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第8話 『謙二と芙美子のお正月。』

♪もう二日前から~ お正月~

 お正月には タコ揚げて~

 ゴリラと一緒に遊びましょう☆

 はやく来い来い 出前ピザ~



芙美子さんは、いつものように台所で楽しそうに歌を歌いながら料理を作っていた。




「芙美子さ~ん、お昼ごはんまだ~??」

「はーい、今お持ちしますねー」

お正月三日目の謙二のうちでのランチは、

・タコの唐揚げ

・タコと水菜のさっぱりサラダ

・タコカレーライス

・タコパフェ

・当然、酢ダコもあり

が準備されていた。


「はい、召し上がれ♪」

「もうさ。毎日のことだからあきらめがつくw ここまでタコ料理に徹してくれる人もいないよ。お正月とか関係ないよね、タコの唐揚げとか」

「そうですかぁ? 褒めていただいてありがとうございますっ!!」

「いや、別に褒めてないよ」

「タコの唐揚げは、お隣さんからいただいたカボスで作ったカボポンつけてもおいしいんですよー」

「カボポン?」

「”カボスポン酢”の略ですっ」

「へぇ、どれどれ… おお!激ウマー!!」

「初めて料理褒められましたーw」



そんな感じで、ランチを囲みながらのんびりテレビを見ていた。

「あの芙美子さん?」

「いいお正月ですねー」

「うん、いいお正月はいいお正月なんだけど。ひとつ訊いていい?」

「はい。なんでしょうか?」

「なんで、良太がいるの?」

「良太ですか??」

「いるじゃん、俺の目の前に。みかん食ってるじゃん!」

「いいえ、違います。圭太です!」

「ちょwwww こいつ、圭太だったのか。見分け方とか分かんないし」

「えっとー。圭太ね、『はいポーズ!』って言うと、親指立てて”ぐぅー!!!”ってやってくれるんですよねー」

「エド・はるみのものまねなんて教えるなよwwww」

「それと、この前の大みそかに食べた伯方の塩ラーメンを届けてくれたのは圭太なんだよねー☆」

「ラーメンの出前も、時代はゴリラ通信へどんどん切り替わってきてるんだな。 …つうか、圭太みかん食いすぎだろ! もう1箱なくなってるじゃん!!」



謙二と芙美子は、お正月とかそういうのは関係なく日頃から仕事がない。

だから、お正月番組がガンガン流れるこの1週間は逆に退屈していた。


「ねぇ、謙二さん? あの昼ドラの続きが気になりませんか?」

「そうだな。彰がアヒルにえさをちゃんとあげてるのか、すごく気になるな…」



2人と1頭でぬくぬくとこたつに入りながら、駅伝を見る。

「つまらないですねー…」芙美子がぼそっと言った。

「ドリームキャストも飽きたしな~」

「今度、お母さんに連絡して、良太にWiiでも持ってきてもらいましょうか?」

「Wii持ってるの??」

「新しく買ってもらうんです」

「なんか悪いな、芙美子さん」

「大丈夫ですよ」


早速芙美子は、実家に電話をかけた。


「あ、お母さん? うほうほうほ、うほうほうほうほうほ、うん、うほうほ。お願いします。じゃあね!」…ガチャ。

「ねぇ、芙美子さん?」

「なんですか?」

「電話の向こう側にいたのって、・・・お母さん?」

「え?どうしてそんなこと訊かれるんですか??」

「うん。さっきなんか、うほうほとか話してたでしょ、そのお母さんと。もしかしてゴリラなのかなって…」

「謙二さん、ひどいです! 仮にきれいな顔じゃなかったとしても、女性に対してゴリラは失礼だと思います…」

芙美子さんはバカにされたと思い、泣いてしまった。

「いや、泣かないでよ、芙美子さん。そんなつもりはなかった」

「私の実家、今、偽帯住宅だから… 良太と奈々ちゃんが同居してるんです!」

「さっきのお母さんって、奈々ちゃんだったの?」

「はい、奈々ちゃんですよ。子供が6頭生まれてお母さんになったの☆」

「そっか。・・・・だったら、別にゴリラと言われても失礼じゃないと思う」




お正月3日目は退屈しながらも、結局テレビを見ただけで終わりそうな予感がしていた。みかんの消費量はすでに3箱目に突入していたが、圭太はみかんを食べるのをやめようとしなかった。


「遅いなぁ…」芙美子さんがぼそっとぼやいた。

「そうだね。時間が過ぎるのは遅く感じるね」謙二がそう返すと、

「ううん、違うの。ピザ頼んであるんだけど…」と芙美子さんは言った。

「この島に出前ピザなんてないだろ? どこに頼んだの??」

そんなことを言っていたら、ピンポーンと家の呼び鈴が鳴った。

「来たかな??」

2人と1頭みんなで玄関前に行くと、そこにはエプロンをつけたゴリラが1頭。

「誰だよ?これ??」謙二が芙美子にそう訊くと、芙美子は、

「知らないゴリラさん… どちらさまですか?」と芙美子も知らない様子だった。

「芙美子さんも知らないの?? だったら、圭太に訊いてもらったら?」

圭太は、そのゴリラに近づいていった。そして、戻ってきた。

戻ってきたあと、芙美子さんに耳打ちで何か告げていた。

「圭太、あの子に一目惚れしたんだって!」

「何しに近寄ったんだよ!名前訊きにいったんじゃないのかよ!!orz」


結局、エプロンをつけたゴリラの正体は分からないままだ。



(つづく)

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