪だ。」


重蔵(心)「流石だな、普通は不良少年とかを集めて戦わせる

      しょぼいもんだが戦ってる奴見て分かる、戦い方に

      無駄がない、相当の戦闘のプロだ。

      こりゃ、生きて帰れるかな俺。」


陸道達は倉庫の階段を登って部屋の前に着く、黒服の男がドアを

ノックする。


黒服1「お連れしました。」


部屋の中から入れ、と声が聞こえ、ドアを開く、そこにはこの

残虐ファイトの主催者、東山 昇がソファーに腰掛け、

陸道に声をかける。


東山「おう、九上院っ!!待ってたぞ。」


陸道「今回は世話になる。」


東山「それで?今回戦うのはそっちのやつか?」


東山が重蔵を見る。


重蔵「久山と言います、今日はよろしくお願いします。」


東山「そう硬くなるなって、気楽にしな、で、もう一人は観戦か。」


響「初めまして奈川と言います。」


東山「でだ、まあここの試合のルールは九上院に聞いただろうが

   ほぼ無い、相手を戦闘不能にするかギブアップさせるか

   それだけが勝敗を決める、単純だろ?」


重蔵「いいね、本当の意味での実戦が出来る。」


東山「まあ、本当にやばくなったら試合を止めるから心配するな。

   そろそろ時間だ、おい控え室に案内してやれ。」


黒服1「かしこまりました、では久山様こちらへ。」



重蔵は黒服二人に案内され部屋を出る。



そして部屋に残った東山と響、陸道は東山の対面のソファーに腰掛けた。



そして、東山は冷蔵庫から陸道にイチゴオレ、響にジンジャーエールを渡す。



東山「しかし、本当にいいのか?お前に言われた通り、奴を呼んだが

   …久山と対戦させたら久山…死ぬぞ?」


響「死ぬって…一体どんな相手を用意したんですか?」


陸道「それは後で教えるよ、それより始まるぞ。」


部屋の窓から下の金網で囲まれたリングがちょうど見え、重蔵が歩いてきて

金網をよじ登りリングに降りる。


そして、重蔵の対戦相手のぼさぼさの長髪の男がリングに降り立った。


対戦相手は長い木刀と短い木刀を手にしている。


重蔵(心)「あー、俺もルール無用なら用意しとけばよかったかなー」


ぼさぼさの頭髪の男が右手に長い木刀を持ち、背中に構え、左手の短い

木刀を手首を捻った状態で肘を曲げ重蔵に向けて突き出す形で構えた。


そんな様子を部屋から陸道達は眺めていた。


陸道「ほう、あの左手の木刀の握り方、フェンシングのやり方だな。」


東山「どうだ面白いだろ?岐部 葦影、十七歳、左手でフェンシングの

   鋭い突きを放ち、それをかいくぐった奴は背中に構えた木刀で

   迎撃する、今のとこ戦績も十戦中、八勝、二引き分けだ。」


響「何故、フェンシングのレイピアを使わないで木刀で?」


東山「まあ、前までそれでやってたんだが折られることがあってな

   それで木刀使うようになったのさちなみに引き分けの試合の

   一つもレイピアを砕かれたことが要因だ。」


陸道「もう一つ引き分けの試合は?」


東山「槍相手との試合だ、だが素手相手なら全勝してるぞ、

   どうするどっちに賭ける?」


響「では岐部に五千で。」


陸道「久山に一万だ。」


東山「久山に賭ける根拠はなんだ?」


陸道「普通は始めてだと武器相手だと萎縮するんだが、アイツ

   そんな様子がないからな。」



陸道達が眺めている中、遂に試合が始まった。



岐部は、重蔵に向って左手の木刀を鋭く放つ、重蔵は後方に

下がり紙一重で避ける。


重蔵(心)「なるほど、結構速いな、でもまあ問題ないか。」


岐部は突きを放った腕を引き寄せるが、その引き寄せる動作と

同時に重蔵が懐に入り込もうと素早く接近する。


岐部は後方に跳びながら背中に構えた木刀を遠心力を利用し

重蔵の肩めがけて斜め上から振り下ろされる。


だが、木刀は重蔵に届かなかった。


なぜなら重蔵は振り下ろされた木刀を握っている手を拳で打ち抜き、

岐部の手からこぼれた木刀は金網にぶつかり落ちる。


岐部の表情が苦悶に歪む。


重蔵「確かにアンタの突きや切り込みは速い、だがそれを持つ

   手や肩を見てれば十分対応出来る。」



その光景を見ていた陸道は笑う。



陸道「へぇー、よく理解してるじゃないか、いくら武器を持とうが

   振るう切っ先自体の速度が速くて見えなくてもそれを持った

   手や肩の動きは切っ先ほど速くないからそっちを見てれば対応

   出来る。」


響「そういうものなんですか?」


陸道「まあ、今回の相手だとそれをやろうとしても難しいだろうね、

   久山の実力があってこそだな。」


岐部は左手の木刀で連続突きを放つが既に重蔵は肩の動きなどで

突きの動きを予測出来ているため突きを放つ左手を脇で捕まえ、

動けなくなった岐部の鳩尾に重蔵の捻りの加わった拳がめり込んだ。


岐部はその場に崩れ去り試合が終了した。


陸道「なあ、東山さん、久山に第二、第三、第四試合の試合相手を

   同時にぶつけてくれないか?」


響「それは流石に無茶じゃ…」


東山「どうなっても知らないからなっ!!」



重蔵は三対一という不利な状況での試合が始まった。


響や東山は無茶すぎると心配したが、結果は重蔵の足元に三人が

崩れ去るという大番狂わせな結果となった。


東山「おいっ…マジかよっ!!三対一で勝つなんて九上院、

   お前以来だぞっ!!しかもアイツ等かなりのやり手だって言うのに

   …久々に滾る試合内容になってきたぞまったくよぉー!!」


響(心)「凄いっ、試合開始瞬間に一番近い位置にいた相手の顎を

     上段蹴りでしとめ、そのしとめ対戦相手を盾に木刀持ちの

     懐に突撃、懐にもぐりこんでからの木刀を持つ手を掴み、そ

     のまま背負い投げを決める。


     だが、背負い投げで無防備に状態になったところにもう一人が

     背後からタックルを仕掛けに突っ込んで来たけどそれも想定

     していたかのように投げると同時に奪い取った木刀を相手に

     背を向けたたまま突き出し鳩尾に入り失神させた。

     一撃も喰らうことなく三人を倒してしまうなんて…変化なし

     でここまでやるなんて信じられないっ!!」


陸道(心)「これで確信した、重蔵は確かに柔道や空手といった物を

      スポーツの環境で身に着けたが、本来の目的はスポーツ

      としての目的じゃないっ!!しかもすべて鳩尾などの

      急所を的確に狙い、背後からの奇襲にまで対応しているっ!!

      重蔵っ、てめぇ俺には影騎士での生存確率を上げるためとか

      言ったが別の目的があるなっ!!」


陸道「さて、東山さん彼のスタンバイをしてくれないか?」


響「彼?、さっき話してた重蔵が危険って相手ですよね、そんなに

  強い相手なんですか。」


東山「強いなんてもんじゃないよ、恵まれた肉体に戦闘センス、ここにいる

   連中じゃあ九上院しか勝てない、セネガル最強の男、ブトゥだ。」



黒服が控え室にブトゥを呼びに入る。


そこには控え室でウォーミングアップして体から湯気が立ち上る、黒光りした

屈強な肉体のブトゥが

闘志むき出しの鋭い眼光を湛え立っていた。







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