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閑話 半端者の帰還

どうも、毎度評価やブックマーク等ありがとうございます!


先日、PVが30万を超えました!嬉しい限りです!


いつもお読みになってくださっている皆様、偶にお読みになっなくださっている皆様、ちょろっとお読みになってくださっている皆様、本当にありがとうございます!


これからもこの作品と私共々よろしくお願いします!





さて、ここからは連絡事項になります。


この閑話の後に次章に突入いたします。


次の舞台は王都を離れ、魔道具生産が盛んな魔工都市、マシナリアへ!


そこで出会うのは謎の戦闘集団と一人の魔工師。


はたしてマシナリアで一体何が起きるのか!


乞うご期待!





一度やってみたかったんですこういうの。

 左腕を失ったバラドラムは殺風景な大地を眼下におさめながら空を飛んでいた。


 今バラドラムが飛んでいる空は魔人族の領地、魔大陸の空だ。


 今は殺風景な荒野の上を飛んでいるが、じきに魔大陸の首都が見えてくるはずだ。


「ギイイィィィ」


 急に上から魔物の鳴き声が聞こえてきたが、魔物の魔力を感知していたので驚きはしない。


 魔大陸の魔物は他の大陸の魔物よりも強い。理由としては、魔大陸には強力な魔力が空気に含まれているので、その空気を長年吸っているため強化されていくのだ。これは、バラドラム達のような魔人族にも言えることだ。


 だが、強くなっていくにも上限があり、ある一定まで到達すると魔力を含んだ空気を吸っていてもその力が変わることがなくなる。


 ただ、この上限というのは身体を鍛えれば上がっていくので、種族毎に上限が違うと言うこともない。


 そのようなこともあり魔大陸の魔物は大変危険である。それは、魔人族にも言えたことで、彼らにも勝てない魔物というのもいる。例えば、ドラゴン。例えば、先代魔王の作り出したゴーレム。例えば、邪神の影響により強化された魔狼。ほかにもまだまだ危険な魔物は生息している。


 だが、ここにいるバラドラムに関しては、魔大陸で勝てぬ魔物は片手で数えられるくらい。よって彼女の上空を飛ぶ魔物は、彼女にとっては何の驚異にもなりはしない。    


 そんな彼女を、二人がかりとは言え片腕を切り落としたあの二人は、相当に強かった。もし毒をまいていなかったらバラドラムももう少し手傷を負っていたかもしれない。


 そう思うと、バルバロッセからオドを取り出せたのはやはり僥倖と言えよう。強敵を減らせて目的も達成できる。一石二鳥だ。


 そうこう考えているうちに、王都が見えてきた。


 バラドラムは王都が見えてくると、進路を北へと変える。王都に帰る前にやらなくてはいけないことがあるからだ。


 北には雲をゆうに突き抜けるほどの巨大な山がそびえ立っていた。そこが、バラドラムの目的地だ。


 その山は王都が見える前にも見えていた。では、なぜ王都が見えてくるまでそちらに進路を変更しなかったのかと言えば、バラドラムの姿を王都に見せるためであった。


 王都の門番は、目が良い者が多い。バラドラムが王都を目視するよりも前に門番はバラドラムの姿を目視できていただろう。


 バラドラムは門番の目の良さを利用して、自身の帰還を魔王に知らせようとしたのだ。バラドラムを確認すれば門番は魔王に報告をする。そう言う理屈だ。


 だからバラドラムは王都を目視したのち、進路変更をしたのだ。


 バラドラムは山の頂上まで一気に加速をする。


 歩きならばだいぶ時間がかかるが、空を飛べるバラドラムにとっては文字通り一っ飛びだ。


 山頂に到着し羽をしまい歩き出すバラドラム。それを、一人の魔人族が出迎える。


「お帰りなさいませバラドラム様」


「ただいま、シュー」


 バラドラムがシューと呼んだ彼女は、古式奥ゆかしいメイド服を着ており、その顔には機械のような無表情を貼り付けている。彼女は常時こんな感じで、表情を見せることはかなり珍しい。バラドラムも過去に数えるくらい表情を見ただけだ。 


 そんなシューは少しだけ根眉を寄せると口を開いた。


「バラドラム様。左腕はどうなされたのですか?」


「ああ、これ?…ちょっと過激な子の相手してきたらこうなっちゃったのよ~」


 根眉を寄せるシューを珍しく思いながらバラドラムは冗談のようにそう言った。


「そうですか。許せませんね。バラドラム様の左腕をこんなにするなど」


 これまた珍しく言葉に怒気を含ませながらそう言うシュー。今日は珍しいものを二回も見ることができた。


「そやつ、私が殺しましょうか?」


「ダメよ~。私の獲物なんだからぁ」


 真剣な声音でそう聞いてくるシューを自分の獲物と言うことで軽く流すバラドラム。それに、シスタの左腕はバラドラムが切り落とした。おあいこのようなものだ。


 バラドラムの言葉を聞くと、シューはそれ以上は何も言わずバラドラムの半歩後ろを黙ってついて行く。

 

 山頂にある火口から山の内部に入っていく。


 実はこの山の内部はバラドラムの保有する実験施設になっている。内部をくり抜き所々にいくつか部屋を設けている。


 この山は旧火山で今は活動を停止している火山だ。そのため、火口から入っていってもなんら危険はないし、部屋を作るために掘り進めても危険はなかった。


 バラドラムは火口にあわせて作られた螺旋状の階段をブーツを鳴らしながら歩く。


 やがて、一つの部屋の前にまで来るとその部屋に入っていく。鉄でできた重い扉を、どこにそんな力があるのか、シューがその細腕で押し開く。


 その部屋は薄暗く、入ると冷たい空気がバラドラムの肌をなでる。部屋の中ははとても広く、そしてとても寒かった。山頂も十分に寒かったが、この部屋の温度は山頂の温度をゆうに下回っているだろう。


 そんな寒い部屋であるにも関わらず、バラドラムもシューも顔色一つ変えずに部屋の中を歩く。


「おや、バラドラム様。お帰りになっておられましたか」


「ええ、今さっきね」


 部屋の中にいた魔人族の男がバラドラムに声をかける。それを、皮切れに何人もの魔人族がバラドラムの帰還を出迎える言葉を送る。


 バラドラムは一つ一つに軽く言葉を返すと部屋の中央にあるものの前でピタリとその足を止める。


 それは氷付けにされており動く気配がない。


 バラドラムはそれを確認すると、懐から札の貼られたビンを取り出し、最初に声をかけてきた男に渡す。


「最終段階に入ったらこれを使いなさい。保管も使用も丁重に扱いなさい。こんなに良いのはなかなか手に入らないわよ」


「かしこまりました」


 男はバラドラムからビンを受け取ると恭しく一礼したのちその場を後にした。


 男がビンを保管しに行ったのを確認するとバラドラムはその部屋にいる者全員にに声をかける。


「最終段階になったら私を呼びなさい。それまで私は王都にいるわ」


 バラドラムの言葉に、各々が了解の言葉を返す。


 返事を聞いたバラドラムは踵を返すとその部屋を後にした。




 

 シューを伴い、バラドラムは山を後にした。後にした後の行き先は、先も言ったとおり魔大陸の王都だ。


 バラドラムは王城まで一っ飛びで着くと王城内を歩き出す。シューはその後ろに続く。


「ほう…誰かと思えばバラドラムじゃないか」


 後ろから投げ掛けられる声に聞き覚えのあるバラドラムは一瞬面倒くさそうな顔をするもすぐに表情を元に戻す。


「あら、久しぶりねクレドリック」  


 声の主の名はクレドリック・ゴルガン。魔位は候魔。バラドラムの一個下だ。


 クレドリックは自身よりも身分が上のバラドラムに敬語を使う様子もなく話しかける。


「久しいなバラドラム。それで、遠征の方はどうなったのだ?」


「順調に事をなしてきたわよ」


 バラドラムのその言葉を聞いたクレドリックは嘲るような笑みを浮かべる。


「その代償に左腕を失ったのか。随分と高くついたものだな」


 クレドリックの言葉にシューがムッとしたのが分かる。彼女は顔にこそ出さないものの雰囲気だけで感情が伝わってしまう。


 ムッとするシューをチラリと視線を送るだけで制すると、クレドリックに向き直る。その表情はいつものように余裕を称えていた。


「そうね。少しばかり手こずらされたわね。彼ら、案外侮れないわ」


「ふん。貴様が弱かっただけではないのか?」


「あまり自分の力を過信しない方が身の為よ?彼らは本当に強いから」


「いらん心配だな。この俺が負けるとでも?」


「負けずとも、手足の二、三本は覚悟した方がいいんじゃない?」


 バラドラムのその言葉にクレドリックは不愉快を隠しもせず表情に出す。


 バラドラムの言葉は言外に、お前は自分よりも弱いのだと見下すような言葉だ。腕を一本失った自分よりも多くの代償を払うと言われたようなものだ。


「俺が下等な人間如きに負けるとでも?」


 怒気を隠しもしないクレドリックに自分で挑発しておいてなんだが、直ぐに感情的になるクレドリックに内心苦笑しながらもバラドラムは答える。


「過剰な心配性が原因の忠告よ。話半分に聞いてくれれば良いわ」


「…フン。今回はそう言うことにしておいてやる」


 クレドリックは詰まらなそうに鼻を鳴らしてそう言うと踵を返して不機嫌に靴を鳴らしながら歩いていく。


 面倒くさい奴、と内心で毒づきながらもバラドラムも止まってしまった歩を進める。 


「あいつ、バラドラム様にタメ口だなんて…身分の差を分かっているのでしょうかね?」


 あいつと言っている時点でシューも身分の差を分かっているのか疑問を覚えるが、まあ、嫌いな奴にはそう言う呼び方になってしまうのも無理無からぬ事なのだろう。


 シューの隠しもしない嫌悪感に若干苦笑気味にバラドラムはシューの言葉に答える。


「まあ、クレドリックは私が嫌いなようだしねぇ。私を様付けで呼ぶなんてプライドが許さないのでしょう」


 なぜバラドラムの事をクレドリックが嫌っているのか、それはシューもよく知っていることなので改めて聞くこともなかった。


 それにシューも同じ境遇だ。嫌われる理由など思い出したくもないし、敬愛するバラドラムに思い出させたくもない。


 まあ、バラドラムがその事を気にするかと聞かれれば、気にしないであろうと言うのがシューの見解ではあるのだが、それでも、主の嫌な思い出を掘り起こすような家臣にはなりたくない。そのためシューは藪をつつかない。


 暫く歩いていると今度はやかましい声がバラドラムを呼び止める。


「見つけたぞ、バラドラム公!」


 声を荒げながらズカズカと歩み寄ってくるのは、今回の作戦において魔物どもの誘導役を任せたエルリ・カートンであった。


「聞いてないゾ!ヘルメーンにアリシラが戻っているだなんテ!」


 彼女は怒り心頭といった顔でバラドラムまで詰め寄る。彼女の服は所々ボロボロで、顔にも土埃が付いていてとてもじゃないが貴族が着るような服装には見えなかった。


 バラドラムは不思議そうな顔をしながら、詰め寄るエルリを見つめる。


「あら?泥遊びでもしてきたの?ダメよエルリ?ちゃんと着替えてこなくちゃ」


「ううっ…ごめんなさいってちっがぁウ!泥遊びなんてしてきてないし、そもそもお前だって汚れた服を着替えてないだろうガッ!」


 ムキーっと地団駄を踏みながら、見事に乗りツッコミをするエルリ。


 バラドラムはそんなエルリを見て楽しそうに笑う。


「笑うナ!」


「ふふっ、ごめんなさい…それで?ヘルメーンにアリシラが居たって言うのは本当なの?」 


 バラドラムの質問に、エルリは偉そうに腕を組むと言った。


「本当ダ。神罰魔法を使われタ。あんな事が出来るのはアリシラしかいナイ」


 実際には、アリアも神罰魔法は使える。バラドラムがこの目で見たのだからまず間違いない。だが、アリアはヘルメーンに魔物どもをけしかける際にはセリア大森林にいた。よって消去法から、必然的にヘルメーンで神罰魔法を放ったのはアリシラと言うことになる。エルリの言い分に間違いはなさそうだ。


 先程までの緩まった表情が嘘のように引き締められる。


「そう…それはちょっと厄介ね…」 


「ダロ?ボクも命からが……余裕で逃げ延びたけどナ!厄介なのには変わりナイガ」


 どうやら、エルリの服はアリシラの神罰魔法から逃げ延びる際にボロボロになったらしい。


 ちょっと見栄を張るエルリの言葉でそう予想するが、まあ、その言葉が無くても大方の予想はついたが。


「フン!一応報告はしたからナ!後のことはおまえが考えロ!じゃあナ!」


 見栄を張ったのがバレそうになったからか、エルリはそうまくし立てるとさっさと踵を返して歩いていってしまった。その際、形ばかりの「バラドラム公」と言う呼び名も「お前」と言う呼称に変わっていたが、それはご愛嬌だろう。  

   

 だが、エルリにはまだ訊きたいことがいくつかあったのだが、まあ、後ででもいいだろう。大きな一仕事を終えた後で時間はたっぷりあるのだから。それにエルリもボロボロな服のまま出いたくはないだろうし。


 そう言えば、左腕が無いことをエルリは聞いてこなかったが、大方、門番にでも聞き及んでいたのだろう。目の良い門番であればバラドラムがどういう恰好であったかなどあの距離でも分かるだろう。


 そんな事を考えながら、バラドラムはシューを引き連れ歩く。


 向かう先は魔王の所だ。


 この時間であれば魔王は謁見の間にでもいるだろう。そうあたりをつけバラドラムは謁見の間へと足を向ける。


 今回の作戦の報告と今後の予定を報告しておかねばならないのだ。


 バラドラムは自身の口角が自然と上がるのを自覚する。


 目的の物は手に入った。後は順調に事を進めるだけ。


 バラドラムは少し上機嫌になりながら歩いた。いつもの妖艶な笑みを張り付けているように見えるが、シューにはバラドラムが上機嫌であることが分かる。


 嬉しそうにしているバラドラムを見ると自然と自分も嬉しくなる。


 シューは無表情な顔をほんの少しだけほ綻ばせるとバラドラムの後を静かについて行った。

地道に過去話を加筆修正していきます。


細部が増えたり減ったりしています。


よろしければどうぞ。


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