最凶『スキル』の発現
初投稿です。
生暖かい目で見守ってください。
20××年、ゲートと呼ばれる、魔界との出入り口が世界各地で発見され、魔力が地球にも充満した。だが、それと共に魔獣や魔女、吸血鬼等の魔族達も地球になだれ込み、世界は一時大パニックに陥った。銃器やミサイルを魔族に撃ち込んだが、奴らの魔法には敵わず、どうすることも出来ないと思われた。
が、魔界で種族間の戦争が激化したため、魔族の攻撃の手はほぼゼロとなった。しかし、魔界からの侵入はほぼゼロとはいっても、ゼロではなく、死傷者も出ていた。
そんな中、魔力を行使出来る極少数の人間――俗に言う魔術師――を育成するため、最初にゲートが発見されたイギリスで、クロノアール魔術学園が開校された。
学園は、魔獣達から人類を守るべく、ゲートが開かれた国すべてに支部を開設した。魔術は、炎、氷、風、雷、闇、光の六系統に分類され、その他に特殊魔法等がある。そのため魔術の種類は無限であると言える。たとえば、初期の天才魔術師ヘルネア・マルス・シャザは、生涯八千もの魔術を創造し、行使できたといわれている。
学園が開校されてから約20年後、魔術師の一部に、『スキル』と呼ばれる魔術ではない特殊能力が発現した。『スキル』は、魔術で出来ない事柄を可能にし、人類に魔族の恐怖から逃れる希望を与えた。しかし、魔術師ですら絶対数が少ないにもかかわらず、『スキル』を持つものはさらにその少数であったため、魔族の脅威から逃れるのはまだ先の話であった。
――「えー、そのため、俺たちクロノアール魔術学園日本支部の教師一同は、君たちが未来この世界を守れるよう、魔術をしっかりと教え込んでいくからな」
此処は、クロノアール魔術学園日本支部。魔術の素養が少しでもあるヤツはほぼ強制的に入学させられる。国――いや、世界のお偉いさんは必死なのだ。自己紹介が遅れたが、僕は升田久遠。この魔術学園に今年から通うことになった、特に特徴があるわけでもないちょっと根暗な男子高校生の15歳だ。
僕たちは中学2年生後半に魔術の素養があるかどうか検査を受け、僕はその検査に引っかかってしまった。ごく普通の高校に入って普通の高校生活を送るつもりだったのに……はぁ。
いい点をあげるとすれば、小学校からの大親友、花池成も一緒にこの学園に入学してきたことだ。クラスは違うけど。
「これから、どの系統の魔術が得意かっていう適性検査を行う。出席番号順で隣の実習室に来ること。じゃあ一番から」
先生はそう言うと教室から出て行った。出席番号一番のヤツが席を立ち、おっかなびっくりドアから出て行く。まぁ、僕の順番はまだまだ後だし、ぼーっとしてるかな、と思っていると、ヒソヒソ、ヒソヒソとしゃべっている奴らがいる。
「あれ、日本最強魔術師の家系の、青海家の人、だよね」
「あっ!うちもおもったぁ~あの灰色の髪ってそうだよね」
「話しかけてこようよ~」
姦しいな、と思い彼女らの見ている方向に目を向ける。するとそこには、確かに灰髪の、ほかの奴らとは違うオーラを放ってるヤツがいた。かなり可愛い。――興味ないからどうでもいいケド。うん。見とれてたりなんかしてない。してないっていったらしてないんだよ!
いつの間にか、5番目くらいまで終わっていて、「おまえ何が得意だって?俺雷系だったは」「マジ?俺炎!主人公くね?」などと話してる阿呆どもの会話が聞こえてくる。いやないでしょって言葉
は飲み込んだ。炎=主人公ってwwww
そんなこんなで僕の番が来た。はぁ……くっそ面倒い、と思いつつも実習室と言っていた部屋に入る。
「失礼します」
「ん、おう、升田だな。ちょい待ちな」先生はそう言うと何かよく分からない液体をぐぃっと飲み、右目に魔方陣を出し
「全視慧眼!」
「はぇ?」
なんだか気持ち悪い――自分の全てを見透かされているような――気分になり――
「はぁ!?」
「先生どうかしたんですか?」
「いや、そんな、はぁ?」
なんなんだまったく。僕がそんなにももの凄い存在だったり?いや、絶対無いな。僕は全て平均以下だし……
「おまえは、その、魔力はクラス、いや学園でもナンバーワンレベルだが、魔術は一つも習得できない」
「―――――――――はああああああああああああああああぁぁぁぁ!??」
魔術使えないとかマジでありえねえだろ!!此処魔術学園だろ!?ということで退学にさせて!!
「あぁ、すまん。これを先に言うべきだったな。、お前には『スキル』が発現している、それもかなりやばいの、だ」
「やばい、『スキル』?」
「あぁ。【果て無き魔導】って名前の、まぁ一言で言えば〈食らった魔術を使えるようになる。その食らった魔術でダメージは受けない〉って感じかな」
「その『スキル』の名前って……先生が付けたの?」
驚きすぎてため口になってしまった。
「あぁ。もちろん」も、もちろんて……そんな厨二くさい名前を俺の『スキル』に――って「『スキル』ってかなり少数にしか発現しないんじゃ……」
「あぁ。お前はその少数って訳だ。良かったな~」
「かっ軽っ!」ほんとにいいの?そんなんで?
「まぁ、『スキル』にも弱点は結構あるらしいな。お前のは……どれだけ弱い魔術でも一定の魔力量が必要ってことだが……それは逆にくっそ強い魔術も一定の魔力量で出せる長所にもなる」
「あの……魔力ってなんなんすか?」
「はぁぁ!?おまっ、魔力すら知らずにここまで生きてきたのかよ!」
「えっ、あ、はい……」
先生は呆れたという風にため息をついた。
「はぁ……魔力ってのはな、魔術を使うときに必要な、まぁ体力みたいなもんで、まだよく分かってはいないんだが、この魔力量が先天的に高いと、出す魔術が強くなったりもするらしい。あと、さっきも言ったように魔力っていうのは体力みたいなものだから、使いすぎると魔力欠乏症になって、動けなくなるんだ。」
「はぁ……で、僕はそれが高いと」
別にどうでもいいがさっき先生は学園一とか何とか言ってたな……注目されるのはちょっと、いや、かなり嫌だ。
「先生」
「何だ?」
「このこと――僕にスキルがあり、魔力がクッソ高いっていうこと――は、内密にしといてください。僕は何もない高校生活を望んでいますんで」
先生は驚いたように
「普通魔術の素養があるヤツは目立ちたがり屋なんだが――まぁ、お前がいいって言うならまぁいいが」
「ありがとうございます」
よし。これで僕は普通の高校生だっっっ――そこそこ!!魔術師って時点でアウトだろっていったヤツ!!その通りでした。すみません。まぁなんにせよこれ以上話す事もないようだし、教室に戻ろう。
「あの、先生、僕はもう教室に戻っても……」
「ん?あぁそうだな。」
なんだ?少し考え込んでいたようだが……
「じゃあ失礼します」
まぁ特に何でも無いだろう。ってな訳で教室に戻った。