04話 急転直下の大崩壊
エリスくん暗躍回
結局その後、私は目ぼしい資料を見つける事が出来なかった。
言うだけいってさっさと消えた理事長からは何も貰っていない。
まあ、自力で探してこその課外授業なので文句を言うつもりもないが。
状況はラルフも同じだったらしい。
「…まあ、明日また切り替えて頑張るか」
「そうですね」
閉館ギリギリまで粘ったが、結局その日は諦めて解散する事になった。
「本当は送るべきなんだろうけど…」
「用事なんだし仕方ないですよ」
申し訳なさそうにするラルフに心配ないとフォローする。
まだ日は登っているのだ。
今から帰ればまだ大丈夫だろう。…まだ帰る気はないが。
「それじゃあ、また」
「はい。また明日」
それを感付かれないように私はラルフを見送った。
『いいかい、課外授業のリミットまであと一週間だ。…その間、彼の事をなるべく気にかけておいて欲しい』
先程の理事長の言葉が何度も頭の中で再生される。
……ラルフを疑いたくない。
信じたいから、私は動くのだ。
しかし私のそんな思いは直ぐに打ちのめされる事になる。
「…で、状況は?」
「まだ目ぼしい手掛かりは何も」
「おま、人が折角面倒な手続きまでしてやったってのに」
ラルフの後をつけやって来たのは城下町の裏路地だった。
夕暮れ時にこんな場所で一体何を?と思っていたら、何処からともなく現れた小太りなおじさんと話し出した。
…まず、現れたおじさんが見た目に反して動きが軽快だったり、声がやけに若々しいのが引っかかった。
そして次第に私の意識は会話の内容に移っていく。
「まあ明日もありますし、最悪は忍び込めば何とかなるでしょう」
「バレたらどうする」
「その時はペアの女子に泥を被ってもらうつもりです」
「…相変わらずえげつねぇ野郎」
おじさんはラルフを責める言葉とは裏腹に愉快そうに笑みを浮かべた。
…と言うか、ちょっと待て。
「…………な」
ラルフは今、何と言った?
話からして、ラルフは恐らく私や学園側、下手したら王国からしてもあまり誉められた事ではない何かに関わっているのだろう。
そして小太りのおじさんはその仲間――もしかすると彼の上司にあたる人物――である可能性が非常に高い。
さらに付け加えるとするならば
『その時はペアの女子に泥を被ってもらうつもりです』
――私はまんまと彼にとって都合の良いように利用されかけていたと言うことだろう。
「…」
そこまで理解してやっと私は胸の痛みを自覚した。
とはいえ、ここで気落ちして重要な情報を聞き落としては今後の対策も練られない。
私は思考を止め再び彼らの話に耳を傾けた…のだが。
「…で?そこにいるネズミはどうする訳だ?」
「……そうですね」
そう言いながら、二人は明らかに此方を見ていた。
「……!!」
バレとるー!!ですよねー!!
素人の尾行なんざ気付かない方がおかしいですよねー!!!!
…ああ、こんな事なら早い内から闇属性極めて隠遁の術習得しとくんだった。
そんな事を後悔しても後の祭り。
私の人生、思いの外儚かったな――そんな事を思っていた時だった。
「ああ、問題ありません。彼女の躾なら僕がしておきますから」
「…ハァア?」
思わず、地の底から出る様な声を上げてしまった。
躾って!私はペットか!!
と言うか、そんな温和そうな顔で言われても似合わなすぎて片腹痛いわ!!
…思わずそう吐き出しそうになった瞬間、ラルフから今まで見た事のない冷たい視線を向けられた。
「エリス、君はちょっと黙ってて」
…あ、訂正。
今のラルフさんなら躊躇なくやってくれそう。
「ふうん、まあ俺としては目的さえ達成出来りゃ他はどーでもいいよ」
いや突っ込めよオッサン。
「あ、俺これでも変装解いたら結構若いしイケメンだぜ?
「…なに自分から素性晒してるんですか」
呆れたようにラルフが口を挟む。
…二人の関係性がちょっと垣間見えたような気がした。
そんなこんなで私を置いて二人は話を進める。
「じゃあ次の報告、期待してっから」
「……分かりました」
「じゃあな」
ラルフの返事を聞くと、おじさんは闇に溶けるようにその場から消えていった。
そして残るは私とラルフの二人だけになった訳だが。
「…………」
「…………」
……………………………………………………………………………沈黙が不気味すぎて怖い。
何これ気まずいちょっと勘弁して下さいよラルフさん。
と、謎のプレッシャーに耐えかね私が恐る恐るラルフに声をかけようとした瞬間だった。
「……んで、」
「? ラルフ?」
「…な、んで 後なんかつけてきたんだ!!!!」
「!!?」
そのままドン!と勢いよく壁に押し付けられる。
…いや、怖い怖い怖い怖い。
先程からいきなりの変貌っぷりに全く処理が追い付けてないがとりあえずラルフが怒っている事は理解した。
「……ごめん、なさい」
私もとんでもない事に首を突っ込んでしまった自覚くらいはあるし反省もしている。…けれども。
「…そんな怖い顔する事、ないじゃないですか」
「……………」
今日の昼までのやり取りが随分遠くに感じた。
その後の事は実はあまり覚えてない。
家の前までラルフに送ってもらったのは確かだが、会話らしい会話は特に無かった。
そして帰宅すると私はそのままベッドに直行し、怒涛の一日を終えたのだった。
暗躍失敗(^p^)




