第二十四話 夜明けの強襲Ⅳ
すみません!課題に追われ書く暇がありませんでした!今回も少し短いです!次は長くそれでいて早く仕上げたいと思います!
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ある男は娼夫であった。
親に捨てられ、子供の頃より娼館にて働かされていた。
その者は見目麗しい子供であった。店でも人気があり、男女問わず指名が殺到していた。
ある日、少年は貴族の男に買われることになった。
娼館では、体は売っていても、その人自体を買わせることはなかった。それがその店のルールであったのだ。だが、そのルールを破って、貴族はその少年を買った。店も、貴族とあらば逆らえなかった。何より、人気のある少年を売っても痛くないほどの金を貴族に積まれたのだ。店側に断る道理は無かった。
そうして少年は貴族に買われた。
少年は言い知れぬ不安にかられながらも、貴族の屋敷に連れて行かれた。
少年は屋敷で風呂に入れられた後着替えさせられた。だが、その服は少年が着るにはおかしなものであった。
サイズが合わないとか、身の丈に合わないとかそういうのじゃない。むしろ、体にぴったりのサイズだし、着心地も悪くない。
では、なにがおかしいのか。答えは簡単だ。その服は、男が着るようなものではなかったのだ。つまり、女性用の服であった。
困惑しながらも、着せ替えてくれていた侍女に訊ねた。
「あの…これ、女ものだと思うんですけど…」
「……いいえ。これで合ってますよ」
「でも…」
「合ってますよ」
侍女にきっぱりとそう言われ、少年はそれ以上はなにも言えなかった。
こちらは買われた身。例え相手が侍女であろうとも口答えなど出来るはずもなかった。
そうして着せ替えられた少年は、広い食堂に通された。
少年はことここに至ってようやく理解する。いや、薄々は感づいていたのだ。こ貴族が自分を見つめる目。それに含まれる者を、娼夫であった彼が理解できないはずもなかった。
食堂に通されて、彼に向けられる目線。それはーーー
「ふふっ、よく似合っておるぞ。今夜が楽しみだ」
ーーー性に対する欲情。
貴族も、その父親も、息子も男達全てが彼にその視線を向けていた。女達は気まずげな、そしてどこか申し訳無さそうな目で彼を見た。だが、それで彼が救われるわけでも無かった。
そうして少年は毎夜男達の夜伽の相手をした。毎夜毎夜代わる代わる男達にその身を犯され、少年の心は次第に磨耗していった。
少年は娼夫だ。男の相手がなかったわけではない。それなりにそう言うことはあった。だが、それになれたかと言われれば別であった。少年は男の相手などしたくはなかった。当たり前だ。彼は男だ。同性愛者でもない限り、同性の相手などしたくはないだろう。けれども少年の仕事は娼夫だ。指名されれば相手をしなくてならない。
少年には娼館しか居場所がなかった。娼館以外に行く場所がなかった。仕事だから耐えた。周りの娼夫(婦)仲間も、いろいろな特殊な経緯はあったがいい人ばかりであった。だから耐えられた。
しかし今の屋敷に居場所はない。憩いの場などもない。あるのは必要最低限に留められた自室と、汚い男共の性欲を満たす夜伽の場だけであった。
磨耗するばかりの生活が続いた。ただただ犯されるだけの生活。心が折れるのはそう遅くはなかった。
折れた心で犯され続けたある日、少年は夜伽の場に置いてある鏡に目を向けた。そこで見たのは汚い男に犯される自分の姿。その姿を見て思った。
(なんだ…ワタシは女なんだ…だったら、男に犯されてもしょうがないんだ………)
少年がそう思い始めるのも無理はなかった。
鏡に映った少年の姿は、可愛らしい衣装に身を包み、月日を経て肩口までに伸びた髪の毛。そして整った容貌。見た目は完全に可憐な少女であった。
こいつらは変態ではない。自分が可憐な少女だから犯されるのだ。それは人としての摂理。だからしょうがない。そう思うようになった。
少年の心が歪んで少女となり更に月日が経った頃、少年に異変が起きた。
気づいたきっかけは些細なことだった。いつものように夜伽の場に向かう最中、階段の上がっていると、少し前を歩いていた侍女がバランスを崩して後ろに倒れてきた。それを少年は焦りながらも片手で受け止めた。
少年はそのとき十五歳。筋肉もつき始める頃なので片手で受け止めても何ら不思議はないことではあるのだが、少年にとってそれは異常なことだった。
少年は必要以上の食事をとれずにいた。その上夜には何人もの相手と夜伽を行う。そのため、必然的に少年はやせ細っていた。そのため、女性とはいえ、成人している女性一人を片手で支えるだけの膂力は少年には無いはずであった。
だが、少年は片手で受け止めた。そのことに、少年は少なからず驚愕していた。
その日は夜伽の時間に追われそれ以上考えることは出来なかった。
翌日。少年は起きると徐にベッドを持ち上げてみた。それも片手でだ。
最初は半信半疑であった。だが、あのときのことは少年の勘違いなどではなかった。
木製のベッドは少年の細腕で軽々持ち上がった。そこで少年は確信した。自分は異常なのだと。そして、確信すると同時に歓喜した。この力があれば、この現状を覆せるかもしれないと。
少年に急に発現した力に対する謎は関係はなかった。今を変える力さえあれば関係なかった。
そうして少年は徐に部屋を出ると一人ずつ殺していった。最初は通りすがりの侍女。次に貴族の息子。次に侍女。次に、次に、次にーーー。
今にして思えば、計画性もなく、一種賭のようなところもあった。だが、そんなことに頭が回らないくらいに、少年は壊れていた。いや、壊されていたのだ。
哄笑を上げて屋敷の者達を一人残らずなぶり殺していく。
手足を折り、頭を潰し、腹を貫き、胴体を引きちぎる。
そうしてすべてを殺し終える頃、衝撃に耐えられなくなった屋敷が崩れた。少年がなんにも考えずに当たり散らした結果であった。
崩れ落ちる屋敷の中で少年は満足げに笑った。ここで朽ちるのであれば満足だと。
自分を縛り付けていた者と物の崩壊が、それほどまでに嬉しかった。
瓦礫の雨をその身に受けても、少年は笑い声を上げていた。
○ ○ ○
"蜘蛛"の一人をどうにか城より離したユーリは、この後をどうするか考えていた。
目の前の"蜘蛛"は自分よりも格上なのだろう。立ち方や歩き方にまで隙が無い。
勝てるのか?と一瞬弱気になるが、強く剣を握りしめ気持ちを持ち直す。
「はぁ…ワタシの相手が女だなんて……まあいいわ」
「女だからといって嘗めないでいただきたい」
「別に嘗めてないわよ。ワタシは女より男が好きなのよ。ただそれだけよ」
「……オカマですか…」
「ええそうよ。悪い?」
「いえ、悪くはないです。人の趣味趣向、思想や感情はそれぞれ違います。それに難癖を付けるほど、私はおこがましくはないです」
「そう。良い心がけじゃない」
「それはどうも」
実際、相手がオカマであれノーマルであれ倒すべき敵と言うことに変わりはない。そんな敵にいちいち難癖など付けてはいられない。それに、そんな暇も無いのだ。
ハンナとトロラがどこまで戦えるのかは分からない。だが、確実に相手はあの二人よりも上手なのだ。しかも、今目の前に立っている"蜘蛛"よりも確実に強い。時間は稼げても勝ち目はないだろう。
であれば、早々に目の前の"蜘蛛"を倒して二人の応援に向かわねばならない。
ユーリは柄を力みすぎない程度に握りしめ、剣を構える。
「私の名前はユーリ・クラフィ。騎士として、お相手いたします」
「ワタシはネクタル。貴方みたいに騎士とかじゃないから、ご立派な姓は持ち合わせていないわ」
「そうですか。それでは、行きますよッ!」
「かかってきなさい!」
ユーリは地面を蹴りつけネクタルに迫る。これまでの訓練で、身体強化を無詠唱で行使できるようになったので、地面を蹴りつけると同時に自身にかけておく。
身体強化の影響でかなりの速度で迫ってくるユーリに、ネクタルは焦ることなく冷静に対処をする。
ローブの袖からワイヤーを数本ほど出し、ユーリに向かって振るう。
ユーリは身体強化のおかげでギリギリ目視できるワイヤーを数本剣で弾き、数本避ける。ワイヤーを捌ききればネクタルに迫る。
走り出し直後、目の前にワイヤーが迫っていることに気づき慌てて身を捻って回避する。だが、全てを回避することは出来ず、何本かが軽く肉を裂いていく。
体制が悪いため無理に突っ込んでも体にいらぬ傷を負うのが目に見えている。そのため、後ろまで大きく跳び距離を置く。
ネクタルはワイヤーを手元に引き寄せると全くと言っていいほど隙の無い構えをとる。
だが、このままなにもしないでいれば向こうから攻められることは確か。攻められれば今みたいな離脱は出来そうにない。あれは、ネクタルが防御に徹していたから離脱が出来たのだ。
「………あなた…やっぱりそこまで強くはないわね」
「くっ!急に何だというのです!」
「いえね?一合入れただけで相手の実力がどの程度かなんて分かるのよ。それで、あなたはやっぱりそんなに強くないって思ったのよ」
「そうでしょうか?案外、あなたの人を測る目が狂っているのかもしれませんよ?」
「あら~それはあり得るかもしれないわ。ワタシ女に興味なんて無いから~」
「それはよろしいのですか?敵の力量をはかり間違えでもしたら、あなたがピンチになるんですよ?」
「それは大変ねぇ。それじゃ、おいおい鍛えていくとするわ。今は必要なさそうだし」
ネクタルの言った言葉が挑発だと言うことは分かっている。だから、その挑発に乗るまいと、むしろその挑発を逆手に取るように今度はユーリが挑発をしてみたのだが、ネクタルはユーリの挑発をのらりくらりと受け流す。
あまりの手応えの無さに、ユーリは内心で舌打ちをする。そして、舌打ちをして自分が苛立っていることに気づいてまた内心で舌打ちをする。だが、それではネクタルの思う壺だと無理やりに冷静さを取り戻す。
まだ少しだけしか戦闘をしていないが、自分はネクタルに勝てるのかと不安になりつつ、早くハンナ達を助けねばと焦りを募らせていた。




