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第十八話 調査⑤

感想、評価、ブクマーク等ありがとうござりまする。


王都襲撃編もいよいよ終盤にさしかかってきます今日この頃でございますが、皆様、もうお気づきでしょう。


そう、私、戦闘シーンを書くのが下手くそでございます!


どれくらいへたくそかと言いますとこれくらい(とてもすごい)へたくそにございます。


ですので、戦闘シーンで「これおかしいんじゃね?」「こんな動き出来なくね?」「作者変態じゃね?」と思われた方は感想にてご指摘願いますと作者としては大変うれしゅうございます。


と、前置きが長くなりましたね。


それでは本編をお楽しみ下さいませ。





 アリアが仲間を引き連れて戻ってから四十分が経過した頃、バルバロッセとシスタは肩で息をしながらバラドラムと対峙していた。


 バラドラムは飄々として鞭をだらんと手を下げて持っている。余裕綽々なその態度をバルバロッセは苛立たしく思いながらも納得せざるを得ない。


 それくらいにバラドラムは強い。将軍である二人を持ってしても二人でやっと攻撃を凌げている状態で、未だ反撃し倦ねているのが今の現状だ。 


「ははっ、よわったねえ…こっちは肩で息してるって言うのに」


「同感だ…全く、損な役回りだ」


「それじゃあアリア様に押しつければ良かったかな?」


「戯け。そんなことをしたらナタリアに半殺しにされる」


「ははっ、冗談だよ」


 気楽に会話をしているように見えるが二人は会話の間もバラドラムの隙を伺っている。だが困ったことにバラドラムからは隙らしい隙は見受けられなかった。


 だらんと手を下げているのにぜんぜん気は抜いていないのだ。それに、気を抜いたように見える態度とは裏腹に目は好戦的でいつでも攻撃を仕掛けられると言った感じだ。


「あら、除け者にしてくれないで?寂しくて泣いちゃうわぁ」


「抜かせ、魔人族が」


「いやねぇ、バラドラムって呼んでちょうだいよ」


 どこまでもおどけた調子のバラドラムにシスタは厳しい顔つきで言う。


「悪いけど、敵を名前で呼ぶほど慣れ親しむつもりはないよ」


「あら、それは残念。色男に名前を呼ばれるのって最高に濡れるのだけどね~」


「それと、僕は下品な女性は嫌いなんだ。悪いけど他を当たってくれると助かるね」


 シスタに下品と表されようとも余裕の笑顔を崩さないバラドラム。


 真意が読めない相手ほど扱いづらいものはない。


 苛立ちを押さえているシスタにバラドラムは口を開く。


「ふふっ、それにしても人間って本当におバカよねぇ」


「そうかな?野蛮で救えない君達よりは幾分かましだと思ってるけどね」


「野蛮さは人間と対して変わらないわよ?それにおバカなのはやっぱり人間の方よ」


 バラドラムはそう言うと歪んだ笑みを浮かべた。


 その笑みはバルバロッセやシスタが思わず身震いしてしまうほど不気味で、底冷えのする笑みであった。本の妖艶な美しさも全く感じられずただただ恐怖だけを見る者に与えた。


「だって、この薬の中味調べるのに四ヶ月もかかってるんですもの」


 そう言ってバラドラムが虚空から取り出したのは二人も良く見知った、人を魔物にする薬であった。


 半ば予想してはいたが、バラドラムが取り出したことで二人の中で予想は確信に変わった。 


「そうか、やはり貴様がその薬をッ!!」


「そうよぉ。私が盗賊に回したのよ。魔人族に匹敵する力を手に入れられると聞いたらすぐに飲んでくれたわ」


 ちゃぷちゃぷと薬の入った瓶を揺らすバラドラム。


「騎士団の子達も無理矢理飲ませたらほらこの通り」


 指をパチンと鳴らすとバラドラムの背後から一体の主が現れた。


「立派な立派なダンジョンの主にだぁいへぇんしん。ぱちぱちぱちぱち~」


 おどけた調子で手を叩くバラドラムを鋭く睨みつける二人。


 バラドラムは二人の鋭い眼光に気圧されるわけでもなくその顔に笑みを張り付けている。  


 そんな怪しい笑みを浮かべながらバラドラムはおもむろに振り返ると鞭を振るって主の首をいとも容易く落とした。


「でも、そこまで使い物にならなかったわね~」


 それを見た瞬間にシスタは走り出す。


 恐ろしい早さでバラドラムと距離を詰めると鋭い突きを放つ。


 バラドラムは後ろを向いていたにも関わらずそれを紙一重で避けると口にニタァっと邪悪な笑みを作る。


「あらぁ!今まで散々お仲間を殺しておいて、私に殺されたら怒るのね!貴方達が怒るのは筋違いではないの?」


「黙れ」


 シスタは突き出した槍を横に薙ぎ追撃するも、バラドラムは一歩内側に入り槍の銅を掴んで薙いだ一撃を止める。


 掴んだその手は力強くシスタの槍はびくともしなかった。


 だが、それでもシスタは焦ることなく間近に迫るバラドラムを睨み付ける。


「僕達は彼らの弔いのために剣を振るったんだッ!お前みたいに弄んでいたわけではないッ!」


「その通りだッ!!」


 シスタの言葉にバルバロッセが同意する。その同意する言葉はシスタの後ろからでは無く、バラドラムの真上から聞こえてきた。


 シスタが駆け出した少し後にタイミングを見計らい跳躍したのだ。


「我、剣に闘志を乗せる!その闘志は怒りにして正義!我が怒りはーーー」


 詠唱と共に振り下ろされようとされている大剣にバラドラムはバラドラムは流石に避けなくてはまずいと思ったのか後ろに下がる素振りを見せたが、槍から手が放れない。


 驚いて掴んだ手を槍を見てみると槍から茨が出ていてそれがバラドラムの手に絡み付いているのだ。


 実はシスタ槍は魔槍で、槍のどこからでも茨を出すことができるのだ。本当はあわよくば主を生け捕りにと思い持ってきた槍ではあったが思わぬところで役に立ってくれた。


「逃げられると思わないことだ」


「クッ!」


 茨はバラドラムの腕にまで絡み付いており、その棘が食い込み腕の至る所から血が出ていた。


 だが、そんなことに気を取られている場合ではない。


 バラドラムは避けるのは無理だと悟と、とっさに詠唱をする。


「我が身を守りたまえ!汝は我が盾にして隔絶の境界!《隔絶の盾》!!」


 全文詠唱だと間に合わないと感じ、省略詠唱であったがそれでも中級魔法程度の防御力は出せた。


「ーーー剣に意志は無し!されど我が怒りに共鳴し、真価を発揮する!《轟波剣》!!」  


 詠唱と共に振られた剣は赤色のオーラを纏い迫る剣は必殺の一撃であるとバラドラムは理解する。それと同時に中途半端に放った防御魔法では防ぎきれないと言うことも理解できた。


「チィッ!!」


 バラドラムは茨に捕らわれた腕を無理矢理に引き抜こうとする。中途半端に発動された防御魔法とは言え一瞬程度ならば時間を稼いでくれると思ったからだ。


 そのため無理矢理に腕を引っ張る。だが、かなりの力で締め付けられているのでバルバロッセの剣が防御魔法に衝突して稼がれる短い時間では引き抜けない。


「はあぁっ!!」


 気合いの一閃。その一撃はバラドラムが思っていた以上の威力を発揮し防御魔法を湖に張った薄氷のように容易く叩き割った。


 その剣の延長線上にはバラドラムの額。


「終わりだあッ!!」


 バルバロッセの怒りの一撃によりバラドラムの肉が絶たれる。


 血飛沫が舞いバルバロッセとシスタの二人にかかる。


 シスタとバラドラムの間に綺麗に割って入り、必殺の一撃を入れたバルバロッセ。だが、その表情は浮かなく顔をしかめている。


 シスタはバラドラムが間に入ったことで一撃を入れるところは見ていない。だが、それでも結果がどうなったのか分かる。


 消えてないバルバロッセの闘気。そして、先程より、より濃密に感じる殺気。


 はあと大きなため息を一つ吐くと、シスタはバルバロッセの後ろからずれる。ずれて開けた視界の先には左腕を肩口からバッサリと斬られ、ドバドバと血を流すバラドラムが立っていた。


 自身の肩を押さえて立ち尽くす彼女の顔は先ほど見せた焦りの表情は無く、出会った当初と変わらない妖艶な笑顔を見せている。だが、その目は先ほどとは違い明確な殺意を持っていた。


 その殺意の眼差しに戦慄を覚えるシスタ。だが、それを隠すように少し軽い口調で言う。


「出来れば…油断している時に倒したかったね…」


 いつものように振る舞おうとするも、その声は固く、緊張がありありと見て取れた。


「そうだな…出来ればそうしたかった…」


 バルバロッセも同じような声音でいた。


「流石に油断したわ……いえ…油断というよりは…慢心かしらね?」


 笑顔を崩さずそう言うバラドラム。だが、顔で笑っていても、その目と濃密な殺気で彼女が笑っていないのは一目瞭然であった。


「どちらにせよ貴方達を嘗めてかかっていたのは事実だわ。反省しなくっちゃ」


「そうだね…反省を踏まえて今日は撤退してくれても良いんだよ?」


「それ、冗談のつもりだったらあまり面白くないわ」


「だよね…」


 確実に本気になってしまったバラドラムにシスタはまたため息を吐く。


 だが、ここで悲観していても仕方がない。シスタは気を引き締めると、取りあえず茨に絡ませたまんまのバラドラムの左腕を締めて潰す。


 いくら回復力の高い魔人族とは言えここまでされれば流石に繋ぎ治すことは出来ないだろうと思ったのだ。それに、もし繋ぎ治すことが出来たとしても何らかの後遺症が残ることは確実だし、完全に繋ぎ治すにしても時間がかかる。どちらにしろ戦闘中には治すことが出来ないようにしたのだ。


 シスタは締め潰した左腕を遠くの方に放り投げる。


 この行為に流石のバラドラムも眉をピクリと動かす。


 シスタがここまでしているのは理由がある。シスタは出来るだけバラドラムの注意をこちらに向けておきたいのだ。シスタがに注意を向けてバルバロッセに一撃を入れてもらいたいのだ。


「さて、それじゃあそろそろ始めようか」


「…いいわ。先ずは貴方から…」


 そう言うと深く踏み込むバラドラム。


「貴方から殺してあげるわぁッ!!」


 笑みを引っ込め迫り来るバラドラム。


 猛然とシスタに肉薄し等間隔に刃が付いた鞭を振るう。


「クッ!」


 一撃一撃が中級魔法に匹敵するのではと思えるほどの威力で迫る凶鞭。それを、なんとか受け流していくシスタ。


 だが、流石のシスタでも完全に受け流すことは難しく、所々に浅く一撃を食らってしまう。 


 暴風の如く攻め立てるバラドラムに、防戦一方をしいられるシスタ。


 だが、今戦っているのはシスタだけではない。


「こちらもいるぞ!!」


 バラドラムの左側から迫るバルバロッセ。左腕の無いバラドラムには迎撃は出来ない。


 舌打ちをしながら回避行動をとるバラドラム。せめて腕があれば短剣を抜き放ち魔人族の膂力を持って受け止めることが出来るのだが切断された上にどこかに放られてはつなぎ止めることすら出来ない。


 それにこの二人がつなぎ止める時間をくれるとも思えない。それほどまでにこの二人は強かった。片腕を亡くしたバラドラムと同等くらいだろう。


 二人のコンビネーションはまるで双子のように息がピッタリであった。見た目、性格、年齢、背丈と違うところは上げればいっぱいある。だが、それでも二人は息ピッタリにバラドラムを追い詰める。


 バラドラムは感心と忌々しさを感じながらも思わず口角を釣り上げる。


(思った通りッ!やはりこいつが相応しいッ!!)


 求める物を見つけたバラドラムの気分は高揚する。


 もう腕を切られたことすらどうでも良い。片腕を失うに釣り合う物が手に入れられる。


 魔人族にとって危険の多い王都にわざわざ赴いた。魔人族として行動するバラドラムの目的は王都の襲撃が目的ではあった。だが、それはバラドラム個人の目的ではない。


 あわよくば達成できればいいな位のものであった。代用品は魔大陸にもある。だが、それではこちらにマイナスが生じてしまう。それでも良いのだが、マイナスは出来ればない方が良い。


 そしてそのあわよくばが目の前にある。


 自然と口角が上がるのは仕方のないことだろう。


「フフッ、ハハハハハハハハハハハハッ!!」 


 哄笑しながら二人の猛攻をかわし、いなし、時には反撃する。

  

 鞭は宙を縦横無尽に舞い、猛攻を繰り出す二人に迫る。


 だが、片腕でバランスのとれていないバラドラムの攻撃は、狙ったところと少しずれた場所に繰り出される。


 それでも、的から外れ空を切ることがないのはバラドラムのセンス故だろう。


 三人の攻防は、一見狂ったよう哄笑を上げるバラドラムが押されていると思われる。だが、実際に押されているのは二人の方であった。


 もうすぐバラドラムとの戦闘開始から一時間が経とうとしている。早朝からの行軍に、曲がりなりにも主との戦闘。そして、バラドラムの放った毒の影響が体の限界を近付かせている。


 向こうは魔人族。それも公魔だ。魔位で最上位の魔人族。それは魔人族でトップクラスの戦力を誇ると言うこと。片腕が無いとは言えまだまだスタミナもある。


 そろそろ決め手を入れなければ体力切れで負けてしまうだろう。二人ともそれが分かっている。そのためかなり焦っていた。


 そう考えた瞬間、後方から暴風が吹き荒れる。


 吹き荒れる暴風にバラドラムの鞭が乱れ地面を穿つ。


 なぜ暴風が吹き荒れるのか。そんなことは今はどうでも良い。そんな事を気にしている場合ではないのだ。今やらなくてはいけないのはこの好機を利用しバラドラムを確実に倒すこと。


 シスタは踏み込む。この好機を見逃してはいけない。見逃せばたちまち二人の勝機は薄れる。


 乱された鞭の合間をうまく一直線に跳びバラドラムの懐に飛び込む。


「終わりだッ!!」


「守れッ!《空盾エアシールド》!!」


 シスタの渾身の刺突をバラドラムは略式の防御魔法で迎え撃つ。


 だが、苦し紛れの防御魔法でシスタの渾身の刺突を防げるわけがないのだ。バラドラムの防御魔法をあっさりと突き破り槍はバラドラムの腹に食い込む。


「がっはっ!?」


 槍を食い込ませるとシスタは茨を出し肉に食い込ませ縛り付ける。


「離しはしないよッ!!」


 これでバラドラムは逃げられない。だと言うのにバラドラムの口は歪んだ笑みを浮かべている。


 その笑みにゾッとした寒気を覚える。


「離さなくて結構よぉ!!」


 バラドラムが右手に持った鞭を振り下ろす。


 先程よりも威力は弱いが暴風が吹き荒れている。ならば鞭は風になびき当たることはないだろう。


 そう踏んだシスタは槍を持った手に力を込める。だが、その判断は間違いであった。


「避けろシスタァッ!!」


 バルバロッセの切迫した声が響く。瞬間、シスタが予想していたよりも早く凶刃が迫る。とっさに回避行動を取ろうとするが時既に遅くバラドラムの放った一撃がシスタの左肩に食い込む。


「お返しよおッ!!」


 ニタアと獰猛な笑みを浮かべバラドラムがを振りきる。


 シスタの左腕はいとも容易く断ち切られた。


「グッ、ああああああああああぁぁぁぁぁッ!?」


 槍を手放し左肩を押さえるシスタ。


「貴様あッ!!」


 声を上げながらバルバロッセがバラドラムに迫る。


 バラドラムの腹に刺さっていた槍は、シスタが手を離したことにより効力を失いバラドラムによって容易く引き抜かれていた。


 バルバロッセの猛攻にバラドラムは剣で応じる。


 刀身には等間隔に切れ目が付いている。バルバロッセはバラドラムがシスタを斬るところを見ていた。等間隔に刀身が付いていた鞭と言う時点で念頭に入れておくべきだったのだ。そう、バラドラムの鞭はただの鞭ではなかった。蛇腹剣だ。


 普段は剣で、刀身が分裂し中に仕込まれていたワイヤーが伸びて鞭になる。バラドラムはその逆で、普段を鞭として使っていたのだ。


 バルバロッセは臍を噛みながらも剣を振るう。


 魔人族は片腕を切られたところで、尋常ならざる再生能力で止血が出来る。だが、シスタは違う。シスタは人間だ。止血をしなくては出血多量で死んでしまう。


 その事がバルバロッセに焦りをうむ。


 その焦りが剣に伝わる。


 焦りを含んだ剣は、バラドラムにより容易くいなされてしまう。


「しまっ!?」


「焦っちゃだめよぉバルバロッセェ!!」


 歪な笑みを浮かべながらバラドラムはバルバロッセの胸に剣を突き立てる。


「グッ!」


 バルバロッセの手から剣がするりと抜け落ちる。急速に力が抜けていき剣を持つことが出来ない。今はばだ立っているも胸に刺さった剣を支えにしている状態だ。


 バルバロッセの胸に根元まで刺さった剣をバラドラムは手放す。手を離されたことにより支えを失い膝を着くバルバロッセ。


「フフッ、まだ死んじゃダメよ?」


 バラドラムは虚空から空の瓶を取り出す。その瓶には無数の魔法陣が刻まれていた。


 右腕の袖を口を使い捲る。


「こういう時左手無いと不便ねぇ」


 バラドラムは左腕をどこかへ放り投げたシスタを見やる。彼は、意識こそ朦朧としてきているが目は力強くバラドラムを睨む。


 その目からは尋常ではないほどの殺意を感じる。   


 その視線にバラドラムは身悶える。


「嫌だわ~そんなに熱烈に見つめられちゃうと濡れちゃうわぁ」


「バラ……ドラム………ッ!!」


 歯を食いしばりながらもシスタは仇敵の名を呼ぶ。その声にも殺意を感じる。


 だが、バラドラムは死にかけのシスタに警戒する事もなくバルバロッセに視線を戻す。


「さて…時間もないことだし始めちゃいましょうか」


 そう言うとバラドラムは詠唱を唱える。


「我は求む。彼の者の強靱なる魂。彼の者、器との繋がりを絶ちその魂を器より解き放つ」


 バラドラムが詠唱を始めると、バルバロッセのいる地面に魔法陣が浮き出る。浮き出た魔法陣は淡く光り輝きバルバロッセを包み込む。


「放たれる魂、散ることはなく、時の流れに風化することもない。器が朽ちて果てようとも魂は気高くあり続ける」


 続き、バラドラムの持つ魔法陣だらけの瓶が淡く光り輝く。


「あり続ける魂を我は求む。我求む故に汝我に答える」


 バラドラムは光り輝く両者を見ると歪な笑みをより一層深める。


「器を捨てよ《抜魂ばっこん》!!」


「ああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」


 最後の詠唱が終わると同時に絶叫するバルバロッセから淡く、青い光が抜け出てくる。バルバロッセから抜け出た光はふよふよと宙を漂いバラドラムの持つ瓶の中へと入っていく。


 すべてが入りきるとバラドラムは蓋をし、その蓋に札のような物を張り付ける。


「ふう…これで終わり」


 バラドラムは満足げな顔をするとそう呟く。


「なに…を……」


 呆然とその景色を見ていたシスタが漸く口を開く。


 バラドラムは歪な笑みを潜め、いつものような妖艶な笑みに戻ると言った。


「オドを取り出したのよ」


「オド…を?」


 何のために。そんな考えが顔にでていたのか、はたまたバラドラムが察しがいいだけなのかは分からないが、彼女は気分よく説明をする。


「強いオドが必要だったのよ。あれを復活させるためにね」


「あれ…だと?」


「あら?なんだか分かってない様子ね。復活するのはーー」


「なんだ………これは?」


 説明をしようと口を開きかけたバラドラムを遮り、高く澄んだ声が響きわたる。


 声の方を見ると、そこには夜であるにも関わらず輝きを放つ銀の髪と、夜の闇に浮かび上がる赤い双眸の持ち主が立っていた。そう、アリアだ。

 アリアはこの場の光景を呆然と見つめると、もう一度言った。


「なんだ、これは?」     


  





   


   


     






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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字報告できないようなのでこちらで、 52行目あたりで 「詠唱とともに振り下ろされた大剣に」 の直後、 「バラドラムはバラドラムは」と言うふうに 「バラドラムは」が2回連続入って…
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