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第七話 人魔戦争Ⅰ

先日、百万PV突破いたしました!

感無量です!

ありがとうございます!


本編の方はなにやらのっけから山場を迎えておりますが……すみません。自分の構成力の無さにはげんなりします。


プロットは頭の中にあるぜ!とか、カッコつけてました。プロットの入ってる頭が出来損ないなのになにを自信過剰になっているのやら。


ともあれ!これからもよろしくお願いします!


それでは、本編へゴー!

 時は遡り二年前。


 アリアはフーバーに転生のことは伏せ、大戦が起こることを話していた。


 それを聞いたフーバーは、アリアの言葉を疑うこともなく信じ、大戦に向けて魔王軍に悟られないように秘密裏に準備を進めた。


 が、しかし、アリアの示した年を過ぎても魔王軍が攻めてくることは無かった。そこから更に二年経っても魔王軍が攻めてくるという知らせは受けなかった。


 そのことがあり、王城の中では事情を知っている者の雰囲気はピリピリしており、城内は気まずい空気が張り詰めていた。


 二年も緊張状態が続いたが、今日に至る前にアリア達は女神の言ったことが起こらなかったことに対して話し合いをした。


 そこで出た結論、と言うよりは仮説と言った方がいいだろう。とにかく、その時の話し合いで出されたとりあえずの答えは『アリアの存在が正しい歴史を変えている』と言うものだった。


 もともと、アリアはこの時間軸には存在しないはずの者だ。


 他の勇者と同じで六年後にこの世界に訪れるはずだったのだ。それが今の時代では確定した未来であったのだ。


 だが、アリアはその確定した未来から外れた。


 確立されていた正しい歴史は改変され、四年前にイレギュラー的存在であるアリアがやってきた。


 アリアがそのまま大きな歴史の流れに介入しなければ未来はそこまで大きな変化は起きなかっただろう。確定された未来通り、二年後に大戦は起きロズウェルは死んでいた。


 だが、そうはならなかった。アリアはロズウェルと出会い、魔人族と戦い、歴史に大きく介入し、おそらく改変もしているだろう。


 その結果今のような、アリアの教えられていない未来が訪れたと言うわけだ。


 アリアはこのような可能性になることを完全に考慮していなかった。女神に教えられた未来がそのまま訪れるとばかり思っていたのだ。


 アリアは自身の思慮の無さに奥歯を噛みしめながらも、今はそれどころではないと切り替え、今後の対策を考えた。


 だが、考えたと言ってもできることは今まで通り警戒を怠らないと言うことだけであった。


 こちらが好戦的であれば、即時侵攻を開始していただろうが、メルリアは戦争など望んではいない。そのため、防衛に徹していつ侵攻されてもいいように警戒しておくほかに手段などないのだ。


 だが、その警戒は民衆に不安を与えるものとなった。


 対策により一日中の休むことの無い警戒はいつも通りだが、いつも以上に緊張した面持ちで警戒に当たる兵士たちの強張った雰囲気は、戦場を知らない民衆にも伝わってしまい、民衆に不安を煽る形となってしまった。


 そんな、緊張に包まれた日が幾日も続いた。



 ○ ○ ○



 月日は経ち二ヶ月後。


 とうとう魔王軍が攻めてきたと知らせが入った。


 その知らせが入り城内には緊張が走る。


「場所は?」


 緊張した面持ちではあるが、動揺を見せることもなく、いつもの軽い雰囲気を見せることもない、民を守る国王としての表情になるフーバー。その様子を見たものは、己が緊張を押し込み、自分がなすべきことをするために気持ちを入れ替える。


「そ、それが、魔大陸とは反対にある、クロウウェル平原です!!」


「なに?」


 クロウウェル平原と言えば魔大陸から見れば、メルリアのさらに奥にある場所だ。


 フーバーは後ろから攻めてくることを考慮していなかった。回り込むのはそれなりに時間がかかる。それに、兵も歩いた分だけ疲弊する。


 それに、回り込むにしても王都以外の領地の近場を通ってこなくてはならない。そうなれば、見つかるリスクもあるし、見つかってはいけないと言う精神的疲労も溜まってくる。


 そうなれば、疲弊しきっていて兵の戦力は大幅に下がることだろう。


 だが、相手はそれを選んできた。と言うことは相手はその疲弊するところまでを考慮に入れているか、もしくは疲弊しないで回り込めるかだ。


 そのことに気付くと、フーバーは苦虫を噛み潰したような顔をする。


「二年のずれはこのためか…ッ!」


「どういうことだ?」


「あいつらは兵の疲弊を避けるために二年前からゆっくりと進軍していたんだ。こちらの警戒網に引っかからないようにこの国を完全に避けて迂回してきたんだ」


「な!?」


 見つかることを警戒するのであれば見つからないところ、つまり、国外を通ってくればいい。それであれば、ある程度の警戒で済むし、短期間での強行軍でないから兵の疲弊もある程度軽減されるだろう。


 本来であれば強行軍できたところなのだろうが、アリアがいるから万全に近い体制で挑まなくてはいけなかったのだろう。万全の状態を整えるための二年間であったのだ。


 しかし、ここで悔しがってばかりもいられない。


 フーバーはすぐさま思考を切り替えると、指示を飛ばす。


「すぐに、迎撃部隊を送れ!!」


「で、伝令!セリア大森林およびハルデア平原でも魔王軍の侵攻を確認!」


 慌てたように伝令が駆け込んでくるが、フーバーにとってはいくつか考えていた侵攻予想地点のうちの一つだ。


 フーバーは慌てることなく指示を飛ばす。


「セリア大森林には第一軍を向かわせろ!!ハルデア平原には第二軍と三軍を!!」


「フーバー私たちはどうする?」


 たち、と言うのもアリア、ロズウェル、アリシラの規格外三人組のことだ。


「お前たちはこちらの切り札だ。早々にきるつもりはない」


「……了解した」


 今すぐにでも戦場に出て一人でも多く救いたいと考えているアリアは、若干不服そうな顔をしながらも素直に従った。


 感情論だけでは戦いは乗り切れない。それを知っているがゆえに従ったのだ。


「にしても、防衛前提とは言え後手に回りすぎてるな」


「それは、仕方がないんじゃないか?こちらは向こうの攻め方次第でしか動けないんだから」


「いや、しかたなくはない。こちらは向こうの動きを予想して部隊を配置することもできるんだ。それがことごとく外れているんだ。知略戦においてはこちらが負けている」


「なるほどな。部隊の配置からもう戦いは始まっているんだな」


「そういうことだ」


 フーバーの言葉を受けるとアリアは何かを考え込むようなしぐさをすると、自分の中で納得ができたのか一つ頷く。


「………なら、こういう戦い方もあるよな」


「ん?なにがだ?」


「まあ見てろ。アリシラ、拡声の魔道具を貸してくれ」


「はい、どうぞ~」


 急に魔道具を貸してくれと言われても、そんなにすぐには出てこないだろうと思っていたアリアは、アリアの頼みからノータイムで魔道具を出してくるとは思わなかったので少しだけ面食らってしまう。


 そんなアリアの表情を見たアリシラは、してやったりと言った表情を見せる。どうやら、アリシラはもともとこの魔道具を使わせるつもりだったらしい。


「ありがとう。でも、そのどや顔ムカつく」


 アリアはそう言うとアリシラのでこを指ではじく。


「ああん!」


 アリシラがふざけたように嬌声を上げるが、アリアはそれを無視して窓を開ける。


 そして拡声の魔道具に魔力を込める。


『あ~あ~……よし、ちゃんとついてるな』


 一度テストをし、魔道具の調子を確認するが、問題無いようであった。


 アリアは問題が無いことが分かるとそのまま続ける。


『あ~……皆聞こえるか?聞こえたら手を止めないで聞いてくれ』


 アリアの声はもちろんせわしなく動き回っている兵士たちに聞こえている。兵士たちは、アリアの言葉通り動きを止めずにアリアの話を聞いた。


『なんて言えばいいのかな。正直、私は今不安だ。これが初めての戦争だからな。いっぱい戦ってはきたが、今日とは規模が違う。こんな大規模な戦いは初めてだ。新兵の皆もそうだと思う。と言うか、戦争に出たことないやつはみんなそうだと、私は思ってる』


 その言葉は的を射ていた。


 この国は小さな小競り合いはあっても、今日のような大きな戦争はそうない。古株の兵士であれば経験済みであろうが、中堅の兵士や新参者の兵士なんかは経験などしたことはないだろう。


 であれば、緊張や不安を抱えるのも無理はないだろう。


 そんな中、あの女神でさえ不安を抱えていると言うのだ。兵士たちの不安は高まり、作業の手も緩慢なのもになっていく。


『だけど、私は不安でも戦う。それが、私の役目だから、と言うのもあるがそれだけじゃ無い。今からいうことは当たり前で、皆も同じ気持ちを持っていることだから、今更かもしれないけどな。私の意思表明とでも思って聞いてくれ』


 不安にかられた兵士たちであったが、アリアの言葉に耳を傾ける。


 皆が思ってること、当たり前のことと言う言葉がどういうことなのか知りたかったからだ。


『私は、守りたい人がいる。いや、人ではなく人たちだな。それは、一緒に戦ってきた仲間たちもそうだし、今国のために戦ってる皆もそうだ。皆には戦争に出て死んでほしくない。だから戦う。これは当たり前だ。仲間を守りたいって気持ちは皆にもあると思うしな』


 アリアの言葉に兵士たちは何ともなしに周囲を見る。そこには、同僚、先輩、後輩、関係は様々だが、同じ苦楽を共にしてきた仲間たちがいた。


『私は仲間がいるから戦える。それは皆も同じだと思う。だから、仲間を死なせないためにも私は戦う。だけど、私が守りたいのは仲間だけじゃ無い。私は私たちが勝って帰ってくると信じてる民も守りたい』


 その言葉を受け、兵士たちははっとしたような表情をする。


『皆にもいないか?皆の無事を祈って帰りを待ってくれている人が』


 アリアはそう言うと自分の守りたい人たちを思い浮かべる。


 シーロの村で出会ったハイロやメイドたち。服屋のシェリエ。温かく接してくれたクルシス一家。思い浮かべるだけでたくさんの人が出てくる。


 それに、今はまだこちらに来ていない美結。


 彼女らのためにも自分は死ねないし死ぬわけにはいかない。


 彼女らは戦えない。もしアリア達が負ければこの王都に魔王軍が攻めてきて彼女らを傷つけるだろう。温かく接してくれた皆を傷つけさせるようなことは絶対にさせない。


『皆が思い描いた人は戦えるか?いや、もし戦えても、私たちが負けてしまったらその人たちは苦しんでしまう。皆は、その人たちを苦しませたいか?』


 そんなことはない。


 自分の大切な人を苦しめさせることなんてしたくはない。そう考えると、いままで不安に揺れていた兵士たちの目には確かな覚悟が宿り始めていた。


『私は無辜なる民を傷つけさせないためにも戦う。役目とかそんなのは関係ない。私はこの国を愛している。この国の民を愛している。だから戦う。誰も傷つけさせやしないために』


 そう言う、アリアの言葉にもたしかな覚悟が宿っており、その覚悟は兵士たちにも十分に伝わってきた。


『私の言葉を聞いて大切な人を守るために戦うと言う者は剣を取れ!!その思いが皆の不安を打ち消す力になるはずだ!!皆を鼓舞する力になるはずだ!!思いが皆を高める力になるはずだ!!ゆえに思え!!大切な人のことを!!私も思おう!!皆のことを!!思いを糧にし、守り抜く力に変えろ!!』


 その言葉に兵士は動きを止め各々の武器を抜き天に掲げる。


『私は女神アリア!!この国を愛し、この国を守護する者!!ゆえに思おう!!皆のことを!!それが私に力と勇気をくれる!!それだけで、私はどこまでも戦える!!だから皆も、私と共に戦ってほしい!!その思いを力と勇気に変えて!!』


 アリアの言葉が終わった直後、城内で、いや、王都中で鬨の声が上がる。


 皆の心に、不安は消え去っていた。


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