プロローグ
太平洋が光に包まれた。
私は今その目でその光を見ている。何がおこっているのか。そんな事は不思議と気にならない。光に魅了されているのだろう。
「…りょう。…とうりょう。」
次の瞬間光が消えた。一瞬にして深い闇が辺りを包む。底知れぬ恐怖が私を襲ってきた。
「大統領。ご返事を」
ハッ、とした。私は西海岸沿いの別荘から海を眺めていたのだ。私は声に答えた。
「どうした」
「ご無事でしたか。先程の太平洋を包んだ光は一体…」
声の主は西海岸防衛のための海軍兵。明らかに声は動揺している。
「うむ。自然現象とは思えぬ見たことのない光。あの方向にあるのは…日本か…。調査隊を向かわせろ」
「はっ」
私は大統領なのだ。
かつてはアメリカと呼ばれていた国。
今はビッグノースと呼ばれている。
全ては中東で勃発したあの戦争。すぐさまそれは全世界に広がった。第三次世界大戦。多くの国が崩壊し、戦前と比べ世界は大きな変貌を遂げた。ビッグノースもその結果なのだ。核などをはるかに凌駕する力が存在しているらしい。一般に『神威』と呼ばれているそうだ。人間技とは思えぬ力。真実はわからぬ。
「大統領、大統領」
その声は明らかに普通ではない。何かに恐怖している。
「どうした。何があった」
私は足許から頭の先まで恐怖が走るのを感じた。
「影像を送ります。ご確認を。」
影像が送られてきた。影像を開く手は震えていた。カチッ。開かれた。そこに写るのは信じ難い影像だった。
「これが神威…か。」
そうとしか出てこなかった。
そこにあるはずの四つの島からなる国が跡形もなく消えていた。海とつながるかのように海面から突き出た富士山を除いて。
「これは序章にすぎない。」
私にはそうとしか思えなかった。