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第6話『クリスマスのごちそうといえば、やっぱりタコよね?』

♪ボトルを入れましょ ドンペリ~

 お代はいくら? 200万くらい~

 ぎょ! それ請求しすぎじゃない??

 今日は 楽しいクリスマス~



芙美子さんが楽しそうにクリスマスの歌を歌いながら、料理を作っていました。謙二は心配になって台所にいくと、そこでは大量のタコがさばかれていました。





「芙美子さん?」

「なんですかぁー??」

「その大量のタコを使って、なにを作るつもりなの?」

「えっと、その。今日はクリスマスイブじゃないですか?? だから」

「理由になっていないように思えるんだけど(笑) 大体、クリスマスならもっと違うものがあるはずだよ。たとえば、モモ肉のローストとか、唐揚げとか、ケーキとか」

「ですから、タコのモモローストでしょ? タコの唐揚げ、それから、」

「聞きたくない。恐ろしいことはいわないで」

「タコのショートケーキ♪」

「だから、それを僕に食べさせる気だったんだよね? タコのショートケーキを。たこ焼きと違って、トッピングされてるタコが大きくたって、なんにもうれしくないからね?」


芙美子さんは謙二に叱られて、泣いてしまいました。


「一生懸命に作ろうとしてたのに、謙二さんのバカ!バカ!バカ!」

「・・も、もうしょうがないなー。食べる。食べるから!タコのケーキでも、タコのどら焼きでも、タコのサンデーでも、もうなんでも食べるから泣かないでよ」

「謙二さんって、変なものがお好きなんですね!」

「お前が過去に全部作ったゲテモノ料理だろうが!!orz」



そんな二人のやりとりは今に始まったわけではなくて、一緒に暮らし始めて一週間目からすでにこんな感じだったが、謙二はなぜかそんな芙美子さんのことが大好きだった(笑)


「たまにはね」芙美子さんが沈黙していた空気を打開するかのように口火を切った。

「なに?」

「タコ以外も食べたいよね?」

「いっておくけど、ククレカレーも食べ飽きたからね?あと、ボンカレーも」

「ううん、違うの。今日、私の実家からゴリラ通信でおいしいものを送ってもらってるからそれ出そうかなと思って。すごい最高級のローストビーフとか、北京ダックとか、あとはシーチキン2か月分とか」

「そっか、今日はその高級ローストビーフとやらを・・・ ゴリラ通信? なんだそれ??」

「謙二さん知らないんですか? ゴリラ通信??」

「さあ?」

「謙二さんは、伝書鳩って知ってるでしょ?」

「伝書鳩は知ってる」

「伝書鳩はね、紀元前5000年前のシュメール人が始めた当時では最速の通信手段だった。光の次に速かったのよ。その伝書鳩、軍事目的のためにロシアをはじめとするさまざまな国家で伝書鳩が使われて、第二次世界大戦のときはイギリス軍が約50万羽の鳩を使って、ドーバー海峡を奇襲したけど失敗した。ハトって平和の象徴のように思われてるけど、案外こんな感じで空軍における最重要武器にもなっていたんだって!」

「その話は、ウソだろ?」

「うん。それでね、そんな伝書鳩を応用して、新しいハイテクの通信手段として開発されたのがさっきゆってたゴリラ通信なんですよー」


芙美子さんがさらにいうには、


[ゴリラ通信を行うためには!]


厚生労働省が指定したNPO法人認定のゴリラ通信責任者講習会で一日講習を受けて、媒体となるゴリラの通信許可証明書を取得する必要があるようで、芙美子さんの実家ではご両親がその認定を受けているのだ。


・・・という話だった。


「そろそろ、圭太がこっちにくるころかな? ちょっと携帯に連絡してみよっと」

「圭太?」

「うん。ゴリラ通信で使ってるゴリラの名前ですよ」

「圭太ねー…」


「あ、うほうほうほ。うん、うほほうほ。うほ?うほほうほうほ、うん、うほほほうほ」


・・・ガチャ。


「芙美子さん、さっきなんかしゃべり変だったよね?うほうほ、とか」

「圭太、日本語の覚えが悪くて仕方なく私が彼の言葉を覚えたの。なんか道に迷ったらしくて、今、圭太がいる経度と緯度を教えてあげてたの」

「圭太とやらは、自分の居場所がその経度緯度だけで完全把握できるの?」

「はい」

「だったら、迷子にならないだろうに・・・」



── 約一時間、圭太らしきゴリラがやってきた。


「芙美子さん、圭太が来たよ。・・・たぶん」


謙二は、玄関先にいる目の前のゴリラが圭太かどうか判別することができなかった。

芙美子さんが玄関までやってくると、

「あれ? 良太じゃない! ひさしぶり。うんうん、圭太が途中で迷子になっちゃったから? それで代理で来たのね? えらいねー、良太は」

と良太を褒めていた。


謙二は、どこで良太と圭太を区別できたのかさっぱり見当もつかなかった。



しかし、おかげで超高級ローストビーフをクリスマスで食べることができたから、「まあいっか」と思う謙二だった。


(つづく)

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