第二話 手紙
次話に抵触する感想には返信出来ません。ご容赦下さい。
また、ブックマークや評価ありがとうございます。
大変励みになっております。
お風呂からあがり髪の毛を乾かした後食堂に向かう二人。
そう、ミーナがお風呂に入っていた理由だが彼女もロズウェルに稽古をつけてもらっているのでその稽古の後だったらしい。それにしても結構な長風呂だとアリアは思う。
また、稽古をつけてもらっているのは彼女だけではない。他のメイド達も皆一様に稽古を付けてもらっている。
その理由はやはり先日の一件が理由だった。彼女達は皆一様に被害者だ。そのため危機管理能力を向上させたいと思うのは何ら不思議なことではなくむしろ当然と言ったところだ。その事をロズウェルも理解しているので彼も快く稽古をつけてくれている。アリアも護身術くらいなら教えられるので教えている。
全員日に日に剣の鋭さ、技のきれなどが増していっているのはコーチをしているので分かる。
技を覚える度に皆生き生きとした表情になっていってるのは自分が成長しているのを実感できているからかもしれない。
考え事をしてる間に食堂に着いた。扉をミーナが開けアリアを先に入れる。こういったメイドとしての所作もロズウェルが教えてくれている。
ロズウェルは万能だなと常々思っていたがロズウェルはアリアの予想の更に上を行くようだ。
「アリア様!お疲れさまです!」
「お疲れッス、アリア様!」
「お疲れさまアリア様」
アリアが入るとメイドちゃんズが声をかけてくる。丁度良いので紹介しよう。
今魚のムニエルをテーブルに並べているのがハイロの妹のユニだ。肩口で揃えられた綺麗な黒髪に活発そうな目をした可愛い女の子。年は十四とミーナと同い年。胸は…まあ、言わずもがな年相応の大きさだ。
続いて、今スプーンやフォークなどの食器のたぐいを並べているのがチナ。黒茶色の緩くウェーブのかかった髪を肩胛骨辺りまで伸ばしている。顔はこれまた活発そうな顔には少しそばかすがあるがそれがまた彼女の可愛さを引き立てている。それと、彼女も獣人だ。彼女は犬人族。垂れた耳にふさふさな尻尾のミーナとは違った可愛さを持ったケモミミ娘だ。年は十三とメイドちゃんズでは一番年下だ。
最後にサラダを並べているのがセラだ。セラは綺麗な赤毛をしており、雰囲気もお嬢様と言った感じの女の子だ。彼女は孤児らしく育ての母親もこの間の騒動で亡くなってしまったらしい。年は十五でメイドちゃんズで一番年上だ。
先ほどの挨拶は上から、ユニ、チナ、セラだ。
「ああ、ありがとう」
彼女達に出迎えられながらも自分の席に着くアリア。
暫くするとロズウェルも食堂に来た。タイミング良く準備が整ったのでそのまま皆で食事を始めた。
今でこそ皆席に着いてはいるが、初めは席に着くことを固辞された。だが、それだとアリアの居心地が悪いので何とか言いくるめて席についてもらい食事をとった。
最初は緊張で料理の味が分からなかったみたいだが、今では自分達の作った料理に舌鼓をうてるほどに慣れている様子。アリアとしては喜ばしい限りである。
「うん、このムニエル我ながら美味しくできてるッス!」
チナは嬉しそうにそう言う。それにつられアリアもムニエルを食べてみる。チナの言うとおりなかなかに美味しかった。
「うん、チナの作ったムニエル美味しいよ」
「本当ッスか?嬉しいッス!」
喜色満面の笑みでそう言うチナにアリアも思わず笑顔になってしまう。
彼女達はここに来た時はかなり萎縮してしまっていて今みたいな自然な笑顔を向けてくれたりはしてくれなかった。チナの喋り口調も彼女は最初は直そうとしていたが、所々で口調が出てきてしまっていた。その事に落ち込むチナ。他の面々も何かある度に顔を青くしたりしていた。
そんな彼女等にアリアは「別に喋り口調は変えなくて良いよ。それに変に萎縮する必要もない。私はお前達を家族だと思って接していきたいと思っている。だから、変に気負うな」と言った。
そう聞いたチナは「そんなわけにもいかない」と言っていたが、アリアがしつこく言い続けるとチナの方が折れてくれた。最初は慣れない様子だったが段々と慣れていき今ではこの調子だ。
他の面々も変に気負うことは無くなった。今では一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たりと言うこともしている。姉妹がいたらこんな感じなのかなと思ったりしている。
いつの間にか女所帯になっておりロズウェルが少々肩身の狭い思いをしたりもしてるので次ぎ雇うなら男性にしようかとも考えている。
とまあ、そんな事もあり彼女等がアリアに打ち解けてくれたのはアリア自身も嬉しい限りなのだ。
ロズウェルもムニエルを口に運びうんと満足そうに頷く。
「確かに、よくできています。頑張りましたねチナさん」
「師匠にそう言ってもらえると嬉しいッス!」
ロズウェルにそう言われるとアリアに誉められたとき以上の喜びを見せるチナ。
「…師匠はやめて下さい」
苦笑をもらして自身の呼び名に訂正を求めるロズウェル。
「いえ、師匠は師匠ッス!これからも師匠と呼ばせてもらうッス!」
それに笑顔で返すチナ。このやりとりももう何度目になるか分からない。
ロズウェルが師匠と呼ばれているのは、彼女達に色々な事を指南しているからだ。彼女達はそれぞれ呼び名は違えど同じ様に呼んでいる。
それに年上のような感じからそう呼ぶことに抵抗がないのかもしれない。
そう考えるとふと思うところがある。ロズウェルの年齢はいくつなのだろう、と。
まあ、気になることは聞けばいいだけだ。
「なあロズウェル」
「はい」
「ロズウェルっていくつなの?」
「十六です」
「「「「「十六っ!?」」」」」
思いも寄らぬ数字にロズウェル以外が声をそろえて驚きの声を上げる。
その事に若干面食らいながらもロズウェルは答える。
「ええ…十六歳ですが…何か?」
「え、いや…何かと言われれば何でもないんだが…いや、やっぱり何でもあるな」
十六歳でこの落ち着きよう。しかも何でも出来てそして更には王国最強。
「…本当に十六?」
「本当でございます」
十六と言うことはセラと一つしか変わらない。セラも口をあんぐりと開けて驚いている。セラ、淑女がしていい顔じゃないぞ。
「それにしては随分と大人びてるな…」
「はい、兄達からも子供甲斐の無い奴とよく言われます」
「だろうな…」
まさかの事実に驚きつつも食事を再開させるアリア。
「そうでした。アリア様、王国よりお手紙が届いております」
「手紙?内容は?」
「私も封を開けてはいませんので内容は分かりません。ですが、だいたいの予想はつきます」
「予想で良い、言ってみて」
「はい。恐らくは王都に来てみてはいかがか、と言う内容でございましょう。時期的に見てもまず間違いないかと」
「ふむ…」
王都か。
自分の住む国の王都が一体どういう所なのか実際の所気になってはいる。だが、アリアには足がない。馬も持っていなければそれに準ずる動物も持ち合わせてはいないのだ。馬がいなければ馬車も無いのだ。
「足はどうする?馬なんぞ家にはいないぞ?」
「手紙を送れば向こうから迎えを寄越すでしょう」
「ミーナ達はどうする?」
「連れて行けばよいかと。幸い、この周辺には結界を張っておりますので魔物も近付いてはこれません。それに私の使い魔も置いていくので安全面も問題ないかと」
「使い魔?」
聞いたことのない単語に頭の上にハテナマークを浮かべるアリア。
「はい。使い魔とは使役された魔物の事を言います。その使い魔を番犬替わりにここに置いていきます」
「強いのか?」
「そこらの魔物ならば一凪で倒せます」
「ふむ、それなら安心だな…そうだな、王都に出向いてみるのも良いだろう。よし、ロズウェル。昼食の後手紙の内容を確認した後王都にそちらに出向く旨を伝えてくれ」
「かしこまりました」
そう言うとご飯の続きをするアリア。
うむ、どの料理も絶品だ。
メイドちゃんズの作った料理に舌鼓をうちながら、これから訪れる王都に思いを馳せるのであった。
昼食の後アリアはロズウェルが持ってきた手紙に目を通した。内容はロズウェルの予想通り「そろそろ王都に来ないか?」と言う内容だった。
もっとも、内容はもっとかしこまった文面ではあったが要約するとだいたいこんな感じだ。
手紙をテーブルに置きロズウェルに言う。
「行く旨の手紙を送ってから何日で馬車がくる?」
「向こうに手紙が着くのに二日、馬車がこちらに来るのに三日とみて五日後でしょうか」
「五日か。それじゃあゆっくり準備が出来るな。そう言えば、手紙はどうやって送ってるんだ?」
「伝書鳩を使っております」
「伝書鳩とはまた古風な…」
アリアの呟きにロズウェルが不思議そうな顔をする。
「この国では主流ですが?」
「何でも無い。ただの独り言だ」
こちらに携帯などあるわけもないので当然と言えば当然なのだろう。
「そうですか。ただ、この国にも遠くの人と通信できる魔道具がありますが一般家庭には流通していないのです」
「へ~。そんな便利な物もあるんだな」
「はい。ただし、声を届かせる距離は魔力量に比例しますので魔力が少なければそんなに遠くにとばせないのです。それと、それなりに大きいので持ち運びには不便なのです」
「ふ~ん」
確かに戦場とかに持って行くにはいささか不便ではあるな。拠点間の連絡には向くかもしれないが、個々で持つには不便だ。
「それで、五日間どうする?いつも通り過ごすか?」
「そうですね…アリア様には礼儀作法を習ってもらいます」
「うへ~面倒臭い」
「面倒ですが覚えてもらわなくては困ります。相手は王族なのですから」
「はいはい、了解しました。まあ、とりあえずはいつも通りと言うことだな」
面倒だなと思いながらもアリアは準備を進めるのであった。




