第六話 王城へご挨拶
そう言えば題名がよくよく考えたらうーんだったので戻しました。
何かいいものは無いのだろうか…。
評価や感想、ブックマークのほどありがとうございます。
王都に着くとアリア達はひとまず先に王城へと向かった。
王城に行く道のりを馬車の窓から眺める。街並みは中世ヨーロッパのような外観で人々が多くとても賑わっていた。
国が豊かな証拠なのだろう、皆一様に笑顔で幸せそうな顔をしていた。ただ、その笑顔は少し緊張感を含んでいた。何かあったのだろうかと気になるところだが今は王城に向かうのが先だ。その後にでも聞いてみよう。
いっそのこと街に繰り出して皆で観光するのも良いかもしれない。
「国王との謁見の後皆で街を観光でもしようか」
アリアの提案にミーナが嬉しそうに声を上げる。
「良いですね~楽しみです!」
「どこ行きます?あっ、デザートが美味しいお店とか行きません?」
「良いッスね!甘いもの~早く食べたいッス!」
「服を見て回るのも良いかもしれませんね。アリア様に似合う服を選んで見せますよ」
メイドちゃんズが街のどこに行くかを話しているとクレアが言う。
「申し訳ございませんがそれは無理ですわ」
「えっ、どうしてです?」
ミーナが困惑の声でクレアに聞く。クレアは若干申し訳なさそうな顔をすると言った。
「その…父がアリア様が来るのを大変楽しみにしておられましてですね」
「一日返してもらえないとか?」
「そう言うわけではありませんの。実は…」
一度言葉を区切るとクレアは言った。
「街中の有名店の料理人や仕立て屋などを一気に雇ってしまったので、今行きたいと話していたお店は今日はお休みなんですの。それで、お城にいればそれが全部楽しめてしまうんですの」
「つまりは…街に繰り出しても何も無いと?」
「はい…すみません…父が張り切り過ぎてこの様なことを…」
沈黙が馬車の中を支配する。
これでアリアの一日の楽しみは消え失せた。
観光名物と言うのは観光をしながら楽しむものであって、決して同じ場所で全部を楽しむというのは邪道だとアリアは思っている。
街並みや雰囲気を楽しみながら観光名物を楽しむ。それが一番ベストなのだ。現場には現場の良さがあるのだ。
それをメイドちゃんズも理解しているのだろう。見るからに気落ちしている。
だが、まあ仕方ないだろう。アリアはいつ現れるか分からないような存在だ。そんな存在に会えるとなれば張り切ってしまうのも仕方のないことだ。
「はあぁ…」
アリアは小さく溜め息を一つ吐く。小さくても沈黙が支配する馬車の中ではよく響いた。
クレアが小さくビクッとなるのが分かる。
アリアは努めて明るく言い放つ。
「まあ、なんだ。もう準備されているのなら仕方が無い。ご馳走になろうじゃないか」
その言葉にクレアは見るからにほっとしたような顔をする。
「ありがとうございます」
「いや、こちらも可能性を考慮していなかったからな。こちらから豪奢な料理はいらんと手紙に書いておけばよかった」
今更になって本当にそう思う。
だが、そうなってしまった物は仕方ない。仕方が無いなりに楽しむしかないだろう。
アリアは未だ少しだけ気落ちしているメイドちゃんズに苦笑を漏らしながら言う。
「ミーナ達はお金を渡すから国王との謁見の後街に繰り出してくるといい。食べ物はなくても観光名所ならあるだろう?」
アリアはスティにそう問うと、スティは笑顔で答える。
「はい。水族館や動物園、劇場や他にも可愛い小物が売っている雑貨屋なんかもあります!」
「そうか。それじゃあ、スティとイルには案内兼護衛を頼みたい。私とロズウェルは抜けられそうにないからな」
「了解しました!誠心誠意勤めさせていただきます!」
スティはそう言うと敬礼する。スティの敬礼を満足気に見るとアリアはメイドちゃんズに言う。
「と言うわけでお前達は街の観光な」
「い、いいんですか?」
おずおずと言った感じで聞いてくるセラにアリアは笑顔で答える。
「おう。充分楽しんでくると良い!」
アリアがそう言うとメイドちゃんズの顔がパッと明るくなる。それにアリアも自然と頬がゆるむ。
「「「「ありがとうございますアリア様!」」」」
声をそろえてお礼を言うメイドちゃんズに少し茶化したように言う。
「迷子とかになるなよ?って二人がいるから問題無いか」
「はい、王都の道は大抵覚えてます」
「そうか」
メイドちゃんズの予定が決まったところで馬車が王城に到着した。
門番にはクレアの顔パスで通ったので手紙を見せないで済んだ。
門を抜けて城の前で馬車が止まる。
「ここからは徒歩になりますのでお降り下さい」
扉を開けてロズウェルがそう言うので順番に馬車を降りた。
「ん~~~~~~っ!」
座りっぱなしで固まってしまった体を伸びをしてほぐす。
「それでは行きましょう」
ロズウェルの先導で王城に入っていく。ロズウェルが先導すると言うことはロズウェルはここに来たことがあるのだろう。
どういうときに来たのか興味はあったが後で聞いてみよう。
王城の中を暫く歩くとロズウェルは一つの部屋の前で止まる。
ロズウェルがノックをすると中から「入れ」となかなかにかっこいい声が聞こえてきた。
「失礼します」
ロズウェルが扉を開いて手でアリア達に入るように促す。
まずアリアが入る。次にクレア、バルバロッセ、イルとスティ、メイドちゃんズ、最後にロズウェルが入り扉を閉めた。
「ようこそアリア様。俺がメルリア王国国王フーバー・メルリアだ」
椅子に座って笑顔で言うフーバー。椅子の前にある机には書類の山が積んであるので執務の最中だったのだろう。
フーバーは金の髪をオールバックにしていて顎には無精髭が生えている。目はクレアと同じ金色だ。
顔はワイルド系のイケメンだろうか。野性味あふれるとはまた違うがまあそんな感じだ。年は三十代前半くらいだろう。
アリアは綺麗に一礼すると挨拶をした。
「お招きいただきありがとうございます陛下。私アリア・シークレットと申します。以後お見知り置きを」
「ああ、ああ、堅苦しいのは貴族だけで充分だ。普通にしてくれて構わないぞアリア様」
「そうか。ならそうさせてもらおう。私もアリアで良い。大の大人からの様付けはむず痒い」
「それじゃあそうさせてもらうよ」
意外とあっけからんとした人だなと思った。クレアのあの話からもっと厳格で格式にうるさい人かとも思ったがそうでもないらしい。
締めるところは締めて緩めるところは緩める、と言った所だろうか。
そんな事は今は良いかと思いアリアは口火を切る。
「さて、挨拶も終わったことだしこの娘達はもう良いだろ?」
「ああ大丈夫だ。アリアが残ってくれれば話はできる」
「と言うわけだ。皆は街に言っていても構わない。イル、スティ。この娘達をよろしく頼む」
「「お任せ下さい!」」
イル&スティ+メイドちゃんズはこれにて退室。
ロズウェルにも視線で「お前はどうする?」と聞いてみたがどうやらここにいるようだ。
執務室に残ったのはアリアとロズウェル。それから先程のことの報告のために残ったクレアとバルバロッセだ。
フーバーにソファーに座るように進められたので遠慮する事無くソファーに座る。
「さて、まずは。アリア、王都ヘルメーンにようこそ…と言いたいところだが時期が悪かったな」
「どう言うことだ?」
フーバーの言った意味深な言葉にアリアはその意味を問う。
フーバーは先程までとは打って変わった真面目な顔つきになると言った。
「近頃賊が多くてな。街でも盗難や殺傷沙汰はよく起きてる。だから時期が悪かった、とな。それにーー」
「父様、その事ともう一つお耳に入れたい話がございます」
クレアがフーバーの言葉を遮る。話を遮るのは誉められたことではないがクレアの報告の内容は一刻を争うのだ。本当は走って直ぐにでも報告をしたかっただろうにわざわざアリア達に合わせてくれたのだ。そのため遮る形になってしまうのも仕方が無いと言えるだろう。
だが、それを知らないフーバーは顔をしかめてそれを咎めようと口を開こうとするが、それをアリアが止める。
「フーバー許してやれ。一刻を争うかもしれないんだ」
アリアのその言葉にフーバーは怪訝な顔をするも口を閉じた。
「クレア報告を」
「はい。実はーー」
クレアは今までの経緯を簡潔にだが、重要な点を押さえて知らせた。それを聞いたフーバーの顔は見る見るうちに険しい物になっていく。
報告をすべて聞き終わるとフーバーは「はあ…」と一息吐くと言った。
「まずは大事無い様で何よりだクレア。バルバロッセも苦労をかけた。亡くなった騎士の方は王家がきちんと遺族に報告した後葬式を上げよう。資金は俺の資材で出す。それから狩り場の方だが冒険者ギルドに調査の依頼を出しておいてくれ。それと狩り場にいる連中に引き上げるように伝えてくれ」
「かしこまりました。直ぐに準備をいたします」
「バルバロッセ、ロズウェルを連れて行け。一騎当千がいたほうが便利だ」
「…しかし…」
バルバロッセはアリアとロズウェルを見る。ロズウェルの仕事はあくまでもアリアの護衛兼世話係だ。そのため本人がアリアの本を離れるのを拒むのではないかと思ったのだ。それに、いくら王ともいえど女神の護衛をただのパシりに使うのはどうかと考えたのだ。
だが、その心配は杞憂だった。
アリアからも同意の声があがったからだ。
「ロズウェルついて行け。またさっきみたいな賊に襲われるかもしれない。お前がいた方が被害は少ない。私は暫く城から出ないから安心しろ」
「かしこまりました。陛下、アリア様をよろしく頼みます」
「おうおう、任せとけ」
「それでは行きましょうかバルバロッセ殿」
「う、うむ。かたじけない」
ロズウェルはバルバロッセを伴って部屋を出て行った。扉が閉まるのを確認するとフーバーが口を開く。
「さて、クレア。お前も一度湯浴みをして着替えてくるといい。夕頃にはパーティーを開く予定だからね」
「分かりました父様」
クレアはそう言うと一礼して部屋を出ていこうとする。扉に手をかけて開いたところでフーバーがクレアを呼び止める。
「クレア」
「はい?」
「よく頑張ったね。お疲れ様」
フーバーの労いの言葉に照れ臭いのか嬉しいのか、多分その両方なのだろう。顔を赤くしたクレアは優雅に一礼する。
「ありがとうございます父様」
そう言うと今度こそクレアは部屋を出ていった。
部屋に残ったのはアリアとフーバーの二人だけとなった。
フーバーは険しかった顔を戻すと言った。
「今回は娘や騎士達を助けてくれて感謝するよアリア」
「王都に来たついでみたいな物だ気にするな」
「ははっ、ついでで王女を助けるなんて女神はスケールが違うな!」
アリアの物言いに楽しそうに笑うフーバー。だが、その顔は直ぐに真面目な物に戻った。
「アリア。ついでのついでで頼みたいことがある」
「ついでのついでってのも斬新だな~。…で、何を頼みたいの?」
「今回の件の解決を依頼したい」
「どれの事かな?怪物じみた怪力を持った盗賊集団?それとも、狩り場で増えた主の事?」
「その両方を頼みたい」
アリアは「う~ん」と唸って迷っている仕草を見せる。実際の所請け負っても良い。国を救うのが女神の仕事ならばこれはアリアの仕事なのだろうから。
それにこちらにはロズウェルがいるしアリアだって戦える。しかも国がバックアップをしてくれるのだからなおのこと成功率は上がる。
ただ、幾つか腑に落ちない点があった。それが何なのかを考えているとフーバーが声を発した。
「頼む。国民の命がかかってるんだ」
アリアは頭を下げるフーバーを見てなる程と合点がいった。
「まあ、良いけどね。これって女神の役目っぽいし。それに、国民のために頭を下げる男のお願いを無碍にも出来ないしね」
「そうか。助かる」
ほっと一息付くフーバーにアリアは言う。
「それにしても考えたね」
「…何がだ?」
「ん~?いやね。おかしいと思ったのよ。何で盗賊の被害が多い時期に私を呼んだのかってね。普通なら呼ばないでしょ?そんな危ない時期に国にとって大事な女神様を」
「……」
「本当は怪力盗賊集団の事件って今日の一件だけじゃなかったんでしょ?もう一、二件くらいはあった。だからあえて私、いや、ロズウェル(・・・・・)を呼んだんだ。国にとっての一大事になるかもしれない事案が発生したから王国最強の剣士を呼び戻したくて私に手紙をよこした。時期的にも不自然じゃなかったからそこも都合が良かったんだね。まあ、魔物のほうは初耳っぽかったけど」
アリアの推理を聞き終わるとフーバーは「はあ~」と長い息を吐いた。
諦めたように椅子に寄りかかり天井を仰ぎ見ると言った。
「そうだよその通り。ったく。ただのガキかと思ったらとんでもねえ奴だな」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
「おまけに食えないと来てやがる。…はあ~…どこでバレたんだかな~」
それは独り言のようだがアリアへの質問なのだろう。それに気づかないアリアではないので答える。
「一番の原因は私の最初の言葉に対する間だね」
「間か…」
「うん、だって私鎌掛けただけだし」
「鎌掛けたのか…って鎌掛けただとっ!?」
フーバーはがばっと起きあがると机にダンッっと手を突いた。
「確証無かったからね。最初ら辺とかもろ鎌掛けだよ」
アリアの余りにもあっけからんとした答えにフーバーは脱力して机に突っ伏してしまう。突っ伏してしまうことで書類の山が崩れたがそんな事はどうでも良いらしい。
崩れる書類の山を見ながら「私は絶対手伝わない」と決めつつ聞いてみる。
「それで、フーバーはどこまで把握してるわけ?」
「……取り合えずはさっきの説明とお前の推察通り二件の怪力盗賊集団事件だ。複数の主の話は初耳だった」
どこか投げやりな態度でそう言うフーバーにアリアは言う。
「まあ、安心しろ。請け負ったからにはきちんとやるさ」
この件を対処しないと国が荒れそうだし。それにこれで国が滅びたら役目をこなせてないわけだし何より寝覚めも悪いし。
「取り合えずは皆で要相談だな。ロズウェルが戻ってきてから対処に当たろうと思う」
アリアはそう言うと席を立って扉の前まで歩く。
「それじゃあよろしく頼むわ…」
「ああ、頼まれた…それとな」
未だ机に突っ伏しているフーバーにアリアは茶目っ気たっぷりの顔で言う。
「掃除頑張れ」
そう言うとアリアは執務室から出て行く。
扉を閉めるときに「待てアリア!手伝ってくれ!」と聞こえた気がしたが気にしない方向で行こうと思う。
聞こえないかもしれないがアリアは呟く。
「悪いなフーバー。書類整理は役目に入ってないんだ」
そう言うとアリアは歩き出す。
特にやることもないので王城を探検しようかな。




