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三十六章 最悪の帰還

神刀華炎でエルリットが放つ刺突を受けるその瞬間、覚えがある感覚に襲われた。

私は咄嗟にエルリットの刺剣を避けて踏みつけた。

エルリットは凄まじい力で地面に突き刺さった刺剣を振り上げる。

刺剣は地面を切り裂いて黒い粘性の液体を飛ばした。

強烈な鉄臭さと生臭さが辺りに漂う。

間違いない。この黒い液体は血液だ。

黒い血液を受けた部分の皮膚が侵食されている。

侵食された部分から液状神気が噴き出した。

「なんだこの力・・・」

梨々香は素早い引っかきを避けて黒い血液を神刀華炎で防いだ。

この液体は凄まじい侵食力を有している。

「天陰、月天神楽」

梨々香が黒血の刺剣を受けて吹き飛ぶと同時に神剣白華を握った白梅が冷たい連撃を放つ。

「氷だと??」

守護者・黒き祭司王は驚きながら冷たい連撃を受ける。

霜付いたエルリットは吹き飛び震える手を見つめながら起き上がる。

「許されないのだ・・・お前の存在は、決して!!」

守護者・黒き祭司王が怒鳴りながら地面に黒血の刺剣を突き刺した瞬間、地面が黒い血液になった。

足が取られて動きづらい。幸い、靴を貫通することはないようだ。

「うわぁぁぁぁ!!!!」

白翔は黒血地獄から這い出てくる朽ちた魔女たちを見て悲鳴を上げる。

「ヒュオエェェェェェェェェ」

朽ちた魔女たちはどこかから空気が漏れているような奇妙な不気味な悲鳴を上げながら破裂した。

「これ、結構不味い!」

霧状にばら撒かれた黒い血液を受ける華は皮膚から噴き出す液状神気を見て少し焦りながらそう言った。

「クソッ!!」

黒血地獄から抜け出そうともがく梨々香はポーチから零れて黒い血液の上に落ちる破砕されし天律を見て焦る。

私と華は黒い血液から早々に抜け出し、白翔も遅れて抜け出した。

「白梅!!」

白翔は黒血地獄に呑まれていく白梅を見て叫んだ。

「た、助け・・・!!」

白梅は黒血地獄に呑み込まれた。

「・・・」

梨々香たちは黒血地獄を見て冷や汗を垂らす。

「・・・」

白梅が黒血地獄に呑み込まれて皮膚が溶けていく中、煌く光が白梅の灰色の神気に混ざり込んだ。

「ッ・・・!!」

灰色の神気が真っ白に変わった瞬間、白梅は全身に駆け巡る凄まじい力と拒絶するように高鳴る鼓動に襲われて一瞬で全身の皮膚が再生した。

黒い血の池が不自然に揺らいだ瞬間、黒い血の池が白色に染まって爆発した。

「ママ!!」「白梅!!」

華と白翔は白梅の所に飛んでいった。

「大丈夫ですか?」

梨々香は白梅を見てそう言った。

「な・・・なんか、ヤバい!!」

白梅が悶えながらそう言った瞬間、床を覆い尽くすほど巨大な魔法陣が出た。

巨大な魔法陣はアニカの零落をも凌駕する凄まじい重力魔法でエルリットを拘束した。

「ッ!!灯の怪物め・・・この私を縛れると思うなよ!?」

守護者・黒き祭司王が苦しそうにそう言った瞬間、不死の追跡者が屋根を突き破って降ってきた。

エルドリアは巨大な魔方陣を刺突で破壊してゆっくりと立ち上がる。

重力魔法で拘束されていたエルリットがゆっくりと起き上がるとエルドリアがエルリットに近づいていく。

「私たちは二人で一人だ。そうだろう?エルドリア・・・」

守護者・黒き祭司王がそう話す中、不死の追跡者は守護者・黒き祭司王の影になって溶けた。

「さぁ・・・我らが悲願を成し遂げようぞ・・・」

片目に死霧の渦を宿した守護者・黒き祭司王は黒血の刺剣と死の短剣を構えた。

「白梅、大丈夫か?」

白翔はグニャグニャと起き上がる白梅を見てそう言った。

「力が・・・力が溢れて止まらない!!」

目を見開いた白梅は笑みながらそう言うと灯の城を木端微塵に粉砕するほどに強力な青い衝撃波を放った。

この衝撃波・・・アニカの魔術とは全く違う・・・俗世の生物が生み出せるものではない。

間違いなく昼華の力だ。

吹き飛ばされた私たちは遠ざかる城の残骸の中で青く染まりゆく城を見つめるしかなかった。

城が青く染め上げられた瞬間、半径千二百キロメートルはあるであろうこの都を衝撃波が破壊した。

都を形成する建物が粉々に消えたそのすぐ後に来たのは数千もの雷鳴を束ねたような破裂音だった。

城から放たれた青色の光線が辺り不死の都を囲う崖を破壊していく。

そして、深海のような深い青色の光線はついに天を覆うエルドリアの霧までも破壊した。

この地獄絵図の中、真っ先に動き出したのは華だった。

その姿はもはや華千﨑 華ではなく原初の存在、破壊と循環の権化たる銀華だった。

「・・・」

銀華の大剣を握った華は光線を放つ白梅に凄まじい威力の刺突を当ててねじ伏せた。

「・・・」

気を失った白梅は口から唾液と共に輝く光を垂れ流す。

「すごい力だ。あいつも死んだみたいだし、お手柄じゃん!」

白翔は白梅を見て笑みながらそう言った。

「・・・」

梨々香は複雑な表情で白梅を見つめる。

「どうする?梨々香」

銀華の大剣を握った華は白梅を見てそう言った。

「?」

白翔は驚きながら華を見る。

「私の刃を深く押し込めばすぐにでも殺せる」

華は梨々香を見てそう言った。

「お、おい・・・・・・どういうことだよ。何言ってんだよ、華!」

白翔は困惑しながら梨々香と華を交互に見る。

「奴が喰らった昼華の半分はどうなる?メイジーの手に渡る可能性は?」

梨々香は華を見てそう言った。

「ないとは言えない」

「ならば、生かす」

梨々香の言葉と共に白梅に浅く刺さった銀華の大剣は抜かれた。

「・・・」

華は白梅から離れて銀華の大剣を消滅させた。

「ママの正体、話す?」

華は梨々香を見てそう言った。

「・・・いずれ話さなければなりません。白梅が起きたら話しましょう」

梨々香はそう言うと白梅の傍に座った。

私に続いて華も座った。

白翔は放心状態、困惑が極まって頭がオーバーヒートでもしたのだろう。

父に敗れた墓守の神人エルリットは死が迫る蛇の神人エルドリアの元へ行った。

蛇の神人エルドリアに黒き魔女の権能を差し出し不死になるよう説いた。

だが、蛇の神人エルドリアは黒き魔女の権能に触れることなく首を横に振った。

「もう良いのだ・・・」

蛇の神人エルドリアが苦悩と葛藤を包み込むような言葉を残したその三日後、墓守の神人エルリットも死んだ。

敬意と継承を失った墓地の中心で海よりも深い後悔を唄いながら。


次回予告は活動報告から!

質問なども受け付けています。

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