第一話 説明します
宣言通り短いです
パーティーから一夜明けた次の日。美結達勇者一行は談話室に集められていた。
そこには、勇者一行だけではなく、アリアとロズウェル、フーバーとサティア、そしてクレアもいた。
談話室は思っていたい場に広く五十人近くが入ってもまだ少し余裕があった。
だが、広いはずの談話室の空気は荘司達に圧迫感を与えていた。談話室の空気は重たくこれから真剣な話をするであろう事はその空気だけで分かった。
そんな、居づらい空気の中一カ所だけそんな空気など無いかのような桃色空間が広がっていた。
「んふっ♪んふふ~♪」
「…そろそろ、離れようか…美結…」
そう、アリアに美結が抱きついて甘っとろい空気を醸し出していたからだ。
美結はアリアが城に来てからずっとこの調子だった。
「いいじゃん幸助~久し振りに会えたんだから~♪」
「いや、話が出来ないから、な?」
アリアが美結をひきはがして言うと美結は若干不満そうな顔をするも大人しく従ってくれた。
軽く溜め息を吐くとアリアはフーバーに向き直る。
「すまんなフーバー」
「何、気にするな。久し振りの再会なのだ大目に見よう」
「助かる」
アリアはそう言うと、皆の方を向く。
「…聞きたいことは色々あるだろうが、まずは言わせてくれ。久し振り」
アリアの言葉に未だ戸惑いを隠せない荘司達はなんとか不格好ながらも返事を返した。
アリアは苦笑すると話を続けた。
「まあ、驚くのも無理はないか…と言うか、信じられないと言った方が正しいか…。それはそうだろうな、あの空間で別れたはずのぱっとしない顔の奴がこんな美少女になったって言うんだ、信じられないのも無理はない。私がそっちの立場でも同じ反応をしただろうさ」
うんうん頷くアリアはチラッと皆を見る。
だが、自分で美少女と言ったアリアに突っ込むものはおらずアリアは少しむくれる。アリア的にこの重たい空気をどうにかしようとしたのだが誰も乗ってくれなかったからだ。
そこに見かねたロズウェルが言った。
「ご自分で美少女と言うなんてアリア様はナルシストなのですね」
「同情での突っ込みは要らん!…それと、ロズウェル」
「はい、何でございましょう?」
アリアは後ろ(・・)を振り返ると言った。
「いい加減に座ったらどうだ?何のために私の隣の椅子が空いてると思ってる?」
そう、ロズウェルは皆が座る中一人アリアの後ろに立っているのだ。
「いえ、私はアリア様の従者ですので立っているだけで充分です」
「それでは私が落ち着かん。それに、家ではいつも私の隣を陣取ってるじゃないか」
「ここはアリア様のご自宅では御座いません。それに、国王様と同じ席に着くなどと言うことは…」
フーバーの顔を伺いつつ言うロズウェルに即答する。
「構わん、許可する」
アリアが。
「え、今のセリフ俺のだよね?」
「あなた、少しお静かにね」
「…お、俺の立場って一体…」
俺王だよね?と一人ぶつぶつ呟いているフーバーをクレアが苦笑しながら慰める。
「ほら、フーバーもああ言ってる。それに、席が一つ空いてるというのも不格好だ」
ロズウェルは少し考えるそぶりを見せると諦めたように息を吐いた。
「分かりました…。それでは失礼します」
ロズウェルは綺麗に一礼すると漸く席に着いた。
アリアはそれを確認すると言った。
「それじゃあ、質疑応答といこうか。幸いにして時間はたっぷりある。あの時みたいに焦る必要はない。さあ、それじゃあ、質問したい奴から言ってくれ」
「それじゃあしっつも~ん♪」
この場に合わない底抜けに明るい声にアリアは苦笑する。
「なんだ、美結?」
美結はキラキラした目で言った。
「今いくつなの?」
いくつ、とはおそらくは年齢のことだろう。それを理解するとアリアは数を数え始める。
「アリア様。アリア様はこの世に生を受けたときには八ですので、それから六年ですから十四でございます」
ロズウェルの助け船にアリアは驚く。別にロズウェルがアリアに助け船を出したことにではない。自分が過ごした年月に驚いたのだ。
「そうか、もう六年も経つのか…」
感慨深げに言うアリアに今度は真樹が言った。
「産まれたときに八歳って言うのはどういうことなの?」
「ん?確か、神の子は天界に八歳まで住んでそれから地上の《聖母神の湖》から下界に産まれる…だっけか?」
「その通りでございます」
「だそうだ」
「ちょ、ちょっと待って!」
さらりと言い放った重大発言に真樹が待ったをかける。
「ん?なんだ?」
「今、神の子って…え?崎三君…神様なの?」
「そうだけど?」
「「「「「「えええええええぇぇぇぇえぇぇぇぇえええ!?」」」」」」
驚きの声を上げる勇者達。
それに驚き耳をふさぐアリア。だが、すでにロズウェルがアリアの耳を塞いでいるので意味はなかった。
フーバー達も耳をふさいでいた。
漸く声がやむとロズウェルが手を離す。
「ああ~びっくりした…」
「びっくりしたのはこっちだよ幸助!え?幸助、神様になっちゃったの!?」
「そうだよ。あれ、フーバーから聞いてない?この国には不定期的に神様が産まれるって」
「き、聞いてないよ…」
美結の答えにアリアはフーバーに視線を向け、事情の説明を促す。
「今は、この国に慣れさせるために最低限のことだけを教えてそれから色々な事を教えていこうと思っていたのだ。いきなり詰め込みすぎても混乱するだけだろう?」
フーバーの説明にアリアは成る程と頷く。
「だが、それでもこの国の別称くらいは教えてやれよ。丁度私がいるんだし」
「むっ、それもそうであったな…まあ、良いではないか。ハッハッハッ!!」
快活に笑うフーバーを尻目に今度は計が聞いてくる。
「崎三君、この国の別称って?」
「ああ、神が生まれる国って言うのは世界中を捜してもこの国しかない。だから《神に愛された国》そう呼ばれてる」
「そうなんだ…」
すると、クラスでもわりかしムードメーカーだった亜澄奈々子がポンと手をたたいて言った。
「あっ、だから女神様と髪の色と目の色が一緒なんだね!」
「ああ、だから、最初に鏡で自分を見たときは驚いたよ」
笑いながらそう言うと真樹や奈々子がクスリと笑う。
「それで、他に聞きたいことは?」
そう言うと、皆はう~んと考え込んでしまう。
それを見るとアリアは苦笑しながら言った。
「どうやら、あらかた説明してからの方が良さそうだな。皆、聞きたいことはあるけどどれから聞いたら良いか分からないみたいだしな」
「そうだな、俺も大戦の話を直接お前から聞きたかった。部下の報告でしか聞いてなかったのでな」
「それじゃあ、私のこの地での出生から、今日までの六年間を語ることにしよう。さっきも言ったが、幸い時間はたっぷりあるしな」
そう言った後、あの頃の女神と形は違えど同じ話運びになったことにクスリと笑う。
皆が聞く姿勢を整えるとアリアは口を開いた。
「それじゃあ、語るとしよう。崎三幸助の終わりとアリア・シークレットの始まりを」
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