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第三話 アリシラちゃんの青空魔法教室★

ご報告の通り、もう一話投稿いたしましま。


えー、この話で節目の五十話と言うことで私より、皆様に謝辞をって、堅苦しいですね。


はい!五十話です!


ここまで続けることが出来たのも、皆様の応援があってこそです!


徐々に徐々にブックマークが延びていき、稀に稀に有り難い感想や評価を頂いて、とても嬉しく思います!


もちろん、見ていただいてるだけで、大変感謝感激雨霰でございます!


これからも、転生女神の英雄譚をよろしくお願いします!


ではでは、本編へどうぞ!

 アリシラの言葉にとぼけた声で答えるアリア。


 なぜなら、アリシラの言ったことが本当ならば、アリアはあの時二発目の神罰魔法を放つ最中で魔力切れを起こす事はなかったはずだ。


「それは、本当なのか?」


「ええ、本当よ」


 アリシラの肯定の言葉に、アリアは再度考え込んでしまう。  


 考え込むアリアに、アリシラは不思議そうな顔で訊く。


「なに?どうしたの?」


「いや、実はーー」


 アリアは、素直にあの時あった出来事を、その前後を含めて話した。 


 全ての話を聞き終わると、アリシラは納得といった表情を見せた。


「な~んだ、そんなことがあったのね。それなら、アリアちゃんの不思議そうな顔も納得だわ」


「わけが分かるのか?」


「ええ、とてもシンプルな答えよ。つまりね、こういう事よ。アリアちゃんは今は魔法に慣れていないのよ。それに、その話を聞くに、アリアちゃんは怒りで我を忘れていた節があるからね。そんな中、無理に神罰魔法を使ったから余分に魔力を消費して、魔力切れを引き起こしてしまったのよ」


「そうだったのか…」


 と言うことは、あそこでアリアが冷静になっていれば、群がる魔物達を蹴散らし、バラドラムを追う事が出来たのかもしれない。


(いや、無理だな…)


 自分の考えを即座に否定する。


 そう、実際には無理だ。


 バラドラムに放とうとした神罰魔法。それを放てる状態にしたのもまた神罰魔法《獄炎地獄インフェルノ》だった。


 アリアが神罰魔法を放てる状態にしたそのときで、既にバラドラムはアリアからかなりの距離をとっていた。《獄炎地獄インフェルノ》を使ってもバラドラムとの距離はそこまで開いていたのだ。普通の魔法を使っていたらバラドラムにはとっくに逃げられていただろう。


 それに、バラドラムに放とうとした神罰魔法も、普通の魔法では届かない彼我の距離を届かせるために放とうとしたものだ。


 つまり、どちらかの神罰魔法を上級魔法などに変えていようがいまいがバラドラムには逃げられていたのだ。


 結局は、どちらにせよあの状況では両方とも神罰魔法は必須であったのだ。それを行えなかったのはアリアの実力不足だ。あとは、経験も不足していた。


 要するに、戦闘に関してアリアには足りない物が多すぎたのだ。


 実力も、経験も、アリアには足りない。


 足りないのならば、あのような結果になってしまっても仕方がないと、殊更に開き直ってしまえばどれだけ楽だろうか。


 一度、あの時の事を鑑みて、仕方がなかったのかもしれないと思ったこともあった。そう自分を納得させようともした。


 だが、仕方がないと思えなかったし、納得も出来なかった。


 自分の弱さを盾に、自分を慰める事なんて出来なかった。


 それが、余りにも、バルバロッセやナタリア達に不義理が過ぎる行いだとわかっていたからだ。


 アリアは、開き直りが逃げだと言うことを知っている。それに、逃げるにしても、余りにも逃げる対象に近づきすぎた。どちらにせよ、もう逃げられないのだ。


 それに、アリアは逃げるつもりは毛頭無い。 


 バルバロッセが死に、身近な人間の死に直面したアリアは、死を身近に感じた。


 そのとき感じたのは、恐怖ではなく、驚愕や喪失感、悲壮感だけであった。


 恐怖を感じなかったのは自分が死なないと思っている訳ではない。クレアもイルもユーリもシスタも、あのロズウェルでさえもいずれは死んでしまうのだ。その時が唐突にやってくるのか、緩やかに訪れるのかは分からない。だが人はいずれ死ぬ。不死身の者などいやしないのだ。


 ただ、唐突に命を奪われたバルバロッセを見て心の中で何かが抜け落ちる感じがした。


 次に自分がこうなるかもとかなんて考えない。考える暇もない。アリアの頭の中には何故?と言う言葉しか浮かんでこなかった。


 そして、その言葉は、アリアよりもバルバロッセに近かったシスタやナタリア達の方が強いに決まってる。      


 そのみんなの顔を見て、アリアは逃げてはいけないと思った。


 逃げる気などは毛頭無かったが、そう思った。


 だからアリアは守れるよう強くなることを決めた。


 ロズウェルには、騎士は守られるために戦うのではないと言われたが、それは少し違うように思えた。


 騎士であろうが何であろうが、アリアが仲間と認めた以上、その者達はアリアの守る対象だ。だが、逆にアリアも、その者達に守られるつもりでもいる。要するに、アリアは彼らに背中を預けようと思うのだ。


 仲間であれば、お互いにお互いを守っても不思議はない。それが仲間の在り方だとアリアは思う。


 だが、別にロズウェルの考えが間違っているとも思っていない。ただ、ロズウェルとアリアとでは状況が違うのだろうと思う。


 ロズウェルは最強だ。故に孤高であり孤独である。故に守られることを知らず守ることしか知らない。ロズウェルと言う人物はそうなのかもしれない。


 本人に直接聞いたわけではないが、そうなんじゃないかなと思う。


「お~い、アリアちゃ~ん。ど~し~たの~?」


 不意に声をかけられアリアは我に返る。


 随分と脇道に逸れた思考を元に戻すと、声をかけた人物、アリシラに応じる。


「すまない。少し物思いに耽っていたようだ」


「少し~?本当に少し~?何度呼んでも応答無しだったのに、それでも少し~?」


「うっ、ごめんなさい…」


 そこまで考え込んでしまっていたのかと、申し訳無さそうに謝るアリアに、アリシラは優しげに微笑むと言った。 


「ふふっ、冗談よジョーダン。物思いに耽るくらいに、なにか思うところがあったんでしょ?さっき話してくれた内容が関係してることも、顔を見れば分かるよ~」


 そう言ってパチリとウインクをするアリシラ。

  

 その仕草に、アリアも思わず笑顔になる。


「アリシラにはお見通しなんだな」


「多分ワタシだけじゃないよ?アリアちゃん案外顔に出やすいからね~。皆結構色々気付いてるかもよ?」


「うっ、そうなのか?」


 自分はそんなに顔に出やすかっただろうかと、顔をベタベタと触るアリア。 

 

 そんなアリアの仕草を可笑しそうに笑いながらアリシラは言った。

  

「アリアちゃんは素直ね~」


「何だか、今そのセリフを言われるとバカにされてる気がする…」


 顔をベターっと触ったままジト目でそう言うアリア。


「別にバカにしてるつもりはないわよ~。ただ、仕草が可愛いな~って思っただけよ。普段大人びた感じのアリアちゃんが、こういうときは年相応だな~ってね」


 それはそうであろう。アリアの精神年齢は前世から引き継いで十七歳なのだ。この年で子供っぽかったら、おかしいだろう。


 それなのに、アリシラに年相応と思わせるような行動をとってしまったのは、アリアの精神年齢が下がったか、体の年齢に引っ張られているかだ。   


 アリアとしては、後者なのではないのかと思っている。


 現にアリアは、思考も仕草も前世の頃と余り変わらない。ロズウェルやメイドちゃんズに言われて、多少は少女っぽく振る舞ってはいるが、それでも余り変わりは無いだろう。


 そんなアリアの事情を知らないアリシラは、そのようなことを思うのであろう。 


 いや、アリシラだけではない。真実を話したロズウェル以外はそう思っているはずだ。


 まあ、それはともかくとしてだ。今のアリアの仕草は子供っぽいらしい。アリアの見た目としてはこちらの方があっているのだろうが、精神年齢が十七歳のアリアからしてみれば、子供っぽいの仕草をするのはどうにも居心地が悪い。気をつけねば。


「余り子供っぽい仕草はしないようにしてるんだ。女神としての威厳が損なわれると思ってな」


「ん~それはあんまり気にしなくても良いと思うわよ?先代のアリアちゃんも、出会った当初はそこら辺にいる子供と変わらなかったし」


「え?そうなの!?」


 アリシラが先代アリアの事を知っていることに対して驚きはない。アリシラは、エルフだ。長命種なのであろうことは予測が出来ていたからだ。長命種であれば、先代アリアの事を知っていてもおかしくはない。


 アリアが驚いたのは、先代アリアが年相応に子供だったという事実についてだ。


 アリアのイメージでは、小さい頃から自分とは違い、聡明で女神のイメージとそぐわないのであったのだろうと思っていた。


 だが、アリシラが今言ったとおりならば、先代アリアはアリアがイメージしたとおりの女神ではなく、人間のように育った女神だと言うことになるのかもしれない。


 そのことに気付いたアリアは、同時に自分が先代アリアの事を何も知らないことにも気付いた。


 先代アリアの事をもっと知っておいた方がいいかもしれない。


 先代アリアが、どのような人物で、何をなしたのか、それは知っておかなければいけないのかもしれない。


 勇者として召喚されたのならば、さして気にも止めないような事だっただろう。


 だが、今の自分は勇者として召喚された崎三幸助ではなく、女神として生を受けたアリア・シークレットなのだ。『アリア』という自分まで続いてきた存在のことを、もっと詳しく理解しとかなくてはいけない。


 それで、何かが見えてくるかもしれない。


 まあ、何も見えてこなくても、歴史を知るというのは決して悪いことではない。どちらにせよ損は無いのだ。


「なあ、アリシラ。先代アリアの事を教えてくれないか?」


 先代アリアと接触をしたことがあるというアリシラならば、それなりに何か知っているのかもしれない。


 そう思い訊いてみたのだが、アリシラの答えはアリアの期待にはそぐわないものであった。


「んん~、それは無理かな~。あの子とは数えるほどしか会ってないんだよね~。だからあの子の事はよく分からないのよ」


「そうか…」


 ごめんね~と続けるアリシラに短くそう答えるアリア。


 見るからに肩を落とすアリアに、アリシラは少しだけ慌てたように言った。


「でも、ロズウェルなら何か知ってるかもよ?先代アリアの従者をやっていたのはロズウェルのお爺ちゃんなんだから!」


 そう言われてはたと気づく。


 そうだ、何で忘れていたのだろうか。

 

 初代アドリエが初代アリアの従者をしていたのだ。その物語が本になっているならば、その記録が他にも残されていても不思議はないではないか。


 それに、ロズウェルは本の内容に脚色が加わっていると言っていた。つまり、ロズウェルは、原作を知っているという事に他ならない。


 何故今まで気付かなかったのだろうか。  


「そうか、ロズウェルに訊くのが一番早そうだな!ありがとうアリシラ!」


「いえいえ~。……あっ」


 笑顔でお礼を言うアリアにこちらも笑顔で返すアリシラであったが、不意に声を漏らすと、なぜだか苦笑する。


「どうした?」


「いえ、魔法の事あんまり教えてないな~ってことに気付いてね」


「あっ」


 アリシラの言葉にアリアも思わず声を漏らす。


 言われてみれば、確かにそうだ。


 最初の方は魔法についての話だったが、アリアが脇道に逸れたせいで、気付いたら先代アリアの話になっていた。


 これではせっかくアリアのために魔法教室などを開いてくれたアリシラに申し訳がない。


「ごめんアリシラ。私が脇道に逸れたばかりに」


「ふふっ、良いのよ~。実を言うと、ワタシがアリアちゃんとお話ししたかっただけなんだから。魔法教室は口実みたいなものよ」


「そうなのか?」


「ええ、そうよ~。…でも、せっかくの魔法教室なんて題うったのだから、最後にもう一つ、魔法について教えておこうかしら」   


 そう言うとアリシラは、手を前にかざした。


 次の瞬間、アリシラの手から水の玉が出現し落下すると、庭の芝生を濡らした。


 アリアにとっては何の変哲もないことだ。だが、それ以外の魔法師にはそうもいかない事をアリシラはやったのだ。


 無詠唱による魔法の行使。


 アリアにはさしたる驚きはない。メルリア最強の魔法師なのだから、それくらいは出来るのかもしれないと思っていたからだ。


 だから、実際に目にしても感じたのはやっぱりかという確信だけだった。


 ここまでであれば、自分も無詠唱が出来ますよ、という報告だけだ。だが、恐らくそれだけではないのだろう。


 アリアの予想通り、アリシラは説明を始めた。


「魔法って言うのはね。本当は、詠唱なんて必要ないのよ。ただ頭でイメージするだけで魔法は形を持つの。今みたいにね。でも、大半の人は、イメージだけで魔法を放とうとするといつもより余分にマナを持って行かれるの。だから殆どの人が詠唱付きで魔法を行使するの。頭で考えるだけより、口で言葉に出したほうがイメージしやすいでしょ?」


 なるほど、そうだったのか。皆無詠唱だと燃費が悪いから詠唱をしていたのか。


 なんだ、自分だけ出来るんだと舞い上がっていた頃が滅茶苦茶恥ずかしいじゃないか。


 そんなアリアの考えをよそに、アリシラの説明はまだまだ続く。


「それと、詠唱に決まったものはないの。皆、それぞれのその場その時の感情を詠唱にのせるのよ。決まった詠唱なんか使ってたら、敵にどんな魔法を使いますよって教えているようなものだからね。今では、教本通りの詠唱なんてぜんぜん聞かなくなっちゃったわね~」


 懐かしそうな顔でそんなことを言うアリシラ。あなた一体何歳なんですか。


 ロズウェルに一度、魔法に関する本を持ってきて貰ったが、その本は古ぼけていて、とても新しいとは言えなかった。


 その本とだいたい同じ位の年齢だとしたらーー


「アリアちゃん。今何考えてるの?」


「いえ、なにも」


 アリシラの年齢を計算しようとしたら、アリシラに怖い顔でそんなことを聞かれてしまった。怖い顔なのに笑顔だというのがまた怖い。


 即答で否定し、首を横にちぎれんばかりに振る。


「そう、ならいいのよ」


 凄みのある笑顔を引っ込め、いつもの機嫌の良さそうな笑顔に戻る。


 どうやら危機は脱したようであった。


 だが、なるほど。


 アリシラの説明で分かったことがあった。


 先の一件の時に、ラテの詠唱がいかにも怒ってますよといった感じなのはそのためだったのか。


 そんなことまで知っているとは、流石は、アリシラ。伊達に一世紀以上生きてーー


「ねえアリアちゃん。今何考えてるの?」


「決して、何も」


 またもや凄みのある笑顔でそう聞かれてしまったアリアは、即座に首を横に振った。  


 アリシラはもしかしたらテレパスなのかもしれない。


「まあ、それはそれとして。彼、アリアちゃんに用事があるみたいね」


 アリシラのテレパス疑惑が浮かんだところで、アリシラが凄みを消して顔の向きを変えてそう言った。


「え?」


 彼女が向いた先を見てみると、そこにいたのはロズウェルであった。


「どうしたんだろう?」


「用事があるんじゃないの?彼、少し前からあそこにいたからね。待たせるのも悪いから、行ってあげて」


「ん~。ん、分かった」


 アリアはアリシラに返事をすると、ぴょんっとベンチから降りる。


「それじゃあアリシラ、色々話してくれてありがとう!楽しかったぞ!」


「ふふっ、良いのよ~。ワタシも楽しかったから。今度は普通にお茶会とかしましょう」


「ああ、分かった!楽しみにしてる!」


 最後にそう言うと、アリアはとてててとロズウェルの元へ走っていった。


 ロズウェルは走ってくるアリアに微笑みかけた後、アリシラに一礼する。


 アリシラは一礼するロズウェルに苦笑しながら、手をひらひらと振って答える。


 最後に、ロズウェルの元に着いたアリアが、アリシラにバイバーイといった感じに手を振った後、二人はその場を後にした。


 二人の後ろ姿が、先代の二人に被って見えた。


 顔は二人とも先代とは余り似ていないし、見た目も似ていない。だが、二人の後ろ姿は先代の二人にそっくりであった。


 その事にクスリと一つ笑うと、アリシラは読みかけのスクロールを広げて読み始めた。


 

   

 




   



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