もらって、くれませんか。
「唐突ですが、好きです。付き合って下さいませんか」
「は?」
「唐突ですが、」
「や、繰り返さなくて大丈夫、聞き取れた」
律儀に言い直す少女を止めた。
俺の正面に立つ少女はじっと答えを待って見つめて来る。「待て」をする小犬みたいな風情で、……どうしよう、可愛い子だけど誰だっけ、見覚えも身に覚えもないんだが。
「話すのは初めてです、先輩」
ああ、そうなんだ。後輩か。ん? 「話すのは」初めて?
「でも、前に日直で重い教材運んでる時助けて頂きました」
……そんな事したかな。
「体育祭で転んで盛大にひざをすりむいた時背負ってもらったのは、すごく恥ずかしかったですが、嬉しかったです」
確かに、保健委員だから体育祭は救護班やってたけど。
「プールの授業でガラスのカケラふんだ時も先輩が保健室に偶然居て、病院行く為に先生の車にお姫様だっこで運ばれたの、すごく恥ずかしかったですけど、嬉しかったです。手当てしてもらってたクラスメートさんには、治療中断させて申し訳なかったですが」
あ、水着の女の子抱えた記憶はある……何かちっちゃいし柔らかくって、ドキドキしすぎてかお覚えてないけど!
「図書館でレポートの為に本を探してたら案内してくれました」
本は好きだから、どこに何があるか知ってただけだと思う。
「文化祭で友達に連れてかれたビックリハウスで、怖くて逃げ出したらおどかし役が先輩で、頭撫でてもらいましたけど。ああいう時優しくされたら余計泣いちゃうのは仕方ないと思います」
そう言えば、泣いてた子がいたな。泣き止まないから困ったけど、袖にすがられて可愛いなって思ってた。
「誰にでも優しいって知ってます。でも、お人好しだけど誰にでも優しくて、いつも笑ってて、笑う時ちょっと困り眉になるとこも、低くて柔らかい声も、大きな手も、大好きです。大好きなんです」
「ちょ、ちょっと待った!」
ストップ!
待ってくれ、たたみかけないでくれ。
小犬みたいなつぶらな瞳で見上げられて言いつのられる。段々赤く染まるかおと一生懸命で真っ直ぐな瞳と、ぶつけられる思いの丈に、追いつめられる様な気分になる。
俺今絶対かお赤い。
「そんな、一度に言われても困るんだが……」
すごく恥ずかしい。
ぎゅっと抱きしめて訴えると、私も恥ずかしいです、と少女は俺の袖をきゅっとつまむ。
「もらって、くれませんか。先輩」