第九十七話:重蔵の刺激的な真夏の夜 前編
外では夏の日差しでアスファルトがお好み焼きを焼く鉄板のような
熱気を放っている時、武道場の中では中体連の柔道の地区予選が
行われ、学生達の闘志で熱せられていた。
そんな柔道の地区予選に何故か胴衣を着た重蔵の姿があった。
そんな重蔵に同じ中学の柔道部の主将が話しかける。
主将「もうすぐ俺達の番だ、今日は頼むぞ重蔵っ!!」
重蔵「なあ、何で俺が大将なんだよ、あんた柔道部の主将だろっ!!」
主将「ま、まあ俺より重蔵のほうが強いんだからいいじゃないか、
なっ!!」
重蔵「まあいい、普段、新聞部の護身術の稽古ために柔道場使わせて
もらってるからな、それに見合う働きはするよ。」
重蔵とこの柔道部は順調に勝ち進み、決勝戦まで進んだがその間、
重蔵は軽く消化試合を済ませるに活躍をとどめていた。
だが決勝戦は、相手も強く、勝敗の行方は大将戦にもつれ込んだ。
そして大将の重蔵と相手のガッチリした筋骨隆々の丸刈りの
大将との試合が始まった。
だが、相手の大将は重蔵に困惑していた。
なぜなら重蔵は構えることなくただ立っているだけだった。
相手の大将は頭の中で悩むが攻めなければ始まらないと覚悟を決め
重蔵の胴衣の襟を掴みに行くが重蔵は何も反応せず重蔵のを掴んだ。
その光景を見ていた重蔵のとこの柔道部主将は不敵に笑う。
主将「あーあ、罠にかかったな。」
重蔵は掴まれた瞬間、体を捻り相手の掴んだ腕を身体に巻き込み、
そのまま相手の掴んだ腕を持って一本背負いの体勢に持っていく。
相手の大将も引き戻そうとするが、重蔵は瞬時に体の力抜き重心を
定まらないようにして防ぎ、そして力を抜いたことを利用して
自身の体が前に倒れる力でそのまま投げ、相手は畳みに叩きつけられた。
審判が一本と叫び試合が終了した。
重蔵は仰向けになっている対戦相手に声をかけた。
重蔵「どうも最近は力で何とかしようとする柔道が主流みたいだが、
本当に肉体の重心の制御技術を習得すれば力技の柔道など対処
出来る。
技術を極めずに筋力に頼ったのが君の敗因だ。」
試合が終了し、重蔵のとこの中学の柔道部員達が駆け寄ってくる。
柔道部員1「いや、一瞬だったすよ、流石、重蔵先輩っ、
マジぱねぇーすよっ!!」
柔道部員2「アイツが怪我して出れなくなった時は終わったと
思ったけど重蔵さんが快諾してくれて良かったです。」
主将「さて、優勝出来たことだし祝杯でもあげに行くかっ!!」
柔道部員全員「賛成ーっ!!」
だが重蔵は浮かない顔をした。
重蔵「ああ、ゴメン…俺も行きたいんだが…女を待たせててな、
すぐに行かないといけないんだよ。」
主将「…試合のあとに、男女の試合かよ…流石、歩くち○ぽと
言われるだけあるな、いいよ行ってきな。」
重蔵「じゃ、お先に。」
こうして重蔵は武道場を後にした。
その頃、重蔵の自宅の台所で重蔵の母、綾と斬蛾の分身体が
夕飯のカレーの準備をしていた。
綾「本当に助かるよ、しかし朝起きて朝食の準備しようと
台所に行ったら朝食が出来てた時は驚いた。」
斬蛾:分身「まあ、こっちも隠密行動がメインであまり外にも
出れないから、まあ、ただの暇つぶしだよ。」
綾「しかし、料理作れるとはね、魔界の奴はみんなそうなのか?」
斬蛾:分身「いや、俺も珍しい部類だと思うよ、それに妻が病弱
だったから俺が基本そういうのはやってたからな。」
綾「えっ、結婚してたのっ!!」
斬蛾:分身「まあね、まあ妻には先立たれちまったがね。
まあ、もう結構な年月が経つけどやっぱ心のどこか
にまだ妻がいるんだよな…だからどうも再婚って
気分にもなれなくてね。」
綾「そうか…分かるよ、その気持ち。」
少しその場を静寂が包む。
斬蛾:分身「しかし、重蔵も欠員が出た柔道部の助っ人とは、
優しい奴だ、正直、復讐にとりつかれている
状態だと心に余裕がないのが普通なんだが。」
綾「まあ、昔から優しいんだよ、あいつは、よく怪我した鳥とか
拾ってきて手当てしたりとか、旦那が失踪してからは変に
私に負担をかけないようにニュースサイトが軌道に乗る前は
新聞配達のバイト始めて稼いだお金を生活費にってな。」
斬蛾:分身「いい子に育ったね。」
綾「そう想いたいが、性欲に支配されたとてつもない馬鹿息子
だってことは誤魔化せないっ!!
なあ、あんたも息子とかいるのか?」
斬蛾:分身「まあ、いるけど。」
綾「年頃の息子ってやっぱ重蔵みたいな感じなの?」
斬蛾:分身「うーん、個人差はあるけど、重蔵はぁ、その…
異常かな。」
綾「どこで育て方間違えたかなぁー。」
綾がため息をつく。
そんな綾を眺めながめている斬蛾の分身体の頭に重蔵の視覚情報が
流れてくる。
しかも、女子二人と柔道着を着た重蔵が淫らな行為を
ヤリまくっている最中のもので斬蛾は苦笑いしながら。
斬蛾:分身「綾さんは立派だ、一人でここまで育てたんだから、普通
だったらグレてたちの悪い不良になってる可能性が高い
んだから子育て成功だってっ!!」
と、綾をフォローするのだった。
所変わって、陸道は自室でスマホで話していた。
陸道「悪いな、俺の頼みを聞いてもらって、では頼むよ。」
そう言って通話を終了した。
通話を終了した陸道に極竜の分身体が話し掛ける。
極竜:分身「随分と物騒なとこに掛けてたみたいだが。」
陸道「ああ、重蔵が鍛えて欲しいって言ってただろ?
だからお膳立てしてたところさ。」
極竜:分身「何するつもりだ?」
陸道は不敵な笑みを浮かべる。
陸道「大したことはないさ、ただ少し生死の淵をさまよって
もらうだけさ。」
極竜:分身(心)「うわー、絶対、やばいこと考えてるな、これ、
死霊人間との戦いで命落とす可能性あるの
ではっ!!」
そんなこととも知らずに重蔵は、両手で女子二人を腕枕し、会話を
楽しむのだった。