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第3話『芙美子との再会』

芙美子さんは来年必ず来るといいつつ、なかなか来なかった。



その間、謙二は芙美子さんを待ち続けた。

待ちながら、3000ピースのジグソーパズルを完成させてみたり、伯方島にいって塩ラーメン食ったり、滝修行したり、タコ100匹飼ってみたりしていた。すごく暇だったのだ。



「はぁ、芙美子さんほんとに来るのだろうか。。。」

謙二は不安であったが、とにかく待つしかない。そう思いながら、磯釣りなどを嗜んでいた。



芙美子さんが謙二のところを訪れたのは、初めて会ってからもう3年もあとのことになった。

謙二がちょうど80足目の長靴を釣っていたところに、芙美子さんがふい現れた。彼女は、高校を卒業して、今はもう19歳となっていた。


「謙二さん…」


芙美子さんの白い肌を太陽の強い日差しが照りつけている。謙二は、3年前に逢った頃の少女だった彼女の姿しか思い出になかったので、大人びた彼女の唇や表情を見て、驚きを隠しきれなかった。


「あなたは、本当に芙美子さんなのですか?」

謙二がそう声をかけると、芙美子さんはそうですと清楚な口調で答えた。


「お待たせしてしまってごめんなさい。親を納得させるのに時間がかかってしまったので…」

「納得?」

「はい、私、あの時決めたんです。私もここで、絵の勉強をしようと思って…」

「絵の勉強なら他でもいくらでもできると思うけど?」

謙二はそう彼女に言うと…

「ですからその… 謙二さんと一緒に絵の勉強を…」と芙美子は返した。


謙二はその言葉の意味をそのままとってもいいのか分からなかった。

それはすなわち、彼女なりの精一杯の自分への気持ちと受け取ってよいものであろうか?

「芙美子さん。この島にはなんにもないんですよ?マックもなければ、ミスドも。吉野家も。そして、ガストもない。日活ロマンポルノをやっている劇場すらないんだ。いいのですか??」


芙美子さんは言いました。

「大丈夫です。しまなみ海道を通って尾道か今治まで出れば、コンビニのポプラがあります。ミスドもあると思います。それに…」


「それに??」謙二は訊きかえすと、芙美子は、

「日活ロマンポルノなら、amazonの通信販売でDVDボックスで買えますから…」と言った。

見てるのかな?、という疑問が謙二の頭によぎった。


そんな再会を果たした二人だった。

「これからどうするんだ? 芙美子さんは」

謙二はそう訊くと、

「とりあえず、謙二さんのおんぼろ貸家に泊めてもらえませんか?」

と芙美子は答えた。おんぼろは余計だよな、と思いつつも、特に行くあてのない彼女を放っておくわけにはいかず、謙二は自分の貸家へ小さな旅行バッグを持つ芙美子さんを案内した。


謙二の住んでいる家は、こじんまりとしてはいるがそれなりに設備は整っていた。


電子レンジ、大型冷蔵庫、掃除機、全自動洗濯機、アイロン、ロデオボーイII、ドリームキャストなどの生活必需品がそろっているので、謙二は快適な生活を送っていくことができていた。しかし、布団が1組しかないため、芙美子さんと一緒に寝るしかないかな? と、絶対に叶わない淡い夢を抱きつつ、謙二は、一息つくために、彼女のためにカルピスウォーターを作ってあげた。


「わぁ、カルピス! 私、大好きなの、これ!」芙美子はとても可愛い笑顔になった。

こんなに喜んでくれるなんて…。謙二は喜んでくれた芙美子を見て、微笑ましく感じた。


「ねぇねぇ!! これ、もしかして私ですか!? へぇ、こんな絵も描けるんですね!」

芙美子が見つけたそれは、謙二が想像を働かせて描いた芙美子似の裸婦像だった。謙二は慌てて、それを隠した。

「だめです、見ちゃだめです! こんなの描いてるなんて思われたら、僕はただの変態になっちゃいますから」

もうだめだ。芙美子さんは、明日故郷に帰るだろう。そう思ってると、芙美子さんはこう続けた。

「ううん。全然素敵です。私もこういう絵、描いてみたいな。教えてくれますか?」

「でも、モデルがいないですから…」なんとか断ろうとする謙二だったが、

「モデルなら私がやります。私では、駄目ですか?」

「駄目ではないけど、いいのですか?」

「ありのままの私を、描いていただけるのなら…」


こうして、二人はげーじつを追求する仲間として同棲することになった。



謙二は、本当にこれでいいのか分からなかったが、彼女が望むべきことをしてあげたいと思った。そして、これからの生活の中でどんなに願っても叶わないことがあることを彼女にも教えてあげなければと思った。


「ねえ、芙美子さん?」

「なんですか?謙二さん」

「僕たちがこの先どんなに願ってもね…」

「はい」

「もうヨ○スケは、ヨ○スケは…。テレ東系列の番組以外に出演することはできないってこと、頭に置いてくれないかな?」

「はい、分かりました。謙二さん。彦摩○さんもですよね?」


(つづく)

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